ガソリン価格の高騰が話題になり久しいですが、最近では原油価格が下落傾向にあるようです。このままガソリン価格も下がっていくことを期待したいところですが、話はそう簡単ではないようです。
高止まりを続けるガソリン価格ですが、原油価格は下落傾向にあるようです。
このままガソリン価格も下がっていくことを期待したいところですが、話はそう簡単ではないようです。
資源エネルギー庁によると、2022年8月22日時点におけるレギュラーガソリンの全国平均価格は169円/Lとなっており、1年前と比べておよそ11円、2年前と比べるとおよそ34円もの値上がりとなっています。
現在は、「燃料油価格激変緩和補助金」が発動しているため、おおむね170円/L以下でおさまっていますが、資源エネルギー庁の試算によると、補助金がなければ200.4円/Lもの価格となっていたようです。
ガソリン価格の高騰は、クルマを使用するユーザーに大きな影響を与えることはもちろん、物流コストが上昇することから、あらゆるものの値上げの要因となります。
ただ、ガソリン価格は今後ゆるやかに下降していくという予測も出はじめています。
その根拠となるのが「WTI原油価格」です。
WTI原油価格は、ニューヨークのマーカンタイル取引所で先物取引される、米テキサス州で産出される原油の価格です。
原油価格の世界的な指標となっているだけでなく、世界経済の動向を見る上でも非常に重要な指標となっています。
WTI原油価格は、将来の需要を予測して取引する先物取引によって決定される価格です。
ガソリンは原油をもとに精製されるものであり、原油価格がガソリン価格に直結します。
2022年6月頃までは、110ドル/1バレル(約160L)前後で推移していたWTI原油価格ですが、8月現在では90ドル/1バレル前後にまで下落しています。
WTI原油価格は、中東の産油国をはじめとした各国の情勢によって左右されます。
基本的には需要と供給のバランスが重要となりますが、産油国が原油の生産量を増やせば供給が増えるため、原油価格は下落することになります。
しかし、これまで中東の産油国およびロシアなどで構成される「OPECプラス」では、原油の増産には消極的な姿勢をとってきました。
その背景には、世界的なコロナ禍が続くなかで、主要な国々の経済回復のめどが立っていないという事情があります。
一方、「OPECプラス」では、8月の原油生産量の増加を決定。加えて、9月にも増産をおこなうことを明らかにしたことで、原油の供給に対する不安が解消されたことが、WTI原油価格の下落につながったと見られています。
ただ、産油国にとって原油価格の下落は国家の一大事です。
そのため、世界的な需要の回復、つまり経済の回復が見られない限り、積極的な増産は期待できないという指摘もあります。
■原油価格が下がってもガソリン価格は下がらない?
先行き不透明ではあるものの、原油価格が下落傾向にあることで、ガソリン価格も落ち着きを見せていくことが期待されています。
ただ、実際にユーザーが「ガソリン価格が下がった」という実感を得られるまでには、非常に多くのハードルがあるのも事実です。
そのひとつが円安です。原油は輸入製品であるため為替の影響を大きく受けますが、ここ最近の急激な円安は原油の購入コストを大きく引き上げています。
WTI原油価格は2か月でおよそ20%下落していますが、ドル円相場はその間におよそ10%円安となっているため、原油の購入コスト自体はそれほど下落していません。
原油価格やドル円相場は短期的に変動する可能性もあるため、近い将来に落ち着く可能性はあります。
一方、ガソリンスタンドを運営する石油元売り業者の減少は、ガソリン価格を中長期的に高止まりさせる要素のひとつです。
日本では少子高齢化における人口減少やクルマの低燃費化によって、ガソリンそのものの需要が減少傾向にあります。
そうしたなかで、石油元売り業者は統廃合を繰り返すことで生き残りを図ってきましたが、それでもガソリンスタンド数の減少は止まりません。
価格低下が競争によって引き起こされることは経済学の常識ですが、現在ではかつてほどガソリンスタンド同士の競争が起こることはありません。
これ以外にも、ガソリン価格を左右する要素は非常に多くあります。
原油価格は下落傾向にありますが、実際にガソリン価格が下がったと実感できるようになるまでには、まだまだ時間がかかりそうです。
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原油のほとんどを輸入に頼っている日本では、中東諸国を中心とする産油国の情勢を大きく受けます。
関係機関の多大なる努力によって、これまでは安定した供給が実現していたガソリンですが、それが当たり前ではないことをあらためて理解する必要があるのかもしれません。