フルモデルチェンジしたトヨタ「シエンタ」には3列シート仕様に加え、2列シート仕様が設定されます。単にシートを省いただけではなく、荷室やシートアレンジも異なる凝った造り分けがされていました。
■「マジック」ではない! 地道な見直しの積み重ねで実現した空間の拡大
2022年8月23日、トヨタはコンパクトミニバン「シエンタ」をフルモデルチェンジしました。
新型シエンタには、3列・7人乗り仕様に加え、2列・5人乗り仕様が設定されています。2つの仕様の違いはどこにあるのでしょう。
新型シエンタのボディサイズは、全長4260mm×全幅1695mm×全高1695mm、ホイールベース2750mmです(2WDモデル)。
5ナンバー小型車枠に収まるコンパクトなサイズが特徴です。
先代(2代目)モデルに対し全高を20mm高くした一方で、全長と全幅、ホイールベースは同寸を維持しました。
トヨタによると、扱いやすい大きさを維持させることは、シエンタ開発における必須条件だったといいます。
そのなかでスクエアなボディデザインを採用し効率を高め、室内空間を拡大させました。
新型シエンタの5人乗り仕様は、3列目席(サードシート)の空間を荷室に充てたものですが、単にシートを取り払っただけのお手軽仕様ではなく、専用の荷室設計となっています。
2列目(セカンドシート)はワンアクションで倒れると同時に床下に収まるシンプルなチルトダウン機能が備わります。
これにより、荷室を拡大した際バックドア(テールゲート)側からフラットな荷室の床面が連続するよう、工夫が施されています。
5人乗り仕様でセカンドシートを前倒しした際の荷室最大長は2045mmと、大人が車中泊で就寝することもできるほどの長さを確保することができます。
対する3列・7人乗り仕様は、異なるシートアレンジが設定されています。
トヨタによると、先代シエンタのユーザーの多くは通常サードシートを格納したまま使用し、その空間を広い荷室として使っていたといいます。
例えば週末に友人や親兄弟などが訪れた際など、必要なときだけサードシートを引き出して使うイメージです。
短い全長のなかで効率的に空間を活用するため、サードシートはセカンドシートの下へ押し込んで収まるダイブイン機能が組み込まれています。
まず一度セカンドシートを前に倒してから、サードシートを収める流れです。
そのため、5人乗り仕様にあるセカンドシートのチルトダウン機能はなく、座面ごと前方へ回転するように倒れる独自のタンブル機能が備わります。
これはサードシートの収納時のみならず、セカンドシートも前倒ししてさらなる荷室拡大をする際にも活用できます。
ただしセカンドシートを前倒しした際に座面と背もたれ分の幅があるため、荷室長は最大でも1525mmと、5人乗り仕様に比べ短くなる点は注意が必要です。
その一方で荷室のフロア高自体は5人乗りよりも低く抑えられるため、自転車の積載などの面ではむしろ有利に働きます。
新型シエンタでは、3つ用意されるグレードすべて、5人乗りと7人乗りを選択することができます。
購入検討する際に5人乗りと7人乗りを迷ったら、まず荷室アレンジの違いを実車でそれぞれ確かめてみるのがよいでしょう。
■サードシートを多用するならいっそ「ノア/ヴォクシー」という選択肢も
新型シエンタのサードシートは、コンパクトなサイズ感のなかでも、十分な空間が確保できるような工夫が施されています。
とはいえ、さすがに大柄な大人が長距離ドライブできるほどの余裕あるサイズではありません。
もしサードシートを比較的頻繁に利用すると想定される場合には、上位クラスのミディアムサイズミニバン「ノア/ヴォクシー」も比較検討するのがよいでしょう。
ノア/ヴォクシーのボディサイズは、全長4695mm×全幅1730mm×全高1895mm(2WDモデル)と、シエンタに比べ全長や全幅がとくに拡大し、これに伴って3列それぞれの足元や頭上空間の余裕も大幅に増します。
またサードシートを収納した際の荷室空間も、シエンタと比べてしまうと格段に拡がります。
ちなみに新型シエンタの消費税込み価格は、ガソリンモデルが199万円から256万円、ハイブリッドモデルが242万円から291万円です(ともに7人乗り・2WDの場合)。
対するノア/ヴォクシーの価格は、ガソリンモデルが267万円から用意されていて、思いのほか価格帯も接近していることがわかります。
ただし首都圏近郊のトヨタ販売店スタッフに聞くと「新型シエンタを検討しているお客さまが、ノア/ヴォクシーと比べるケースは比較的少ない」と話し、ノア/ヴォクシーについても同様だといいます。
それぞれ最初から車種を指定し来店することが多いようです。
一方でノア/ヴォクシーの商談時、四角く大きな実車を目の当たりにして、小柄なシエンタも検討するケースがみられると教えてくれました。
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トヨタは新型シエンタ開発にあたり、ボディサイズをほぼ拡大しなかった一方で、室内空間の効率がグンと上がる四角いフォルムを採用しました。その際、意識的に角を丸めたデザインとしています。
これには、先代シエンタに比べ数値以上に大きく威圧的に見えてしまうことを避ける狙いがあったといいます。
ユーザーがとくに重視する「扱いやすいサイズ感」に対し、新型シエンタの開発陣がきめ細かく配慮していることがうかがえるエピソードといえるでしょう。