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「パドルシフト」ってホントに必要? ATなのにわざわざ変速したくない!「幽霊装備」と化した理由とは

くるまのニュース 2022年10月17日 9時10分

シフトチェンジが必要のないCVTやATなどでもMT感覚が味わえる「パドルシフト」。しかし実際は、ほとんど使われていないのが現状のようです。

■2ペダルなのに、わざわざギア操作する意味ある?

 AT車全盛の現在、「パドルシフト」は軽自動車にも採用されるなど、クルマの装備としてすっかり定着しました。

 パドルシフトはシフトチェンジが必要のないCVTやATなどでもMT感覚を楽しむことができるものですが、実際はほとんど使われていない“幽霊装備”になっているようです。

 一般的にはアクセルとブレーキのみの2ペダル車に搭載される「MTモード」を操作するためにパドルシフトが使われます。ステアリングの後方に装備された専用のセレクタースイッチは、船を漕ぐパドルのような形状からこの名前が付けられました。

 その歴史は意外に古く、1980年代後半あたりにF1の「(スクーデリア)フェラーリ」が開発したセミAT用のギアチェンジ用装置として誕生したのが最初とされており、主にスポーツ走行時にステアリングから手を離す必要がない状態でシフトチェンジできるのがメリットです。

 このパドルシフトが組み合わせられるトランスミッション(変速機)には、通常のトルクコンバーター式のAT、無段階変速のCVT、2つのクラッチを搭載し自動制御してくれるDCTなどがあります。

 なかでももっとも普及しているのがATとCVTとの組み合わせで、プログラムによって擬似的なギア変速が可能ですが、その一方でいつ使うのかの判断が難しいところ。

 本当に加速が必要なときは、強めにアクセルペダルを踏むと自動でギアが下がる「キックダウン」をATがしてくれますし、車速を落とすにはブレーキで調整できてしまいます。

 せっかく付いているパドルシフトですが、使う機会がない装置のひとつとまでいわれてしまっているようです。

 ちなみにDCTは「デュアル・クラッチ・トランスミッション」の略で、奇数のギア用と偶数のギア用に2つの自動制御式クラッチを搭載。

 国産車では日産「GT-R」やホンダ「NSX」などのスーパースポーツのほか、ホンダ「フィット」の3代目にも採用されました。

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 では、実際のユーザーはどれくらいの頻度でパドルシフトを使用しているのでしょうか。

「最初は興味半分で何度か使ってみましたが、想像していたよりエンジンブレーキなどがかからず、気が付いたら使わなくなっていました」(東京都・Nさん 30代男性)や、「エンジン回転数ばかり上がって燃費が悪化した気がするので、使うのをやめちゃいました」(神奈川県・Yさん 40代男性)といった意見が。

 また「そもそもMTモードにするメリットがよくわからなくて、ATしか運転していないし普通に動いてくれればいいです」(埼玉県・Kさん 20代女性)のように、MTモード自体の使い方に興味がない人もいるようです。

 なかでも多かったのが「そもそもシフト操作をしないで済むATなのに、わざわざギアを選ぶのが面倒」(栃木県・Tさん 40代男性)といった、ギア選択が面倒くさいという意見。

 とくに、ミニバンや軽ハイトワゴンのユーザーは、パドルシフトはほとんど使わないという人がほとんどでした。

 一方で、スポーツ走行や微妙なエンジンブレーキなどが欲しい場合は積極的に使う方もいらっしゃいましたが、むしろ肯定的な意見は少数派だったのが印象的でした。

■パドルシフトの上手な使い方

 せっかくのATやCVTの便利さ(走り出せばシフトチェンジの必要がない)がありながら、パドルシフトでMT感覚を味わえるようにしているのは、「運転する楽しさ」を体験できる方法のひとつという側面があるからでしょう。

 では、パドルシフトはどのような場面で活用すべきなのでしょうか。

 アマチュアレースに参戦した経験を持つ都内中古車販売店のD氏は、山道や峠道はもちろん、首都高でも大いに活用すべきだと話します。

山道などでパドルシフトを使うとスポーティに運転できる

「ATベースでもパドルシフトとMTモードを上手に活用すると、山道などのアップダウンが激しくカーブの多い道ではよりスポーティにキビキビとした走りが楽しめます。

 たとえば漫然とアクセルを踏んでキックダウンで上り坂を登るのではなく、パドルシフトでギアを落とすことでよりスムーズに力強い駆動力を得られますし、下り坂でもエンジンブレーキを活用しながら安全かつスポーティに走行できます」

 実は東京の首都高速道路もかなり曲がりくねっており、かつアップダウンも激しく、任意にギアを選んで適度にエンジンブレーキを活用すると、安定して走らせることができるのだそうです。

「また、これから冬にかけては路面の凍結などの心配もあり、たとえば下り坂のコーナーでは不用意なブレーキングはスリップを誘発します。

 そこでパドルシフトを使ってギアを落として走行することで適度なエンジンブレーキとトラクションをかけることができますので、むしろ積極的に使っていただいたほうが良いと思います」(アマチュアレース参戦経歴のあるD氏)

 ただしMT感覚で楽しく走れる代わりに、パドルシフトを使った走行はエンジン回転数が高めになる傾向が強まって燃費が悪化することもあり、必要なシーンで適切に使うのが良いでしょう。

 もうひとつ、中古車のパドルシフト操作に関しては注意が必要だといいます。とくにDCT搭載車に関しては、発進時や後進時にちょっとしたコツがあるのだそうです。

「DCTに関しては、半クラッチ状態をコンピュータが自動制御している関係で、発進時にごく僅かなタイムラグが発生します。これを待たずにいきなりアクセルを強く踏み込む操作を繰り返していると、故障する可能性もあります。

 この特有のクセを知らずに、国産車で主流のAT車の感覚で乗ってしまうオーナーさんが多いようです。

 DCTの場合、シフトパドルを操作するのもタイムラグ後に動き出してからの操作をするよう心がければ故障のリスクも減らせます」

 スズキが開発し「アルト」などに搭載している「AGS(オートギアシフト)」も似たような性質を持っているので、急発進はご注意ください。

※ ※ ※

 パドルシフトを活用してMTモードを上手に使いこなせば、ミニバンでもいつもよりメリハリのある運転が楽しめそうです。

 とくに下り坂ではパドルシフトを使ってエンジンブレーキを活用することでフットブレーキの使用回数を少し減らすこともでき、より安全に走行できるでしょう。

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