富士スピードウェイにて「D-SPORT & DAIHATSU Challenge Cup 2022」が開催されました。「ダイハツチャレンジカップ」の名称が復活したのはなんと14年ぶり。イベントの模様と、これにかけるダイハツの思いを取材しました。
■ダイハツ車なら何でも参加OK! 「ダイチャレ」が14年ぶりに復活!
2022年8月12日、ダイハツとD-SPORT(SPK)との共催による「D-SPORT &DAIHATSU Challenge Cup 2022」が、静岡県御殿場市にある富士スピードウェイショートサーキットで開催されました。
「ダイハツチャレンジカップ」は1995年から2008年まで開催されていたJAF公認のジムカーナイベントです。ライセンスなどは必要なく、ダイハツ車に乗っていて運転免許証があれば誰でも気軽に参加できるという敷居の低さから、全国各地でモータースポーツ入門のイベントとして人気を博していました。
しかし、2009年初頭にダイハツはモータースポーツ事業から全面的に撤退を決定し、これにともない、「ダイハツチャレンジカップ」も取りやめとなります。
その後、自動車部品などのメーカーである株式会社SPKが主催する「D-SPORT Cup」が、ダイハツ車オーナーのモータースポーツ参加への登竜門を担っていました。そして今回、これと共催というかたちで、ダイハツが14年ぶりに「ダイハツチャレンジカップ」を復活させました。
イベントは開会式の第一声「皆さま大変お待たせいたしました!」に大きな拍手が挙がる暖かい雰囲気のなかスタートしました。午前中は練習走行、午後はタイムアタックというスケジュールで、あいにくの雨のなか、細かくクラス分けされた総勢73台のダイハツ車が次々とコースインしていきます。
その顔ぶれは、初代や現行型の「コペン」をはじめ、最新型の「タフト」や「ムーヴ」、「ミラバン」や「エッセ」、「オプティ」「ネイキッド」、さらには軽トラックの「ミゼットII」や「ハイゼット」、45年以上前の2代目「フェロー」など、新旧入り混じった実にさまざまなものです。
普段サーキットではなかなか見かけない車種の熱い走りが見られるのも、このダイハツチャレンジカップならではの光景といえるでしょう。
そうしたなか、最新の「コペンGRスポーツ」で参加していたのは、ダイハツ工業代表取締役会長の松林 淳さんです。今回は仕事としてではなく、一般枠のあくまでプライベートな参加者としてお忍びでエントリーしていたとのことで、ほかの参加者に交じって熱い走りを見せていました。
会場では、D-SPORTやアルパインスターズなどのレーシングパーツ、レーシングギアの展示や販売も実施されています。D-SPORTのデモカーや全日本ラリー選手権に参戦中のマシンも展示され、走行の合間にそれら車両の細かい点をチェックする参加者の姿も見られました。
また、11月に開催予定のWRCラリージャパンに参戦予定である「コペンGRスポーツ」が、本イベントで初公開となりました。
同車は、かつてのデ・トマソ仕様をどこか彷彿とさせるレッドとブラックの専用カラーリングが施され、ニフコと共同開発したカーボン仕様のフロアアンダーカバーや、AGCと共同開発した曇り防止の熱線入りフロントガラスなどのアイテムが採用されています。
ここからさらに安全燃料タンク、自動消火器、ロールケージなどの改造が施される予定で、このイベント展示後はすぐに全バラシ作業に入るとのことです。
コペンGRスポーツの開発者でもあり、実際にドライバーとしてラリーに参加しているダイハツ工業の相原泰祐さんは「モータースポーツの実戦現場から挙がってきた課題や声に、仕入先メーカーと一緒になって市販を前提にした商品開発をアジャイルに取り組むことは、非常に貴重な経験であり、メーカーとしても新たな知見となってとてもありがたい」と話しました。
■ダイハツが再びモータースポーツ支援に取り組む理由は?
「ダイハツチャレンジカップ」が14年ぶりに復活したのには、どのような背景があるのでしょうか。
ダイハツが再びモータースポーツへ取り組む姿勢をみせるようになった理由について、ダイハツ工業株式会社コーポレート統括本部統括部長 東京支社長の井出慶太さんに話を聞きました。
「ダイハツは景気の関係などもあり、モータースポーツ関連の業務を2008年で中止していました。今回のイベントは14年ぶりで、来年以降どのような取り組みをおこなっていくかはまだ思考中ではありますが、ひとつはトヨタグループの一員として、モータースポーツを起因とした“『もっといいクルマ作り』”に取り組むということ、また自工会グループとしてモータースポーツファン、クルマファンを増やすために、モノ作りコト作りの両輪においてをダイハツとして何か協力ができないかということで、今年から活動を検討し始めました。」
そのスタンスとしては、「モータースポーツのピラミッドのなかで、F1やWECなどの頂点の分野にいきなり挑戦するのではなく、おもに裾野の部分、カスタマーモータースポーツともいわれる入門的なところで何かお手伝いをできないか、といまは考えています」といいます。
「ダイハツのビジネスは軽自動車などのエントリークラスがメインであり、また女性の方の購買層がほかの自動車メーカーと比べて特に大きいメーカーです。そのような方々に、モータースポーツの楽しみや、クルマってこんな楽しみ方もできるんだ、ということを伝えていきたいと考えています。」
そうしたなか実施されたのが、今回の「ダイハツチャレンジカップ」でした。
「今日参加された皆さんも、2気筒360cc時代のフェローから、最近コペンを購入された方まで、ダイハツ車を気に入って大事に乗って頂いていることがメーカーとして財産だと思っています。
景気の影響などで一時、途切れてしまいましたが、またこのようなかたちで、ダイハツ車の魅力に接してもらい、語ってもらう場を継続して設けるようにメーカーとして取り組みをしていきたいですね」
なお来年以降については「どのような取り組みができるのかということを、トヨタさん(GR)とも話し合っている最中です。一家に1台ではなく、ひとりに1台が当然という地域であったり、女性であったり、そういったキーワードを軸に、ダイハツとモータースポーツの関わりという意味で、ここから歴史を刻んでいきたいと思っています」
「モータースポーツに関することはもちろん、GRスポーツも用意しているコペンの次をどうしていくのか、軽自動車のスポーツカーで難しくなる安全装備への対応など、今後の延命方法も含めて積極的に議論をしています。
コペンは長年多くのお客様に愛していただいており、スポーツカーとしては女性オーナーの比率も多く、またモータースポーツの入門を担う存在でもあります。それをどう次に展開していくのかは、またお話できる場がくると思っていてください」
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14年ぶりに開催となった「ダイハツチャレンジカップ」、全車が走行を終えクラス別の表彰式も終了したあとは、じゃんけん大会、「コッペパン」ならぬ「コペンパン」が参加者全員に配られるなど、メーカーとファンの絆をますます深めるイベントとなりました。