健康志向が高まるなか、自転車を日常的に使うユーザーも少なくなりませんが、それにともない「ルール」を守らない事例も散見されます。改めて知っておきたい「自転車の乗り方」について紹介します。
■知らず知らずのうちにマナー違反の例も!?
節約や健康志向の高まりに加え、コロナ禍の密を避けての通勤や通学のため、都心などでも通勤時間帯に頻繁に見かけるようになった自転車利用者。
クルマやバイクに比べ自由度が高い利点がある反面で、「右折レーン」にクルマと一緒に並ぶなど極めてマナーの悪い自転車の乗り方も目につくようになりました。
知らず知らずのうちにマナー違反をしている可能性もある「自転車の乗り方」のルールについて、再確認します。
自転車乗りの悪質なマナーについて、たとえば「スマホを見ながら片手運転」「右折レーンに並ぶ自転車」や、走行車線を「逆走して走る自転車」といった様子は、SNSでもたびたび話題になっています。
自転車は名前の通り「車両(軽車両)」です。そのため、道路交通法を守らなければなりません。
しかし、歩道と車道の両方を走ることができるため(※注)、自転車を運転する人によって個々の認識の違いや、自動車の運転免許を持っていない人による標識知識のなさが、危険運転を引き起こしている実態があります。
ここでまず、自転車の乗り方の間違ったルールと正しいルールの違いについて、10の事例をもとに確認していきましょう。
なお自転車を手で押して歩く場合は「歩行者」扱いとなります。
ここではあくまで、自転車に「乗車している場合」に限った事例ということを前提とします。
まずはじめに……「二段階右折禁止(原付)」の標識は、自転車にも適応されるでしょうか。
答えはNOです。
標識に「原付」と明記されている場合、対象は原付(50cc以下の第1種原動機付自転車)のみです。
自転車の場合は、すべての交差点において2段階右折が義務付けられています。この点を勘違いしてしまいがちなので気をつけましょう。
次の事例です。
交差点まで自転車で歩道を走ってきました。進行方向の信号機は歩行者の信号に従うべきでしょうか。
これも間違ったルール認識です。なぜなら、自転車は車両扱いだからです。
歩道を走って来ても、歩行者の信号ではなく、自動車の信号機に従います。
なお先ほども記した通り、押して歩く場合には歩行者用信号機に従いましょう。
続いて3つ目のルール事例をみてみます。
交差点を右折するとき、対向車がいたので右折レーンで待ってから右折してもよいのでしょうか。
これも正しくありません。自転車の走行は、道路の左端と義務付けられています。
2車線の場合は左側の道路の左端になります。
したがって、自転車は右折レーンに侵入することはできません。
交差点を右折したい時は交差点のなかを走るのではなく、常に2段階右折をします。
※ ※ ※
※注:車道と歩道の区分がある場合、自転車の通行は「車道の左を通行する」が基本的ルールですが、次の例外においては歩道を通行できることがあります。
・歩道に「自転車通行可」の標識等がある場合/運転者が13歳未満の児童・幼児もしくは70歳以上の高齢者、または身体の不自由な人の場合/道路工事や連続した駐車車両、著しく自動車の交通量が多くしかも車道の幅が狭いなど、安全確保のためやむを得ない場合
なお歩道を走行する場合は歩行者を優先し、車道寄りを徐行で走行しましょう。
■「一時停止」の標識は自転車も守るべき!?
4番目の自転車ルール事例をみてみましょう。
自転車で車道を走って交差点まで来ました。前の信号が赤のとき、車の停止線手前でとまるべきでしょうか。
これは正しいルールの認識といえます。
自転車で車道を走行中、交差点に来た時によく遭遇する光景です。
進行方向の信号が赤の状態で、停車中の車の左側をすり抜けて、停止線を超え、交差点の先にまで走っていく自転車を多く見かけますが、違反行為になります。
自転車も車両と同じく、停止線手前でとまらなければなりません。
5つ目の事例をみてみましょう。
自転車通学の高校生が、車道の左端を友達と並走して通っても良いのでしょうか。
これは正しくありません。自転車での並走はNGです。
海外では、自転車は2台まで並走することが許可されている国もありますが、日本では原則、並走することはできません。
公道上を走る自転車で複数台走る場合には、前後1列で並んで走らなければなりません。
続いてのルールです。自転車は、踏切での一旦停止は不要?
