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高額商品のクルマ「ネットで購入」は不向き? 値引き交渉も可能!? 加速する「オンライン販売」の現状とは

くるまのニュース 2022年10月29日 16時10分

新車のオンライン販売は当然の流れと思われましたが、なかなか普及しなかった日本。ですが、新型コロナウィルスの流行により対面しない商談は注目を集め、国産メーカーもいよいよ参入することになりました。オンライン販売の現状は、一体どうなっているのでしょうか。

■クルマの「オンライン販売」各メーカーの現状は?

 これまで新車の購入はディーラーまで足を運び、展示車を見て試乗して、気に入ったら商談して契約に至るというのが一般的な流れでした。しかし、近年はPCやスマホで購入する「オンライン販売」に注目が集まっています。

 日本国内における新車購入のオンライン化は、2010年にテスラ「ロードスター」が先鞭をつけました。それから12年の歳月が経ちましたが、現在はどのような状況になっているのでしょうか。

 そもそもクルマは、通信販売に向いている商品とはいえません。というのも、直接見ることなく買うには高額すぎるからで、実際にオンラインで新車を購入した経験者からも「高い買い物なのでやはり不安だった」という声が多数上がっています。

 また、車両の登録に必要な書類のやりとりがあったり、納車後もメンテナンスや車検、トラブル時の対応などがあったりするため、「買ったら終わり!」とならないのも通信販売向きではない理由のひとつです。

 高いハードルがあるにもかかわらず、テスラがオンライン販売を主軸に選んだのは、新興メーカーゆえ販売拠点をゼロから作り上げなければならなかったからに他なりません。

 ディーラー数が少ないといわれるレクサスですら日本国内に約170店舗もあるのですから、ライバルに負けない販売網を新たに展開するには莫大な資金と労力を必要とし、それには大きなリスクが伴います。

 テスラの選択は日本では新しい自動車ビジネスのスタイルでしたが、電気自動車であることや、鳴り物入りの新興ベンチャーだったことと同様にテスラを宣伝する良い材料になりました。

 苦肉の策ともいえそうなオンライン販売はテスラ購入者だけに許された「特別な行為」として日本でも受け入れられ、注文完了時に画面に表示されるハリネズミの画像のスクリーショットをSNSに投稿することが、今ではちょっとしたムーブメントになっています。

 テスラは2014年の「モデルS」、2019年の「モデルX」の導入にあわせオンライン販売を強化し、順調に販売台数を伸ばしてきました。

 しかしながらライバル各社はなかなかオンライン販売に参入せず、2015年にBMWがアマゾンで「i3」を販売したのが話題になった程度。

 このアマゾンでの販売は支払い方法に制約があるなど限定的なオンライン販売でしたが、BMWは自社ECサイト「BMWオンライン・ストア」を開設し2020年7月より全車種のネット販売を開始しています。

 一方、国産メーカーが本腰を入れたのは意外なほど最近で、2021年になってからのこと。新型コロナ禍で対面販売を避けたいというニーズの高まりが、重い腰を上げさせたといったところでしょう。

 国産メーカーとして初となる国内でのオンライン販売を開始したのはホンダで、新車オンラインストア「Honda ON」が同年4月に発表され、10月にサービスを開始。

 ですが、当初の計画とは裏腹に、蓋を開ければサブスクリプション型のオンラインストアという、トヨタが2019年から開始している「KINTO(キント)」、日産が2020年に始めた「ClickMobi(クリックモビ)」とあまり差のないサービスでした。

「オンライン販売事業」のための新会社「ホンダセールスオペレーションジャパン」まで設立したのにもかかわらず、なぜサブスク型となったのかというと、購入から納車までオンラインで完結してしまうと、販売店の必要性がなくなってしまうからです。

 サブスク型なら納車後の点検や整備、車検などで販売店の利用を指定でき、その費用をサブスク代金に含めることができます。

 日本はメーカーとは別の販売会社がディーラーを運営しています。メーカーはその販売会社の利益や雇用をないがしろにするわけにはいかないため、なかなか売り切り型のオンライン販売に踏み切れないのです。

■オンラインでも値引き交渉できる?

 ホンダがサブスク型のオンラインサービスを展開する一方で、日産は「アリア」限定ではあるものの、2021年11月に購入検討から注文、クレジット決済までオンライン上ですべて完結できる「オンラインオーダー」を開始。

 本当の意味での国産車メーカー初となる国内でのオンライン販売が始まりました。

オンラインで買える日産「アリア」

 オンライン販売でユーザーが懸念するのは、手続きを進めていく途中で不安になってしまうこと。

 日産のオンラインオーダーはそうした不安を取り除くために途中から実店舗での商談に切り替えることができたり、逆に対面での商談から契約だけオンラインに切り替えたりもできるなど、フレキシブルな対応が可能になっています。

 また、従来の新車購入では付き物だった「値引き」については、ビデオ商談やチャット相談にて交渉できるのだとか。

 もっともバックオーダーを抱えるほど人気で一部注文ストップがかかっているアリアは、実店舗での購入でも「値引きゼロでした」という声がほとんどなようです。

 国産車メーカーがさまざまなしがらみで足踏みしているうちに、攻勢を仕掛けてきたのがボルボとヒョンデです。

 ボルボはかねてよりバッテリー式電気自動車(BEV)の世界販売をすべてオンライン化する方針を公表しており、日本でも2021年11月にBEVの「C40リチャージ」を発表。最初の100台のみサブスク契約で、それ以降は売り切り型のオンライン販売となっています。

 2022年5月には「XC40リチャージ」を発表し、7月よりオンライン販売を開始。秋よりデリバリーが始まる予定です。

 ちなみに、「XC60リチャージ」と「XC90リチャージ」はともに「リチャージ」の名称が与えられていますが、これらはハイブリッドモデルのためオンライン販売の対象外となっています。

 ヒョンデはかつて「ヒュンダイ」という呼称で日本市場に参入していましたが販売不振から2009年に撤退。

 2022年に燃料電池車や電気自動車に特化して再参入することになったのですが、テスラ同様に販売網を築かずにオンライン販売のみとしたのが特徴です。

 5月から「アイオニック5」および「ネッソ」の販売が始まっています。

※ ※ ※

 全車種対応のBMWを除くと、売り切り型はすべて電気自動車ということに気が付きます。

 これは電気自動車の購買層はデジタルリテラシーが高い傾向にあるため、オンライン販売と親和性があることが理由とされています。

 なお、オンライン販売先進国である中国のSNSでは、「電気自動車なら(ガソリン車より)部品点数が少ないからそのぶん壊れる可能性が低く、オンラインで買っても安心」という意見が多いようです。

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