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なぜスバル車は「青」がイメージされる? 始まりは「空」だった!? 青を纏う理由とは

くるまのニュース 2022年10月28日 13時10分

自動車メーカーやパーツメーカー、それ以外の会社でもコーポレートカラーを決めているところは少なくありません。そのなかでもスバルといえば「青」のイメージが強く、同社のクルマがなぜ青をメインに纏うようになったのか探ってみました。

■始まりは「空」に想いを込めていた

 スバルといえば、コーポレートカラーやエンブレム、ボディカラーなど「青」をイメージさせるものが多いでしょう。

 この青のイメージはどこから来たのかと聞かれれば、大概の人は「ラリー」を思い浮かべるのではないでしょうか。

 確かに、WRC世界ラリー選手権で戦っていた「インプレッサ」の印象が強烈に残っていることでしょう。それも正解ですが、実はもう少し深いところに起源はありました。

 スバルの青を語る前に、少しだけ会社の成り立ちを振り返ります。スバルの前身は中島飛行機という航空機メーカーでした。戦後解体され12に分社化。そのうちの5社が共同で設立してのちに合併したのが旧・富士重工業、現在の株式会社SUBARUです。

 また、スバルはプレアデス星団の日本名「昴」に由来していて、六連星(むつらぼし)とも呼ばれています。古事記や日本書紀、枕草子にも記述があるほど古くからある言葉です。

 富士重工業が自動車産業に参入して、1954年の試作コードネーム「P-1」と呼ばれる「スバル1500」に初めてスバルの名前が登場します。

 そしてこれには、中島飛行機系5社を合併し富士重工業となった6社を「統(す)べる」=統合するという意思が込められており、その後「スバル360」が人気となったことで六連星マークをコーポレートアイディンティティとして使い始めました。

 なお、六連星マークは当初こそ星座配列に近い形になっていましたが、その後デザイン的なバランスにより何度か配列を変え、現在は大きなひとつの星と、その向かって右下方に小さな5つの星が配されています。

 この六連星が青い夜空で輝いているのをイメージして、1971年の初代「レオーネ」に、青地に六連星が輝くエンブレムをフロントグリルに装着。そこからスバルの青が始まったのではといわれています。

■本格的な青の始まりは、やはりWRCへの参戦から

 スバルがラリーに参戦している歴史を振り返るのに、非常に役立つ資料が、東京都三鷹市にあるSTIギャラリーの蔵書にあります。

 2008年に三栄書房(現・三栄)から発売された『ラリーカーイラストレーション stage01 SUBARU』というラリーカーをイラストレーションで紹介する本で、資料が残っている過去からWRCを撤退するまでのラリーカーをイラストでわかりやすく紹介しています。

青地にイエローの555が描かれたラリーカー(インプレッサ/レガシィ)

 その本の最初に出てくるのが1973年の「サザンクロスラリー」(オーストラリア)に参戦した「レオーネGSR」です。ドライバーとコ・ドライバーは高岡祥郎/久世隆一郎となっており、のちにスバルテクニカインターナショナル(STI)の初代社長となる久世氏自らが参戦していました。

 この車両は青いボディカラーを纏っていますが、「おそらく量産車のカラーでたまたま青だったのかも」と関係者はいいます。

 また、その後レオーネで1987年までラリーに参戦を続けていたことがイラストに描かれています。

 そして1990年から、スバルは「レガシィRS」でWRCへ参戦します。車体色は、最初は白ベースにチェリーレッドやブルー、グリーンが差し色に使われたチームスバルのカラーが施されていました。

 その後イギリスのレーシングチームであるプロドライブとの提携に基づき、1993年にブルーの車体へイエローの「555」を大きく描いたレガシィRSが登場します。

 この555はブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)が販売している、「ステートエクスプレス555」というタバコブランドで、そのパッケージには青地に金色の555が輝くロゴが描かれます。アジア圏で広く流通していますが、日本には輸入されていません。

 スバルは日本の自動車メーカーであり、アジアでのタバコ販売をするBATはこの555をメインに据えチームをスポンサードしました。ちなみにBATにはケント、ラッキーストライク、ロスマンズなど、モータースポーツに深く関わったブランドがあります。

