Infoseek 楽天

イメージは低給与&重労働? なぜ「整備士不足」改善されない? 重要ながら軽視される? 業界が抱える人材不足の解決策とは

くるまのニュース 2022年11月8日 7時10分

自動車業界において重要な存在ながら軽視されがちなのが自動車整備士です。昨今では「整備士不足」といわれていますが、実際の整備士はどのような状況なのでしょうか。

■自動車整備士が人手不足?自動車整備士の現状や課題は?

 近年、自動車整備士が不足し問題となりつつあります。クルマを安全に走らせるうえで重要な存在ですが、なぜなり手が減っているのでしょうか。
 
 また今後「整備士不足」を打開する方法はあるのでしょうか。

 自動車整備士といってもさまざまで、自動車メーカーの正規ディーラー、カー用品店、街の整備工場などで働いています。

 整備士は、その名の通りクルマを整備することが主な業務ですが、そのなかには定められて項目の点検・不具合のある部分の修理および交換などがあり、大掛かりなものでは重労働となる作業も挙げられます。

 また自動車整備士になるためには、大きくタイヤ交換などの軽微な作業ができる3級、ほとんどの作業が可能となる2級・さらに深い知識などが求められる1級に分けられた資格が存在します。

 これらの資格は基本的に専門学校など一定の課程を終了したうえで試験を受けるか、一定数の実務をおこなったうえで試験を受けるなどの条件が存在します。

 そうしたなかで、整備士ですが現状はどうなっているのでしょうか。

 国産ディーラーで働くA氏は次のように話しています。

「専門学校卒業から10年以上努めています。世間的に『低収入』『重労働』『少ない休み』というイメージが持たれていますが、実際も大きくは変わりません。

 給与に関しては、さまざまな社内資格や昇級によって徐々に上がっていきますが、大きく稼げるかといえばそうではないです。

 労働環境に関して、入社時よりは大きく改善されたこともあり、昔よりは働きやすくはなっています」

 また、小規模の自動車整備工場で働くB氏は次のように話しています。

「20年以上整備士をやっていますが、作業自体は修理から交換がメインになったことで、昔ほど大変な仕事ではなくなっている印象があります。

 とはいえ、交換だけでは多くの売上も見込めないため、板金や塗装、中古車販売など整備士の仕事以外も求められるため、柔軟性や対応力が求められてきています」

 前述のように一概に整備士といっても働く会社や環境によって求められる業務は異なっているようです。

 また前述A氏は整備士業界の人材について、次のように話してます。

「長年整備士をやっている人のなかには、塗装や板金といった技術に長けていれば専門業者、営業力があれば輸入車ディーラーに転職する人もいます。

 また新人に関しては毎年のように入社しますが、整備士業務に関しては合う合わないによって続くかどうかは変わるので、一概に不人気ではありません」

 では、自動車業界全体において、整備士人口はどのように変化しているのでしょうか。

 日本自動車整備振興会連合会が公表した「自動車特定整備業実態調査結果概要」によると、2014年度には34万2486人いた自動車整備士は徐々に減少し、2022年現在では34万人を切っています。

 日本自動車整備振興会連合会の担当者は、自動車整備士業界の現状について、以下のように話します。

「自動車整備士業界の7割から8割の人が自動車整備士の数が足りないという実感を持っているようです。

 さらに、民間整備工場よりも正規ディーラーのほうが、自動車整備士の人手が足りず、今すぐにでも人材が欲しいと感じているという現状です。

 自動車整備士は、本来であれば専門学校を卒業し、資格を持った人がなるものです。

 しかし、近年では人材不足のため高校を卒業した後に整備士となり、働きながら専門学校に通うというケースもあるほどです。

 また、女性の数が非常に少ないのも現状です。自動車整備士専門学校に通う学生が100人いた場合は、多くの場合、女性の割合は2、3人ほどとなっています」

 さらに、整備士業界の現状における課題について、前出の担当者は以下のように話します。

「整備士になるためには整備士専門学校に通う必要がありますが、その学校に通う生徒の数が激減しています。

 その背景には、クルマに興味を持つ若者が減少していることが大きく影響しています。

 若者のクルマ離れは最近では大きく問題となっており、整備士を目指す人が少なくなっているのが課題なのではないかと思います」

※ ※ ※
 
 若者のクルマ離れと叫ばれて久しいですが、購入層よりも自動車産業に関わる人材での影響が大きいようです。

■自動車整備士業界の現状を打破する対策は?

 では、このような自動車整備士業界の現状を打破するためには、業界全体ではどのような対策が取られているのでしょうか。前出の担当者は、以下のように話します。

「若者にクルマへの興味を持ってもらうため、子ども向けのイベントを実施しています。

 そこで、子どもの集客率を上げるために戦隊モノとのコラボレーションを試みたり、実際に子どもに自動車整備士の体験をおこなってもらったりと、子どもや若者にもっとクルマに興味を持ってもらえるような対策をしています。

 また、専門学校とは縁遠い、普通科のある公立高校に足を運び、その高校に勤めている教員に自動車整備士という職業を広めることもおこなっています。

 普通科の高校に通う生徒の進路のひとつとして、自動車整備士を選んでいただくきっかけになればと思います。

 整備士の人手を増やす対策を実施している一方、人手が少ない現状で生産性を上げるためにも、ほかの整備工場と共同で整備をおこなったり、ディーラーと分担したりと、少ない整備士で効率よく整備が回るように工夫をしています」

整備士の仕事内容は多岐にわたるが…なかには「汚れる」といったイメージで避ける人も

 では、今後の自動車整備士業界はどのように変わっていくと見られるのでしょうか。前出の担当者は以下のように話します。

「現在は、徐々に自動車整備士の人手が減少しているのが実情です。

 ただ、今は技術が進化しており、クルマの整備不良がそもそも少なくなっています。

 また、クルマの整備をコンピューター診断でおこなうことができるケースもあります。

 そのため今後は、いまよりもさらに少ない人手でクルマの整備点検をおこなうことができるようになっていくのではないかと思います。

 また、これまでの自動車整備士は力仕事となっており、女性には体力的にも難しかったため、現在では前述の通り、女性の人手が足りていません。

 しかし、重い部品を減らすなどの省力化や、女性が働きやすい環境を作るなどの取り組みもおこなっているため、今後徐々に女性の整備士の人口も増加していくと感じています」

※ ※ ※

 一方で、自動車整備士の人手不足の原因には、年収が少ないことが理由のひとつとして挙げられていました。

 しかし、現在は自動車整備士の平均年収は上昇傾向にあります。

 実際に、日本自動車整備振興会連合会が2021年に公表している「自動車特定整備業実態調査結果の概要について」では、整備要員年間平均給与は398万7000円となっており、2021年度と比較すると2万4000円増加しています。

 自動車業界における整備士不足問題が、今後解決に向かうのか各所の動きに注目です。

この記事の関連ニュース