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雷ピカっ! 定番「車内避難」は本当に安全? 一概に「クルマの中」が良いとは言えない理由とは

くるまのニュース 2022年8月21日 9時10分

ゲリラ豪雨が多くなりがちな夏ですが、同時に雷も多発しています。昔から「クルマの中」にいれば安全といいますが、それは本当なのでしょうか。

 夏の天候は変わりやすく、急に空がゴロゴロと鳴り始め雷を伴う雷雨となることがあります。
 
 そんななか「クルマの中なら安全」といわれていますが、実際にはどうなのでしょうか。

 毎年7月から9月頃は、全国各地で雷が多く発生する時期です。雷の電圧は1億ボルトを超えるといわれており、人の身体に直撃したらひとたまりもありません。

 また雷は場所を問わず落ちることがあり、一般的に鉄塔や木など「高い所」を経由することが多いものの、歩行中の人に落雷した事例もあります。

 このため、雷雲が近づいてきたときには、安全な場所に避難する必要がありますが、安全な避難場所として昔から「クルマの中」(車内)が挙げられてきました。

 気象庁でも「鉄筋コンクリート建築、自動車(オープンカーは不可)、バス、列車の内部は比較的安全な空間です」と説明しており、避難場所のひとつに自動車を挙げています。

 では、車内に避難したとして、そのクルマに雷が落ちた場合、乗員は無事でいられるのでしょうか。

 これについては過去にJAFが実証実験をおこなったデータがあります。

 JAFの実験では、140万ボルトに設定した人工雷を利用し、クルマに意図的に雷を落雷させています。

 結果として、乗員への被害はなくハンドルを握っていても感電するといったトラブルもありませんでした。

 また、車内の装置などにもとくに目立った影響はなく、デジタル時計にわずかな誤差が生じた程度であり、エンジン回転数などには問題はなかったようです。
 ただし、ボディの外装はダメージを受けたようで、落雷した箇所の塗装に傷のようなものが見られました。

 このように、JAFの実験では落雷による被害を受けにくいことがわかりましたが、JAFの担当者は、次のように慎重な見解を示します。

「クルマのボディを通して電気が伝わり、金属部分から感電してしまうおそれがあるため、必ずしも車内が安全とはいい切れません」

 雷の正体は電気で、電気は人体よりも、金属などの電気の流れやすい物質を優先して経由する特性があります。

 また一定方向にしか流れないという特性もあるため、たとえば金属の箱に電気を流すと、箱の表面を伝って地面に抜けていきます。

 クルマも金属の箱のようなものとなっており、落雷した場合、ボディ表面を伝って、タイヤから地面に電流が抜けていきます。

 そのため、JAFの担当者が話すように、車内にいても金属部分には電流が流れている可能性があり、落雷時はドアノブなど車内の金属部分に触れないよう注意する必要があります。

■オープンカーやサンルーフ装着車は危険なことも

 落雷で注意したいのは、オープンカーなどで屋根が幌などの「ソフトトップ」になっているモデルです。

 ソフトトップの屋根は、金属ではなく布線維やビニールレザーなどの素材を使用しているため、屋根に落雷した場合、電気がボディに流れず、そのまま車内の人に伝わり感電してしまう恐れがあります。

 同様に、ガラス張りの「サンルーフ」を採用しているクルマの場合、ガラス面に雷が落雷すると、そのまま車内に電気が流れ込んでくる恐れがあるうえに、落雷の衝撃でガラスが割れ、ガラス片が車内に飛び散る危険性も考えられます。

 そのようなソフトトップの屋根、ガラス張りのサンルーフを装着している車種の場合、雷が近づいてきたら車内にいるのは危険です。

 もし、近くで落雷を感じたら、駐車可能な場所にクルマを止め、コンクリートの建物など、安全な場所に避難することが大切です。

 また、走行中に雷が落ちてきてしまった場合の対策方法について、前出の担当者は次のように話します。

「走行中に落雷した場合は、光や音などでパニックを起こしがちですが、室内に逃げ込むなど、冷静に判断して行動してください。

 パニックを起こし、ハンドルやブレーキなどの操作を誤ってしまった場合、思わぬ事故につながってしまう恐れがあります」

AMラジオでは、雷雲が接近するとその放電によりガリガリというノイズ音が入ることがあり、聞き慣れないノイズが聞こえたら要注意!

 落雷を受けても車内の人間にまで危害が及ぶことは少ないので、慌てず、冷静に走行を続けるように心がけましょう。

 もし冷静さが保てない場合は、そのまま運転を続けるのは危険といえ、クルマを安全な場所に止め、雷雲が通過し気持ちの動揺が落ち着くまで、車内でやり過ごすという判断も必要です。

 なお、雷が近づいているときは、情報収集をおこない、気象状況を把握することも大切です。

 気象庁のWEBサイト「レーダー・ナウキャスト(雷ナウキャスト)」では、雷の激しさや雷の可能性を1km格子単位で解析し、1時間後(10分~60分先)までの予測をマップ画面上に表示しています。

 どこの場所がどれだけ危険かをマップ画面上で直感的に把握できるので、雷の状況を知り、先手をうって避難を進めることができます。

 またAMラジオでは、雷雲が接近するとその放電によりガリガリというノイズ音が入ることがあり、聞き慣れないノイズが聞こえたら注意しておきましょう。

※ ※ ※

 雷が落雷してもクルマの中が比較的安全なことは、JAFの実験などでも科学的に検証されています。気象庁も、自動車の内部を「比較的安全な空間」とアナウンスしているので、他に避難場所がない場合は、クルマの中に避難するのも間違いではありません。

 ただしソフトトップのオープンカーやサンルーフ装着車の場合は、危険なので車内に留まるのは避けましょう。

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