信号が青になったのに前のクルマがなかなか進まないとき、クラクションを鳴らそうかなと迷ったことがあるかもしれません。このような場合での使用はNGなうえ、鳴らし方によってはトラブルの原因にもなるクラクションは、どのように使うのが正しいのでしょうか。
■「催促クラクション」は違反?クラクションの正しい使用方法とは
青信号になったのに前のクルマが発進しないでいると「プッ」とクラクションを鳴らす人がいます。
実はこのようなクラクションの使い方は違反行為といわれますが、法律上において、クラクションはどのような場面で使用するのが正しいのでしょうか。
青信号にも関わらず、発進しないクルマに対して「プッ」とクラクションを鳴らす行為を「催促クラクション」と呼ばれており、青信号の発進時だけでなく、渋滞中のストップ&ゴーの場面でもよく見かけます。
しかし、そのようなクラクションの使い方は、道路交通法で定められている正しい使用方法ではありません。
首都圏の警察署交通安全課の担当者は、クラクションの使用方法について、以下のように話します。
「クラクションは限られた条件のもとで鳴らす必要がありますが、鳴らさなくてもいい場面で使用した場合も、違反になります。当然ですが、基本的にはクラクションは鳴らさないようにしてください」
クラクションの使用方法に関して、道路交通法第54条の2では以下のように定められています。
「車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない」
このことから、青信号で発進しないクルマへの催促クラクションは、クラクションを鳴らす必要のない場所で鳴らしてしまっているため、上記の「警音器使用制限違反」に該当し、反則金は3000円となります。
「危険を防止するためやむを得ないとき」であればクラクションは鳴らしてよいことにもなりますが、それ以上の具体的な記述はないため、どのような状況を「危険を防止するためやむを得ないとき」とするかは判断が難しいところでもあります。
この「警音器使用制限違反」は、ほかにも、相手への威嚇のための「威嚇クラクション」、挨拶やお礼を表すための「サンキュークラクション」も同様です。
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一方で、どのような場所でクラクションを鳴らさなければならないのでしょうか。
道路交通法第54条の1では、クラクションを鳴らさなければならない場所や場面について、ふたつのルールが定められています。
まずひとつ目が「左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上で道路標識等により指定された場所を通行しようとするとき」です。
ふたつ目が「山地部の道路その他曲折が多い道路について道路標識等により指定された区間における左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上を通行しようとするとき」です。
つまり、クラクションを鳴らさなければならない場所は、左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路、山地部の道路、その他曲折が多い道路であり、かつ警告器に関する道路標識がある道路です。
このように、クラクションを鳴らす必要があるにも関わらず、鳴らし忘れた場合は「警音器吹鳴義務違反」に該当します。
違反した場合、違反点数1点、反則金6000円(普通車の場合)が科せられます。
■「催促クラクション」には危険がいっぱい? どんなことが想定される?
催促クラクションは、違反に該当してしまうおそれがあるだけでなく、誤った方法で使用してしまった場合、危険が及ぶ可能性もあります。
前出の担当者によると、「クラクションというのは周囲を驚かせるほどの大きな音を発するため、誤った方法や場違いなシーンで鳴らしてしまった場合、煽り運転に繋がるおそれもある」といいます。
多用したり誤った使い方をすると、かえって危険を生み出し、二次的な事故を誘発するおそれがあります。
たとえば「相手を刺激しドライバー同士のトラブルとなる」「本当に危険なときとそうでないときの区別がつかない」「注意力散漫」「騒音公害」などが、クラクションを多用することで生じるリスクです。
とくに相手を刺激するという点には注意が必要です。クラクションの音は威嚇ともなり、人によっては強い不快感や怒りを持つこともあります。
それこそ長いクラクションや何度も繰り返すクラクションなどは、相手の怒りを爆発させかねません。
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クラクションは本来、自分の存在や危険を知らせ、事故を防止するために使うものです。
相手への催促や威嚇、挨拶などに使うものでなく、万が一多くのドライバーがそのような行為をすれば、道路上は危険な状態となります。
必要な場面では忘れずに鳴らさなければなりませんが、必要でない場面での多用は当然ながら、控えるべきでしょう。