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1980年代に大ヒット「デジタルメーター」 未来を感じさせた“右肩上がり”の回転計はなぜ廃れた!?

くるまのニュース 2022年10月10日 11時10分

クルマのアナログメーターがデジタル化したのは1980年代からでした。いま見るとサイバー感がたまりませんが、1990年代には姿を消してしまいました。その理由を探ります。

■1980年代初頭から流行!様々な車種に採用されたデジタルメーター

 1980年代前半に登場したデジタルメーター。先進的・未来的なデザインや、それまでの指針式メーターと異なる動きの面白さから、「デジパネ」とも呼ばれて人気を博しました
 
 しかしその後1990年代から2000年代初期まで使われた後は、一部車種の採用のみに。現在ではフル液晶によるデジタルメーターが台頭しているものの、当時流行したスタイルのメーターは見られません。
 
 ではなぜ、デジタルメーターは姿を消してしまったのでしょうか。

 日本でデジタルメーターが初めて採用されたのは、1981年の初代トヨタ「ソアラ」。「エレクトロニック・ディスプレイメーター」という名称で登場しました。

 円形のメーターが消え去ったパネルには、数字のみが表示されるスピードメーター、エンジンの回転数に合わせて右肩上がりに光の表示が増えてゆくタコメーターを設置。水温計や燃料計までデジタルのブロックが増減するという、その先進的な意匠に興奮を覚えた人は多いと思います。

 その後もデジタルメーター採用車は拡大。特にトヨタは積極的で「マークII」兄弟や「クラウン」に搭載しただけでなく「カローラ」や「コロナ」でも見られました。

 さらにはスポーツカーの「レビン/トレノ」から「セリカ」「スープラ」、1BOXワゴンの「ハイエース」までが、デジタルメーターを輝かせていたほどです。

 デジタルメーターが流行した理由は、デジタル時計やゲーム機が普及しはじめ、様々なジャンルにコンピューターが台頭して電子制御化が進んでいたという、当時の時代背景も後押ししています。

 世界初のコンピューターグラフィックスを採用した映画「トロン」なども上映され、スペイシー(宇宙的)で未来的なデザインも好まれるようになっていました。

 採用する車種が増加するにつれ、技術的な改善も進みました。

 当初は発光ダイオード式だったため、明るい時間に見にくい問題があったのですが、1982年には三菱が「トレディア/コルディア」でカラー液晶式メーターを世界初採用。その後もLED、FL管などを用いるメーターが開発され、凝ったデザインも続々と出現しました。

 中でもいすゞ「ピアッツァ」(初代)のデジタルメーターは、上下方向が高いメーターパネル内に、各種メーターや警告灯をグラフィカルに多数配置。

 日産「レパード」(2代目)のデジタルメーターも画期的で、液晶画面に3Dグラフィックのようにタコメーター・水温計・燃料計が立体的に描かれていました。

 デジタルメーターが流行したのは、「コクピット感」「SF感」の高さだけでなく、純粋に機械としての「カッコよさ」「気分の高揚感」があったからではないでしょうか。

 事実、現在でも、当時生まれていなかった世代も、これらのデジタルメーターを見ておおいに惹かれているのが、その証明かと思います。

■「右肩上がりのタコメーター」を持つデジタルメーターが消えた理由とは

 1990年代の初期まではその流行が続きますが、それ以降は採用車種が減少。トヨタは上位のマークII系やクラウンを中心にデジタルメーターを存続するも、2000年代に入るとセンターメーターを用いる一部車種や、ハイブリッドカー以外では、使用される機会が減少しました。

デジタルメーターパネル以外にも、メーターフードまわりの機能的なサテライトスイッチが備わるなど、近未来感がたまらない! いすゞ「ピアッツァ」のインパネまわり[1981年]

 デジタルメーター自体も、80年代?90年代のようにアナログメーターをハイテク表示で置き換える、というニュアンスから、最低限の情報を表示するためのメーター、というイメージに変化。ハイブリッドカーでは、パワートレーンの稼働状態を示すようにもなりました。

 ではなぜ、かつてのような80年代的デジタルメーターは廃れてしまったのでしょうか。

 そこで、いすゞのデザイナーである仙波徹也氏に、その理由を聞いてみました。

「その瞬間の速度を認識するには、デジタルメーターが見やすいのですが、直感的に今何km/h出ているのか、など推移する情報を把握するにはアナログメーターが向いているため、デジタルメーターは主流にならなかったと思われます。

 リニアにプロセスを認識させるには、やはり指針式のメーターが向いているのではないでしょうか」

●現在はフル液晶のデジタルメーターが主流に

 現在では、メーターパネルがすべて液晶表示のフル液晶メーターが登場。液晶画面のためどんな表示も可能なので、盤面全体のデザインや色のテーマを変更したり、センターにナビ画面を出したりと自由自在です。

 物理的な部品が存在せずコストダウンに貢献するため、今後の主流となりつつあります。

 フル液晶メーターは、デジタルメーターなのにアナログ風の指針式メーターを模すこともできます。

 文字のみを表示する既存のデジタルメーターの欠点を補えることも、フル液晶メーターの美点と言えましょう。

※ ※ ※

 たしかに80年代のデジタルメーターは廃れてしまいましたが、見ると未だにワクワクさせてくれます。

 それは、当時強かった21世紀(未来)への憧れや、未知のテクノロジーに挑戦しようとした「夢」が、デジタルメーターから感じられるからなのかもしれません。

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