答えは間違い。自転車でも、踏切での一旦停止は必要です。
車両扱いの自転車は踏切手前で一旦停止し、周囲の安全を確認してから通行しなければなりません。
7つ目の事例です。いわゆる「ママチャリ」の場合、前後に幼児を乗せて大丈夫でしょうか。
これは、条件付きでOKといえます。
決められた基準を満たした自転車(幼児2人同乗適合自転車)であれば大丈夫です。
また同乗する幼児の体重制限(前は体重15kg以下、後ろは体重22kg以下)が定められているので、制限を満たしていることも必要です。
8番目の事例です。高速道路は、お金を払えば自転車も走れるのでしょうか。
答えはNOです。
高速道路の正式名称は「高速自動車国道」です。自動車専用道路ですので、自転車は走れません。
ただし、有料道路と呼ばれる「ドライブウェイ」「橋」などの中には、自転車の走行を許可しているところもあります。
9つ目のケースです。「一時停止」標識のある道路で、自転車も一時停止は必要でしょうか。
答えは、自転車も一時停止は必要なので、正しいルールといえます。
自転車も道路交通法により定められた標識を守らなければなりません。
したがって「一時停止」の標識のある道路では、必ず一旦停止し、周囲の安全を確認してから走行しなければなりません。
■自転車を運転する際に覚えておきたい「道路標識」とは
最後の質問です。
自転車で歩道を走行時、前に人が歩いていたのでベルを鳴らして道をあけてもらいました。大丈夫でしょうか。
答えはNOです。
自転車も、カーブや見通しの悪い道路、細い路地などで「警報鳴らせ」の標識がある場合にのみ、ベルが使えます。
ただし、危険を知らせるときはこの限りではありません。
なお歩行者優先の歩道で、道をあけてもらうためにベルを鳴らすのは違反です。
この場合の正しい乗り方のルールは、自転車から降りて自転車を押しながら歩く、もしくは「すみません」のひと声をかけて、通してもらう方法です。
ここまで、自転車の正しい乗り方と誤った認識の違いについて、改めて確認してきました。
重要なのは、道路標識を確認する習慣です。
自転車であっても、クルマと同じように守らなければならない道路標識としてまず覚えておきたいのは、次の8つです。
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1.進入禁止
2.一方通行
3.車両通行止め
4.自転車通行止め
5.徐行
6.一時停止
7.自転車及び歩行者専用
8.自転車横断帯
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ただし「自転車は除く」と補助標識がついている場合には、自転車に限り標識の制限はなくなります。
こちらもあわせて確認するようにしましょう。
●もし自転車で「違反」してしまったら……どうなる!?
自転車に乗っているとき、警察官に呼び止められて、道路交通法に違反したことが確定した場合は、罰金・罰則があります。
違反基準項目は「自転車でのあおり運転」「危険行為になりうる、不必要な急ブレーキ」を含む15項目の危険行為で、いずれかに該当するかで判断されます。
14歳以上で3年間の間に2回「違反」した場合、罰則として「自転車運転講習」の受講が義務付けられます。この受講義務命令に従わない場合は、5万円以下の罰金となります。
※ ※ ※
自転車で颯爽と走るのは、風を感じことができて気持ち良いものです。
自転車の魅力を楽しむためにも、まず安全を重視し「音楽を聴きながら」「スマホを見ながら」の「ながら運転」はせず、運転に集中しましょう。
そしてルールを守り、スマートな自転車の運転を心がけていくことが大切です。