Infoseek 楽天

なぜ「チャイルドシート」の一部製品が生産終了!? 親が知るべき安全基準「R44」と「R129」の違いは? 2023年9月以降に規制変更へ

くるまのニュース 2022年10月30日 9時10分

2000年に日本でチャイルドシートの使用が法律で定められてから、20年が経過します。チャイルドシートの安全性も向上し、着用率も向上していますが、それでも誤った使い方をしているケースも多いといいます。正しく着用するには、どのようなことに気を付けたらよいのでしょうか。

■チャイルドシートの国連基準「UNECE R44/04」は2023年8月末で生産終了

 2023年9月1日から日本で販売されるチャイルドシートの安全基準に変化があるようです。
 
 子供の安全を守る重要なチャイルドシートに、どのような変化があるのでしょうか。

 現在、日本で使用が認められているチャイルドシートは国際的に統一された基準(国連欧州基準UN-ECE)を満たした製品となっています。

 基準に適合したチャイルドシートには、通称「Eマーク」と呼ばれるオレンジ色のラベルが貼り付けられています。

 具体的には以下のいずれかを満たしている製品になります。

—-
 1)ECE R44/04(乳児用・幼児用・学童用に分かれて兼用タイプもある。体重を目安に選ぶ)

 2)ECE R129(乳児用i-Sizeでは生後15か月未満または身長76cm超までは後ろ向きがマスト。身長を目安に選ぶ)
—-

 これらの安全基準を満たしていないチャイルドシートは日本での流通(出荷)はできません。

 そして、現在2つある基準は2023年9月1日からR129のみとなり、国土交通省自動車局車両基準・国際課によると「R44については2023年8月末で生産(出荷)終了となり、輸入品の場合も8月末までに現地で生産されたものだけが日本市場への出荷が許されます」とのことでした。

 では、チャイルドシートを使う側にはどんなルールがあるのでしょうか。

 道路交通法第71条の3第3項にてチャイルドシート(=幼児用補助装置)について以下のように規定されています。

「幼児用補助装置は幼児を乗車させる際座席ベルトに代わる機能を果たさせるため座席に固定して用いる補助装置であって、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定に適合し、かつ、幼児の発育の程度に応じた形状を有するものをいう」

 このなかの「道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定に適合」とは要するに保安基準に適合した製品のことなので、ユーザーは「ECE R44またはR129に適合し幼児の体に合った形状のチャイルドシートを使用する」ことになります。

 そのため、2023年9月1日以降であってもR44製品はそのまま使用可能なうえ、新たにR44製品を購入しての使用も問題ありません。

 ただし、R44製品は製造からすでに10数年経過しているものもあり樹脂の劣化などに注意が必要です。

 リサイクルショップやフリマサイトなどで購入する場合はとくに、素性がわからないものが多いためチャイルドシートメーカーが推奨する使用期間(5-10年)を過ぎている場合は使用を控えたほうがよさそうです。

※ ※ ※

 2012年7月1日よりR44に完全移行しており、その際にはそれまで許可されていた国交省基準「自マーク」がついたチャイルドシートの出荷は終了しました。

 それから11年経って2023年9月1日からは、今度はR44が完全終了し、R129の製品のみが製造・出荷を許可されることになります。

 なお、R129製品はすでに日本でも数年前から販売されており、国内ブランドではアップリカが最初にR129を取得。海外製含めてさまざまなR129製品の販売が始まりました。

■R44とR129 何が違う?身長基準で選び、安全性能も強化

 それではR44とR129。安全基準や仕様にはどんな違いがあるのでしょうか。

 まず、安全性に関しては新基準R129を満たしたものが当然、高くなります。しかし、だからといってR44製品が危険というわけではありません。

 チャイルドシート本体の安全性が高くても、取り付けや使用方法が間違っていたり、子どもの体格に合っていなかったりすると、万が一の衝撃を受けた際、子どもを守れない可能性が高くなります。

 以下、順番に解説していきます。

 1)R44は体重、R129は身長を基準に選ぶ

 R44では乳幼児兼用では体重9-10kgまで。乳児専用は体重13kg前後まで後ろ向きでの使用となっていました。幼児用は18kg、学童用は36kgくらいまでを目安とされています。

 これがR129では、身長76cmまでは絶対に後ろ向きで使用。幼児用は身長100cmから~105cmくらいまで。学童用はほとんどの場合、140cmから150cmまで安全に使える仕様となっています。

 また、乳幼児兼用シートには身長105cm前後まで後ろ向き使用できる製品もあり、欧州では衝突安全の観点からできるだけ長い間、後ろ向きで使うことが推奨されています。

 2)生後15か月を超えるまでは必ず後ろ向きで使用

 R129(i-Size)では生後15か月までは必ず後ろ向きで使用します。ただし、15か月を超えても身長が76cmを超えるまでは前向き使用は禁じられています。

 日本人の子どもの場合、生後15か月(1歳3か月)の平均身長は76cmから77cmですが、身長76cmを超えていても生後15か月を過ぎるまでは後ろ向きで使用してください。

 R129の乳児用シートは最低でも身長83cmまでは後ろ向きで使える構造になっています。

 3)ドア側からの側面衝突に対応

 R44ではクルマにのせた状態で前後方向からの衝撃に対する試験をおこなっていましたが、R129ではこれに加えて赤ちゃんの頭や首を保護する観点からドア側からの側面衝突試験が追加されました。R129ではより安全性の高いつくりとなっています。

 4)新生児ダミーに計測センサーを追加

 R129のテストでは各種の計測センサーが付いたダミー人形を使用して衝突試験が行われています。

 より精密に赤ちゃんの体にかかる負荷を想定できるようになったため、産まれてすぐの赤ちゃんにも安心して使用できます。

※ ※ ※

R129(i-Size)では生後15か月まで後ろ向きがマストとなっている

 2012年7月にR44へ完全移行した際、それ以前の基準を満たして7月1日以降は出荷できなくなるチャイルドシートに関しては、大幅な値下げ販売がおこなわれました。

 R44製品を買う場合はISO-FIX固定とシートベルト両方で固定できるチャイルドシートがおすすめです。

 2000年4月に5歳以下の子どもをクルマに乗せる際にチャイルドシートの使用が義務付けられてから22年が経ちました。

 日本はいまだに義務年齢が6歳未満(5歳まで)と先進国最低レベルで、同じ安全基準を採用する欧州のほとんどの国が12歳または身長150cmまでであるのに対して著しく低い年齢です。

 義務年齢を過ぎてもクルマのシートベルトが安全に装着できる身長145cmから150cmになるまでは、ジュニアシートを正しく使用して子供を守りましょう。

この記事の関連ニュース