2022年10月に静岡県で観光バスがブレーキトラブルにより横転する事故が起こりました。このようなトラブルは一般的な乗用車でも考えられます。では、そうした際に活用される「緊急退避所」とはどのようなものなのでしょうか。
■ブレーキが効かないときには「緊急退避所」に突入せよ! その後はどうする?
急な山道の下り坂にはブレーキトラブルが発生して減速できなくなったクルマが大きな事故を起こさないようにするための緊急退避所があります。
緊急退避所はどう使い、飛び込んだ後はどのような対応をとるのが正しいのでしょうか。
2022年10月に静岡県で観光バスが横転する事故が起こりました。
この事故は、富士山5合目からの下り坂でヘアピンカーブと急な坂が続く道路で起き、1人が死亡し、26人が重軽傷を負う大きな事故です。
横転した観光バスの運転手はブレーキが利かなくなった旨の供述をしており、原因は運転ミスなのかクルマの機械的なトラブルなのか、調査の争点となっています。
このように急な下り坂が続く道路では、フットブレーキを使い過ぎたことで制御に必要な摩擦力が弱まり、ブレーキが効かなくなる「フェード現象」が起きることがあります。
古いクルマや商用車などに使われているドラムブレーキの場合、構造上の問題でディスクブレーキより放熱性が悪いため、さらにフェード現象が起きやすくなります。
また、ブレーキトラブルとしては、べーパーロック現象とは、ブレーキ液が急に沸騰して気泡が発生することにより、ブレーキパッドを押さえつける力が伝わらず、突然ブレーキが効かなくなる「べーパーロック現象」も起こり得ます。
万が一、フェード現象やべーパーロック現象が起きてブレーキが効かなくなった場合に、大きな事故を防ぐために利用する場所として「緊急退避所」が挙げられます。
緊急退避所とは、山道の下り坂で見かけるもので、ブレーキトラブルが発生して減速できなくなった際、突入して強引に停止するためのものです。
たいていは道路脇に砂を堆積したスロープ状の上り坂が設置されています。砂と上り勾配の抵抗で減速あるいは停止することができ、大きな事故を防ぎます。
このような緊急退避所について国土交通省の担当者は、以下のように話します。
「緊急退避所は、急な勾配が連続して続くような坂道に設置されています。
急な下り坂などでブレーキが故障してしまった際に、ほかのクルマとの接触事故や、物損事故などのトラブルを防ぐためにも、緊急退避所に飛び込んでください」
■ブレーキトラブル前にするべきコトは? 緊急退避所に突入した後は?
急な坂道や長い坂道を下るときはいつもと違った運転の仕方をしなければいけません。
たとえば、AT車の場合はDレンジのままにしておくのではなく、2レンジあるいはLレンジを使います。
Dレンジにしたまま急な下り坂を走行すると、エンジンブレーキが効かずにクルマが加速するうえに、ブレーキへ負担も大きくなります。
とくに多くの人を乗せたり重い荷物を運んだりしているときは注意が必要です。必ず低いギアを選んでエンジンブレーキを活用することが推奨されまます。
では、もしブレーキが効かず、緊急退避所に飛び込んだら、どうすれば良いのでしょうか。
前出の担当者は、緊急退避所に突入した後の対処方法について、以下のように話します。
「万が一、ブレーキの故障などで緊急退避所に飛び込んだ際、その後の対処は基本的にはドライバーご自身でおこなっていただきます。
被害がクルマの故障のみの場合は、JAFやレッカー車を呼んでクルマを運んでもらう必要があります。
一方で、電柱にぶつかるなどの物損事故や、ほかのクルマに衝突してケガをさせてしまうなどの接触事故を引き起こしてしまった場合は、警察や道路の管理者に連絡をするなど、適切な対処方法を取る必要があります」
※ ※ ※
冒頭の観光バスのように、ブレーキトラブルによる事故の可能性は一般的な乗用車でも考えられます。
そのようなトラブルを防ぐためにも、エンジンブレーキの活用方法や、緊急退避所の使い方などは事前に覚えておくのが望ましいです。