街中でタクシーを見かけると駐車禁止場所に停まっていることや、横断歩道の真ん中で客乗せ行為をしているなど乱暴な様子が伺えます。しかしその原因には「お客のワガママ」もあるようです。
■タクシーの違法駐車はなぜなくならない?
深夜の繁華街や終電後の駅周辺で多く見られるタクシーの列など、タクシーによる違法駐車や迷惑行為は後を絶ちません。
これらはもちろん許されるべきものではありませんが、タクシー側にもやむを得ない事情があるのも事実のようです。
駐車禁止の標識のある路上への駐車は、円滑な交通をさまたげ渋滞の原因となるばかりでなく、さまざまな交通事故を誘引しかねないことなどの理由から、絶対にしてはならないことです。
しかし、実際にはそうした場所で駐車をする車両が少なくないのも事実です。
とくに、繁華街やターミナル駅の周辺では、タクシーによる違法駐車が横行しています。
いうまでもなく、タクシーは乗客を指定の場所まで送り届けることで対価を得ます。
一般的に、深夜の繁華街や終電後の駅周辺は、タクシーを利用する人が多いことから、多くのタクシー運転手が客待ちをおこないます。
主要な駅では、タクシー専用の客待ちスペースが用意されている場合もありますが、ピーク時にはそのキャパシティを超えてしまうこともあります。
本来のルールであれば、客待ちスペースへと入場できなかったタクシーは、安全かつ合法な場所へ駐車するか周辺を走行するなどして、客待ちスペースが空くタイミングを図ります。
しかし、実際には「客待ちスペースを待つための違法駐車の列」ができてしまうことがほとんどです。
その列に並ばない限り、いつまで経っても客を乗せることができないため、違法だと理解していてもやむを得ず駐車してしまうというのが実情です。
とはいえ、こうした違法駐車で多くの人が迷惑をこうむっていることも事実です。
とくに、京都市の四条河原町交差点周辺は、タクシーの違法駐車が多い地域として知られていました。
NTTデータ経営研究所と京都市は、そうした現状を打開するために「ナッジ」と呼ばれる、行動科学の知見を活用して人々のより良い行動を後押しする政策手法によってタクシーの違法駐車の削減に取り組みました。
具体的には、歩行者とタクシー運転手の両方に対し、違法駐車をおこなわないよう促す看板を設置。
その結果、四条河原町交差点周辺のタクシーの1日あたりの違法な停車時間が約9割削減されるなどの絶大な効果があったといいます。
ただ、こうした官民一体となった取り組みが実現する例はまだ多くはなく、多くの場所では事実上「野放し」状態となっているのが現実です。
■タクシーによる迷惑行為、タクシー運転手の本音は?
違法駐車以外にも、タクシーによる迷惑行為が問題となることがあります。
例えば、本来は停車することのできない横断歩道周辺での客の乗降や、突然の急停車、狭い路上でのUターンなどが挙げられます。
こうした行為は、ほかのクルマや歩行者からすれば非常に迷惑かつ危険なものであることはいうまでもありません。
しかし、多くの場合、これらは客からの無茶な注文によるものであるようです。
あるタクシー運転手は次のように話します。
「お客さま様はできるだけ目的地に近い場所へ停車することを希望することが一般的です。
そこが横断歩道やバス停など停車が禁止されている場所であった場合は停車するわけにはいきません。
しかし、急いでいるお客さまのなかには、ものすごい剣幕で指定の場所に停車するように指示することがあります。
突然の急停車も極力避けるようにはしていますが、お客さまからの指示通りに停車しないとトラブルとなってしまうこともあるため、やむを得ず急停車してしまう場合があるのも事実です」
さらに停車以外にもトラブルとなることがあるといい前出のタクシー運転手は次のように話しています。
「Uターンをすることで走行距離を短くしようとされるお客さまもいらっしゃいます。
指示通りにしないと『あえて遠回りした』とクレームを入れられてしまうこともあるため、悩ましいところです。
どんな事情があったとしても、道路交通法上の責任はタクシー運転手にあるため、違法行為をすることがないよう細心の注意を払っています。
しかし、お客さまとのトラブルを避けるために、指示通りに動いてしまうタクシー運転手もいるかもしれません」
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全国ハイヤー・タクシー連合会によれば、2021年3月時点で全国には21万を超えるタクシーが営業しているといいますが、その数は年々減少傾向にあるのが実情です。
タクシーは鉄道やバスなどの公共交通機関を補完する重要な交通手段のひとつです。
便利な交通手段を守るためにも、タクシー運転手はもちろん、乗客にも一定のマナーが求められます。