 そのような背景でボディはタバコのパッケージと同じく青くなり、金色のロゴは再現しにくいため目立つイエローで描かれました。

 このときのスポンサーカラーである555のブルーは、スバルの量産車に使用されていたものではなく、プロドライブで車両が製作されていたこともあり、詳細なカラーはわかりません。

 とはいえ、もしかすると手がかりかもしれないものは残されていました。それは1993年にレガシィRSからチェンジとなった、次の「インプレッサ」に見られるものです。

 マシンチェンジをしたあとも、ブルーにイエローの555は継続され、チームスバルはWRCのチャンピオンになるなど輝かしい成績を残していきました。その1997年の「インプレッサWRC97」を見ると、リアウイングの側面にスポンサーがずらりと並び、そこに「STANDOX(スタンドックス)」という名前があります。

 STANDOXは1955年にドイツで誕生した自動車用塗料のブランドで、2022年現在はアクサルタ社(アメリカ)の展開するブランドのひとつです。関係者によると「ひょっとしたらSTANDOXがずっと調合していたカラーなのでは」とのことです。

 正式なカラー名は不明ですが、このブルーにイエローのカラーが印象に残り、「スバルといえばブルー」の基礎になったと思われます。

 この頃のインプレッサなどの量産車には、「スポーツブルー」や「ソニックブルー・マイカ」が施され、ラリーカーとの関連を連想させるイメージ付けがおこなわれていました。

 その後、2代目インプレッサの「GDB型」になると、WRCで戦ってきたこのブルーを「WRブルー」という名称にして、WRC参戦車両はもちろん、量産車にも用い、モータースポーツと量産車の一体感を産むようになっていきます。インプレッサやレガシィ、特別限定車など多くの車両にWRブルーが施されたこともありました。

■現在のWRブルーは2代目

 株式会社SUBARU 商品企画本部 デザイン部 雲野裕紀さんにWRブルーについて聞いてみました。

「スバルの前身は中島飛行機ですので、やはり空にかける想い、星空に想う気持ちが大きいと思います。

 そしてスバルのなかにもさまざまなブルーがあり、各車両のコンセプトに合わせ『洗練・上質のブルー』『ワクワクのブルー』『スポーツブルー』と大きく3つ分け、ボディカラーを開発しています。

 スポーツブルーはモータースポーツに直結しています。WRCに参戦しているラリー車と量産車が同じWRブルーを纏っていたことも大きいと思います」

 空や星空の青が背景にあり、さらにモータースポーツのイメージが強いのではないかといいます。

WRブルーパールを纏ったスバル「WRX S4」

 2000年に登場した2代目インプレッサからWRブルーは正式にカラーバリエーションへ加わり、その後14年間、人気を維持して、インプレッサをはじめとするスバルのスポーツカーを牽引するカラーとなりました。

 しかし、どんなに人気があり普遍的であったとしても、変化をしていく必要はあります。

 そこには時代背景やユーザーの年齢層、塗料の進化、車両とのマッチング、他メーカーとの差別化など、理由はさまざまにあります。

 特にハイブリッド車やEVなどエコカーについては、「電気」「クリーン」といったイメージを持たせることからか、各社でブルー系のボディカラーやアクセントカラーを採用することが多くなりました。長年WRブルーでイメージを作り上げてきたスバルとしても、ブルーで埋没するわけにはいきません。

 そこでWRブルーは、より進化したひと目でスバルのWRブルーと分かるものへとリニューアルされました。それが2014年に登場した「WRX STI」(VAB型)に採用された、「WRブルー・パール」です

 より深みのあるブルーとなり、上述のWRX STIのほか、「BRZ」にもラインナップされました。特にBRZは、スーパーGTに参戦している「BRZ GT300」にも同じカラーが使われており、昔のWRCの時代と同じようにモータースポーツと直結するイメージを作り上げています。

 そして次なるWRブルーの研究も進められているといいます。それは2020年に「東京オートサロン」で展示された「WRX S4」やBRZに見られた「ギャラクティックWRブルーメタリック」です。

 量産車にはまだ採用されていませんが、現在スーパーGTに参戦している新型BRZ GT300にはこのギャラクティックWRブルーが塗布されており、深みのあるブルーのなかに輝きのあるカラーとなっています。

 なおギャラクティックWRブルーは、量産車に使用したときの見え方の研究などにも活用されているといい、次なるWRブルーはどのような色になるのか非常に楽しみです。

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