2022年8月26日に発表されたスズキ新型「スペーシアベース」。最大のライバルといえるダイハツ「アトレー」では発表後すぐにキャンピングカー仕様が登場しましたが、新型スペーシアベースでもキャンピングカー仕様は登場するのでしょうか。
■大注目の新型スペーシアベースは車中泊に使える? 使えない?
発表前からネット上で話題になっていたスズキ新型「スペーシア ベース」が、2022年8月26日についにお披露目となりました。
ライバルとなるダイハツ新型「アトレー」が登場した際には即座に車中泊仕様や軽キャンパーが制作されましたが、その道のプロは新型スペーシアベースをどう見るのでしょうか。
同モデルの特徴は、兄弟車の「スペーシアカスタム」顔でありながら、4ナンバー商用車登録ということ。
エクステリアデザインはヨーロッパ車に寄せたシックなテイストにして、ほのスペーシアシリーズとは一線を画したものになっています。
昨今の軽自動車の傾向としてあるのが、セカンドシートの快適性を敢えて捨てて、積載的を向上させて道具としての魅力をアップさせることです。
そのムーブメントを創ったホンダ「N-VAN」を筆頭に、ダイハツ「タフト」や「アトレー」と続きました。とくにアトレーは中年層のオジサン世代から人気だといいます。
今回の新型スペーシアベースもまた、このトレンドに乗った1台といえそうです。
新型スペーシアベースの最大の特徴は、床下収納できるセカンドシートと、ラゲッジスペースの使い勝手を変化させられる「マルチボード」を組み合わせたことです。
このラゲッジボードはかつて、ホンダが「N-BOX+」で採用したものに酷似していますが、上中下の3段階の高さに加えて、前後を仕切るパーティションにもなるというアイデア機能。
マルチボードを上段に置き、セカンドシートを倒して椅子代わりにすることでワークスペースとなります。
さらに運転席・助手席のシートバックを倒して、ボードを中段に置くと就寝モードになるなど、アウトドア派の気を惹く機能がいくつかあります。
また収納スペースが豊富なのも、ユーザーを魅了する美点のひとつです。
クオーターパネル内側のポケットをはじめ、助手席下のボックス、インパネ上のボックスなど、物をしまっておける場所が各所に設けられているのは、自家用、商用問わず便利を感じさせるポイント。
首都圏にあるスズキ販売店のスタッフに、新型スペーシアベースの魅力を聞いてみました。
「このモデルは税制面でリーズナブルな4ナンバー商用登録なのに、5ナンバー登録車のようなエクステリアを持っています。
またエブリイよりも車高が低いため、安定した走りも実現しています。
マルチボードの採用によって、荷室の使い方もほかのスペーシアシリーズより多様性が生まれたのも特徴です。
さらに見逃せないのが、価格と装備のバランスの良さです。
上位グレードのXFは、154万円強の価格ながら(2WD)、電動スライドドアとアダプティブクルーズコントロールが標準装備になっています。
これは市場を見渡しても、スペーシアベースだけではないでしょうか」
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たしかにこのモデルは、先行して発売されたライバル車・アトレーと比較しても、見劣りしない魅力をいっぱい持っていそうです。
■新型スペーシアベースはキャンピングカー仕様も出てくる?
一方で、車中泊のプロともいえるキャンピングカービルダーは、違う見方をしています。
埼玉県内にあるキャンピングカービルダーに、新型スペーシアベースの感想を聞きました。
「正直なところ、車中泊車としてはどうでしょうか。
このモデルはFF車ですので、ノーズ部分が長く、その分だけ室内スペースが取られてしまいます。
フラットフロアはできますが、運転席・助手席を最大限に前にズラしても、おそらく150cm程度の室内長しか取れないと思います(カタログ数値では137cm)。
だからこそ、ボードと前席を連結させることでフラットシートを作ったのでしょう。
見た目も洗練されているし、女性ウケしそうなエクステリアデザインですが、内装が張り出ていることなどを考えると、プロはキャンパーベースとしては見ないでしょうね。
DIYでベッドを造る人もいると思いますが…」
同じくライバル車のN-VANは、助手席を床下収納可能にすることで、室内長を長く取ることに成功しています。
またアトレーはハイゼットバンと同じ駆動系レイアウトを採用しており、こちらも室内空間を確保するには有利です。
一見すると3車は横一列のライバルのように思えますが、新型スペーシアベースだけ違う立ち位置にいることが分かります。
従来になかったエクステリアと、マルチボードという便利機能、商用車ならではのフラットフロア、そして5ナンバー車譲りの安定した走りと静粛性が、新型スペーシアベースのウリといえるでしょう。
エブリイ並のスペースユーティリティを期待するのは難しいですが、さまざまな機能と自分のライフスタイルが合致すれば、新世代商用車の第三極になるかもしれません。
いずれにせよ、ヒットの可能性は十分です。