EVをはじめとする電動車の普及を促進するために、各国は補助金による購入支援をおこなってきました。一方、中国や英国などの一部の国では、そうした補助金政策を終了する動きが出ています。
■補助金政策によって普及が進むEV
日本をはじめとする先進諸国では、EVをはじめとする電動車の普及を促進するために、補助金による購入支援をおこなってきました。
一方、中国や英国などの一部の国では、そうした補助金政策を終了する動きが出ています。
急速な成長を見せたEV市場は、今後どうなるのでしょうか。
都市部におけるCO2排出量削減などを目的として、先進諸国ではEVをはじめとする電動車の導入を促進する動きが進められています。
ただ、現時点ではEVなどの電動車は、既存のガソリン車に比べて車両価格が割高となっているのが実情です。
例えば、2022年6月に発表された新型軽EVの日産「サクラ」は、233万3100円から294万300円となっていますが、同じく日産の主力軽自動車である「デイズ」は132万7700円から178万900円と、およそ100万円の価格差があります。
サクラとデイズの大きな違いはパワートレインにあるため、この価格差はEVとガソリン車の価格差といい換えても差し支えないでしょう。
一方、サクラは7月末時点で約2万3000台の受注を獲得するなど、EVとしては非常に好調な滑り出しを記録しています。
これを後押ししているのが、国や地方自治体による補助金です。
日産では、いわゆる「国の補助金」である「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」(55万円)と、東京都による補助金(最大60万円)を合わせると、115万円もの補助金が得られると説明しています。
補助金を考慮すると、サクラの実質的な車両価格はデイズと同等かそれ以下になるため、積極的に検討をするユーザーは多いといえそうです。
多くの場合、クルマを購入する際の重要なポイントとなるのは車両価格です。
補助金によって、EVの価格がガソリン車と同等程度になれば、EV購入に対するハードルは大きく下がります。
その結果、EVの販売台数が増えれば量産効果によって車両価格そのものが低下し、現在のガソリン車同様にEVが普及していくことが期待されています。
電動車に対する補助金政策は、日本をはじめとする先進国の多くで導入されています。
なかでも中国は電動車普及のために手厚い補助金政策をおこなってきたことで知られています。
地域によっても異なるものの、2012年以降、最盛期には数百万単位の補助金や税制優遇があったことから、多くの国民がEVをはじめとする電動車(新エネ車)を購入し、それに合わせて世界中の自動車メーカーが中国に新エネ車を投入しました。
極端なまでの補助金政策には賛否両論がありましたが、中国が世界最大のEV市場となっている背景には、多額の補助金が後押しになったことはいうまでもありません。
■一部の国では補助金終了の動きが?
そうしたなかで、一部の国ではEVの補助金政策を見直す動きが出はじめています。
中国では、これまで続けてきた新エネ車への補助金を2022年をもって終了することを明らかにしています。
また、英国では2022年6月14日をもって、EVやプラグイン・ハイブリッド車(PHV)に対する購入補助金を終了させています。
現在ではこの両国を中心とする局所的な動きですが、今後ほかの国も追随する可能性もあり、EVをはじめとする電動車の普及に水を差す形となることが懸念されています。
補助金政策が終了もしくは縮小される背景には、すでにEVなどの電動車が普及期に入ったことにあると説明されています。
実際、2021年の中国におけるEVやPHV、燃料電池車(FCV)の合計販売台数は330万台を超え、全体のおよそ15.7%を占めていました。
2022年には500万台を超えると見られており、想定を大きく超えるペースで電動化が進んでいるといいます。
一方の英国も、2021年の新車販売台数におけるEVの比率が11.6%におよぶなど、順当に普及していることがうかがえます。
また、欧米の自動車メーカーの多くが、小型で安価なEVを提供するようになったため、EV補助金に対するメリット自体が薄れていったという背景もあるようです。
新しい製品の導入を促す際、補助金による支援は有効な政策といえます。
ただ、補助金頼みの普及は本質的ではないとの批判も多く、適度なタイミングでの補助金終了は、補助金政策における大きな課題のひとつです。
実際、中国や英国でもこれまで段階的に補助金の減額をおこなっており、そういった意味では突然の打ち切りではありません。
日本の場合、ハイブリッド車比率は高いものの、補助金のおもな対象となるEVの普及率は先進諸国のなかでは低く、現時点では十分に普及しているとはいえない状態です。
そのため、現状では補助金政策が終了もしくは縮小される可能性はそれほど高くはありません。
しかし、中国や英国の動きを見ていると、近い将来日本でも同様の動きとなる見込みは高いといえるでしょう。
※ ※ ※
サクラの販売好調などもあり、2022年度のCEV補助金は10月末頃をめどに申請受付を終了するとアナウンスされています。
これまでのケースでは、翌年度の予算がさかのぼって適用されるため、今後購入するユーザーもCEV補助金は得られると見られます。
しかしEVなどの電動車を購入を検討しているユーザーは、補助金については入念に確認しておくことをおすすめします。
いずれにせよ、補助金は無限ではないということはEVやPHV、FCVの購入を検討する際には考慮しておく必要があります。