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なぜ道路下から「発泡スチロール」出てきた? 大雨で浮いて話題に! 画期的な「道路の作り方」とは

くるまのニュース 2022年8月28日 11時10分

地盤が軟弱な場所では、土やコンクリートの約100分の1の軽さである、発泡スチロールが軽量盛土として使用されています。発泡スチロールを盛土材料として使用する「EPS工法」とは、どういったものなのでしょうか。

■豪雨で道路に発砲スチロールが! EPS工法とは

 最近では、梅雨や台風の影響などにより、日本各地で豪雨災害が起こっていますが、多くの雨が降った結果、道路に発砲スチロールでできた軽量盛土が隆起する事態が発生しています。
 
 発泡スチロールで出来た道路とは、どのようなものなのでしょうか。

 2022年8月上旬、SNSに大雨により道路が地面からせり上がった結果、地面下に埋まっている発泡スチロールが露出した状態が投稿され話題となっています。

 その投稿に対して「道路の下に発泡スチロール入ってたの!」「エグすぎる」「道路の下ってこういうのもあるんですね」というような驚きの声が多くみられました。

 一般的なイメージでは、路面にアスファルト舗装が施されその下には土などがあると考える人が多いかもしれません。

 しかし、道路を建設する場合に地盤が軟弱な場所では、土やコンクリートの約100分の1の軽さである、発泡スチロールが軽量盛土として使用されていることがあります。

 このような発泡スチロールを盛土材料として使用することを「EPS工法」といいますが、どういったものなのでしょうか。

 建設用資材を販売している会社の担当者は、EPS工法について、以下のように話します。

「主に公共工事でEPS工法を活用しています。

 また、地盤が軟弱な場所では、土やコンクリートの場合沈んでしまうため、軽い素材である発泡スチロールを軽量盛土として活用しています。

 軽量盛土にはそのほかにも、ウレタンなどがあります」

 盛土といえば、土やコンクリートをイメージする人もいるかもしれませんが、状況や条件によっては軽い素材である発砲スチロールやウレタンが使用されることがあります。

 発泡スチロールは、土やコンクリートの約100分の1の軽量性を持ち、大型建設機械を必要とせず、人力による運搬もしやすいという特徴があります。

 また、発泡スチロールは自立性があるため、容易に積み重ねていくことが可能です。

 EPS工法は、軟弱地盤上の盛土や急傾斜地盛土、構造物の裏込、直立壁などの重さによる圧力や負担を減少する必要があるような場所で適用されています。

 荷物を運ぶ際に緩衝材として使われることもある、発砲スチロールですが、やはり軽くもろい印象があります。

 耐久性も求められる道路の盛土として使用し、問題ないのでしょうか。

 前出の担当者は、発泡スチロールを使用したEPS工法について、以下のように話します。

「軽量盛土は“耐候性がある”のがメリットのひとつです。

 薬品などによって侵食されることはほとんどありません。

 さらに軽量盛土という名前の通り、非常に軽い素材であるため、“施工しやすい”のもメリットのひとつです。

 発泡スチロールは1立方メートルで20kgの重さとなっており、女性でも片手で持てるほどのサイズ感であるため、人の手のみで工事をおこなうことができます。

 また、軽いということは地盤に与える影響が少ないということでもあります」

 このことから、軽いという特徴は、工事のしやすさと地盤への影響が少ないというメリットとして生かされるため、さまざまな道路で適用されていることがわかります。

■EPS工法のメリットやデメリットは?

 一方で、前出の担当者は続けて以下のように話します。

「しかし、軽いが故のデメリットもあります。非常に軽い素材であるため、水に浮いてしまいます。

 通常の雨の場合は問題ないですが、ゲリラ豪雨など、予想外の雨が降り、道路が浸水し、隆起してしまった場合、発泡スチロールが強い力でコンクリートを押し上げて浮いてくるため、発泡スチロールがあらわになってしまいます」

 このような発泡スチロールのメリットでもある“軽さ”が仇となり、SNSで大きく話題となったような、豪雨による隆起が起こってしまいます。

 そのほかにも、発砲スチロールを軽量盛土として使うデメリットがあるようです。

「発泡スチロールは原油でできているため、“油に弱い”というのがデメリットです。

 もしEPS工法を施した道路上でクルマによる火災が発生した場合、道路が沈下し、ガソリンが発泡スチロールに触れてしまい、発泡スチロールが溶けるため、道路の中が空洞の状態になってしまいます。

 また、軽量盛土は可燃物の扱いになるため、炎にも弱いです。

 火種が直接発泡スチロールに触れてしまった場合、同じく溶けてしまいます」

実際に発泡スチロールを使ったEPS工法を導入した工事例(画像:鳥取県公式サイトより)

 このように、発砲スチロールを軽量盛土に使うにはメリット・デメリットの両面があるため、地盤の特性に合わせた選択をする必要があります。

 しかし、EPS工法は、軟弱地盤対策工事や急傾斜地拡幅盛土工事、防振対策工事など、さまざまな用途で使われています。

 完成後の維持管理もしやすく、道路づくりに欠かせない工法のひとつとして、今でも活用されています。

 軽量で耐候性があり、耐震性にも優れている発泡スチロールは、日本に合った工法だといえるのかもしれません。

※ ※ ※

 実際に、2009年8月に発生した地震により、東名高速道路の路肩が崩落した事故では、地盤の軟弱性や盛土内に転石があることを考慮して、修復工事としてESP工法が用いられました。

 一晩で盛土を成功させたことからも、やはり、EPS工法の軽量性と施行性は十分であることが伺えます。

 デメリットはあるものの、軟弱な地盤の場合、その軽さを十分に生かせることから、メリット・デメリットを考慮したうえで利用され続けているのです。

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