トヨタは2022年11月17日に「TOYOTA bZ Compact SUV Concept」を米国で初公開しました。電気自動車ラインナップのbZシリーズ第3弾となるモデルですが、どのような存在意義を持っていのでしょうか。
■なぜトヨタはLAで小型SUVの電気自動車を発表したのか
2022年11月17日よりロサンゼルスコンベンションセンターで開催中のLAオートショーには、コンセプトモデルのEVから、市販間近のEV、日本では聞いたこともないEVメーカーの出展が多数おこなわれています。
そんななか、トヨタは新たな電気自動車ラインナップとなるbZシリーズの第3弾「TOYOTA bZ Compact SUV Concept」を米国で初公開しました。
どのような特徴があるモデルなのでしょうか。現地で話を聞いてみました。
筆者(加藤久美子)は2021年もLAオートショーの取材に訪れましたが、やはり各社はEVをメインとした出展となっていました。
カリフォルニアは1970年代から排出ガスに対する規制が厳しく、現在も独自の排出ガス基準を設けており、歴史的背景もあるのでしょう。
またアメリカのなかでもっともEV率が高いエリアとして知られています。
さらに、テスラをはじめ新興EVメーカーとして勢いのあるルーシッド(LUCID)やリヴィアン(LIVIAN)もすべてカリフォルニアで生まれています。
ガソリン価格が全米のなかで群を抜く高額であることでも有名で、州全体が電動化へのシフトが強い勢いで進められている印象です。
このような流れもあってLAオートショーでは多数のEVが毎年出展されており、とくに近年は急速な電動化に向けてメーカー各社、斬新で意欲的なEVを多数出展しています。
LAオートショーにおけるトヨタブースも先日発表されたばかりの新型プリウスをはじめ最新のハイブリッド車やプラグインハイブリッド車がずらりと並びました。
このスペースのメインとなったのが「Toyota bZ Compact SUV」というコンセプトモデルです。
トヨタ グループの副社長兼ゼネラルマネージャーであるDavid・Christ氏はToyota bZ Compact SUVについて、次のように述べています。
「bZ Compact SUVはこれまでのトヨタ モデルでは見られなかった直感的な技術機能と組み合わされた空力設計により、当社のバッテリー電気自動車の非常に近い将来の別の可能なビジョンを示しています」
また、bZ Compact SUVは、「爽快なパフォーマンス」で運転するのが楽しいEVであると紹介され、スタイリングも特徴的です。
bZ Compact SUVのエクステリアデザインはすべてエアロダイナミクスであり、鋭いオーバーハングと滑らかな傾斜のフロントガラスによっても空気抵抗係数(CD値)がかなり低く抑えられていることがわかります。
空気抵抗とアグレッシブなスタイルのために4つのタイヤは可能な限りコーナーに配置されています。
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そんなbZ Compact SUVのデザインを統括した担当者が会場にいたため、話を聞いてみました。
担当されるのは、トヨタ自動車クルマ開発センタービジョンデザイン部ZEVデザイン2グループ長・松本宏一氏です。
―― Toyota bZ Compact SUVはどのような位置づけのクルマでしょうか。
トヨタのbZシリーズは電気自動車のシリーズです。
bZ4Xが市販第一弾となります。『シリーズ』と名乗る以上は、やはりトヨタとしては大きなものから小さなものまでラインナップを充実させていきたいという考えがあります。
こちらは先に市販されたbZ4Xよりひと回り小さいモデルとなるため「コンパクトSUV」」という名前を付けました。
そのなかでのひとつとして、今回、コンパクトなSUVの出展を考えました。
電気自動車をより多くの人々に身近に感じてもらい、乗っていただくことができればと思っています。
―― Toyota bZ Compact SUVは2021年12月にメガウェブで発表されたトヨタ自動車の「BEV戦略説明会」で披露された16台のBEVの中にもありましたね。
そうですね。
あのときにお披露目させていただいたコンセプトモデルを市販前提として各所をブラッシュアップしたものが今回、LAオートショーに出展されています。
なお、市販については計画をしている最中なのでまだいろいろと検討中です。
■bZ Compact SUVがデザインで大事にしたことは? 担当者に直撃インタビュー
トヨタのbZシリーズとして登場するbZ Compact SUVですが、どのような部分にこだわっているのでしょうか。前出の松本宏一氏は次のように話しています。
―― デザインのポイントはどんなところでしょうか。
電気自動車に関して、日本のユーザーさんが一番気にされるのは「電費」、つまり一充電あたりの航続距離だと思います。
「電池が切れたらどうなるのか?」など、まだまだ充電インフラが整っていない日本ではそれが一番の心配事になるのかなと。
電気自動車に対するネガティブな印象もそこにあると考えています。
航続距離にはエクステリアデザイン、全体のシルエットも大きく影響してきます。
電費をよくするためには空気抵抗の低いデザインがマストとなってきますので、そこを重点的に配慮しました。
―― CD値もかなり低いとようですね。どれくらいでしょうか。
はい。数値は公表されていませんが0.2の前半位ですね。それくらいを狙っていかないとなかなか距離が稼げないのです。
―― 電費向上のためにそこまで考慮してデザインがされているのですね。
ガソリン車でも燃費を気にされる人はもちろん多いのですが、ガソリンは減ってきたら身近にあるガソリンスタンドで給油すればいいわけです。ですが、電気自動車だと簡単に充電することはできません。
とくにクルマで出かけた先でバッテリー切れになってしまっては大変ですし、チャージ自体にも時間がかかります。
少しでも電費をよくすることでネガティブなイメージを減らしていきたいのです。
ロサンゼルスやサンフランシスコのように、充電器がいたるところにあって完璧に都市全体が電気にシフトしている地域なら問題ないのでしょうけども。
「ガソリン車とそん色ない距離が走れますよ」という安心感をユーザーに伝えたいですね。
――スタイリングでとくに時間をかけた部分もやはり空気抵抗に関わる部分でしょうか。
これはかなり個人的な意見ですが、クルマのスタイリングというのは、機能をしっかりと形で表現してあげる必要があると思っています。
電気自動車の場合は空気抵抗の値が低いことが重要な機能のひとつです。
機能をカタチにしていくことが私たちデザイナーの仕事だと考えています。
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bZ Compact SUVのアグレッシブなスタイルはブースを訪れた多くのメディアからも注目を集めていました。
「停まっていても躍動感を感じる素晴らしいデザイン」、「トヨタらしい緻密さと大胆さがわかる完成度の高いスタイリング。すぐにでも市販されそうだ」などの感想を聞くことができました。
bZ Compact SUVのさらなる情報は、2023年以降に発表予定です。