東京ハイヤー・タクシー協会は、東京23区および武蔵野市・三鷹市内を運行するタクシーの料金について、2022年11月14日から新運賃を適用しています。実際に23区内を運行するタクシーのドライバーはどう感じているのでしょうか。
■東京23区・三鷹市・武蔵野市のタクシーが運賃を改定
東京ハイヤー・タクシー協会は、東京23区および武蔵野市・三鷹市内(東京都特別区・武三交通圏)を運行するタクシーの運賃を2022年11月14日から改定しました。
実際に23区内を運行するタクシードライバーはどう感じているのでしょうか。ドライバーに直接聞いてみました。
東京ハイヤー・タクシー協会では、今回の改定は平成19年度に実施した運賃改定以来約15年ぶりの改定となりました。
これまでの運賃は、1.052kmまでの初乗りが420円で、以後233mごとに80円、または10km/h以下の走行では1分25秒ごとに80円ずつ料金が上がっていくという運賃体系を取ってきました。
今回の改定は2022年11月14日に出庫する車両から適応となり、初乗りと加算の両方が値上げに。
初乗りの距離は1.096kmまでとなり、メーターが上がるまでの距離は伸びましたが80円高くなり500円に上昇。
同様に、加算運賃もメーターが上がるまでの距離は伸びましたが255mごとで100円と20円高くなっています。さらに、10km/h以下の走行では1分35秒ごとに100円と、時間は伸びましたがやはり10円の値上げとなっています。
今回の改定の理由について東京ハイヤー・タクシー協会は、「人件費や燃料費の高騰、安心、安全、快適なサービス提供のための投資の増加や、乗務員に対する安全に関わる経費の増大」などが理由だと説明します。
この料金改定によりもっとも影響を受けるのは利用客ですが、サービスを提供する側のタクシードライバーたちも改定により営業の状況が変わると考えられます。
■19年ぶりの運賃改定にドライバーはどう思うのか
では、実際にタクシードライバーは今回の改定についてどう感じているのでしょうか。
23区内を営業するドライバーに直接聞いてみました。
23区内の大手タクシー会社に勤務する乗務歴7年の50代男性ドライバーは、以下のようにコメントしています。
「改定率14%で、実際どれだけ目的地まで値上げになるのかわからないので、しばらく経ってからでないと実感がわきません」
利用客の目的地や経由地、また同じルートであっても道路状況によって料金は変動するため、改定後すぐでは実感がわかないようです。さらに前出のドライバーはこう続けます。
「近距離は(利用客にとっても)明確に値上がりがわかるので、利用客が減る可能性がありますね。これらは我々の売上にはそこまで影響はないと思いますが、(利用客の減少については)しばらくは少々心配です」
いわゆる「ワンメーター」の初乗り420円を多用していた利用客は、今回の改定によりお釣りがもらえなくなるので、乗らないという選択肢を取る利用客も増えると予想できます。特に悪天候では、雨風を凌ごうと1km程度先の目的地へとワンメーター分だけ乗車する需要もあるため、そういったケースで見ると今後の営業収入への影響は免れないと予想されます。
また、先出のドライバーは料金改定の影響が意外なところに発生するといいます。
「釣り銭のバランスが変わり、10円玉・50円玉が少なめに。代わりに100円玉・500円玉の需要が増え、釣り銭箱の内容を変えなくてはいけません」
営業するにあたり、クレジットカードや電子決済だけではなく、現金決済の利用客も20%~30%程度いる(前出ドライバー)と話します。
今回の改正では10円単位の料金加算がなくなり、100円単位での料金加算となるため(深夜料金は除く)、10円玉や50円玉を使用する機会が減少。これに対応できなければすぐに100円や500円玉が底をついてしまうので、事前の準備に追われることとなります。
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公共交通機関が比較的充実している東京23区エリアにおいても、急いでいる人や「ドアtoドア」で出発地から目的地まで向かいたいなどの需要から、タクシーを利用する需要は現在でも多いのが現状です。
この運賃改定により、もっとも影響を受けるのは利用客ですが、じつはその影でサービスを提供する側のタクシードライバーにとっての影響も大きく、営業収入に関わってくれば死活問題となります。
この改定により利用客の変化やタクシー会社全般の売上にどう影響してくるかが注目されます。