クルマの盗難被害についての声がSNSで日々寄せられていますが、クルマ盗難には具体的にどういった手口があるのでしょうか。また、どういった対策を取ると良いのでしょうか。
■「微弱な電波を利用」巧妙すぎる「車盗難」の手口とは
クルマの盗難被害がSNSで相次いで見られます。では、クルマ盗難にはどういった手口があるのでしょうか。
SNSでは、「クルマが盗まれました」「盗難に遭いました。見かけた方情報お願いします」などといった、盗難被害に遭ったユーザーの投稿も少なくありません。
最近では、愛知県で自動車盗難を防止するために、自動車盗難の防止に貢献した情報に対して支払う報奨金を1万円から10万円に引き上げるなど、都道府県ごとの取り組みも進められています。
では、クルマ盗難はどういった手口を使っておこなわれているのでしょうか。これについて、元警察官Bさんは以下のように説明します。
「私が警察官をしていた当時、件数が多かったわけではないですが、クルマの盗難に関する通報はいくつかありました。
盗難の手口のひとつに、『リレーアタック』があります」
リレーアタックは、クルマのスマートキーから発せられる微弱な電波を犯人の1人が特殊な機械で増幅し、クルマの近くにいるもう1人の犯人がその電波を受信してクルマの鍵を開け、エンジンをかけて盗むという手口です。
これにより、クルマから近い自宅の玄関などにスマートキーを置いておくことで、クルマの鍵を開けられてしまう可能性があるといいます。
警察庁生活安全企画課が2022年3月に公表した「自動車盗難等の発生状況について」では、2021年中の盗難件数5182件のうち、クルマの鍵を挿していた、あるいは運転席の近くに置いていたなどの「キーあり」の状態で盗難被害に遭ったのは1196件。
それ以外の「キーなし」の状態で被害に遭ったのが3986件となっており、鍵がない状態でもクルマを盗まれてしまう実態が明らかとなっています。
リレーアタックのほか、スマートキーの電波を利用した「コードグラバー」という手口も存在します。
コードグラバーは、スマートキーから発せられる電波を特殊な機械で受信し、スマートキーのIDコードをコピーしたスペアキーのような鍵を作成してクルマを盗むという手口です。
これについて、元警察官Bさんは以下のように話します。
「コードグラバーの場合は、クルマから100m程度離れていても、スマートキーから発せられる電波を受信できるといわれているので、犯人が近くにいなくても鍵を複製されてしまう可能性があります」
さらに最近では、クルマのバンパーを開けるなどして配線に専用端末を直接つなぎ、クルマのシステムに侵入してドアを開け、エンジンを始動させる「CANインベーダー」という手口も存在。
CANインベーダーは、リレーアタックやコードグラバーと異なり、スマートキーがなくてもエンジンを始動させることができるため、早ければ数分で鍵を開けられ、クルマを盗まれてしまう可能性があります。
■「車盗難に遭わないために…」できる対策とは?
こうした巧妙な手口が広がっていますが、では自身のクルマが盗難の被害に遭わないためにどういった対策を取れば良いのでしょうか。
千葉県警は、3つのクルマの防犯対策をウェブサイトで呼びかけています。
1つ目は「クルマを降りるときは、必ず施錠すること」です。
防犯対策の基本として、たとえ短時間であっても、クルマを離れる時は鍵をかけることが大切です。
これはクルマの盗難対策だけでなく、車上ねらいの対策にもつながります。
2つ目は、「イモビライザの装着」です。
イモビライザは、電子的にキーを照合する仕組みによって、クルマ専用のキーでないとエンジンがかからないという電子式移動ロック装置です。
最近では、イモビライザを標準装備した車種やオプション装備ができる車種も増えており、市販で発売もされています。
そして3つ目は「盗難防止機器の活用」です。最近ではさまざまな盗難防止機器類が販売されています。
例えば、ガラスが割られるなど不正な振動を検知すると警報や無線でクルマの異常を知らせる「センサー式警報装置」などがあります。
このほか、クルマの防犯対策について元警察官Bさんは以下のように説明します。
「万が一に備えて、クルマにGPS装置を装備しておくのも有効です。
位置情報を追跡できるため、クルマが解体される、海外へ密輸されるといった事態に至る前にクルマを発見できる可能性が上がります。
また、クルマそのものへの対策だけでなく、駐車場所の対策も重要です。
犯人は顔を記録されたり、誰かに目撃されたりすることを嫌がるので、防犯カメラやセンサーライトの設置が効果的といえるでしょう。
クルマは深夜から朝にかけて盗まれることが多いため、常時ライトがついている明るい駐車場を選ぶことも有効な対策のひとつです」
前述で触れたクルマ盗難の手口であるリレーアタックは、スマートキーから発せられる電波を利用してクルマの鍵を開ける仕組みであるため、クルマの近くにスマートキーを置かないようにしたり、キーを金属製の箱に入れるなどして電波を遮断したりする方法が有効といえるでしょう。
また、コードグラバーやCANインベーダーは電波を遮断する方法では防げないため、ハンドルロックやタイヤロックなど、クルマを物理的に動かせなくなる装置を取り付ける方法が効果的といえます。
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クルマを盗む手口は日々巧妙になってきています。
盗まれたクルマは解体されるなどして持ち主に帰ってこないケースも多いため、クルマ本体や駐車場の防犯対策をしっかりとおこない、盗難防止に努めましょう。