クルマ関連にはさまざまな税金がかかっていますが、実際にはどのような分野に使用されているのでしょうか。
■自動車関連諸税の多くは、医療や福祉などの社会保障へ
国民の三大義務のひとつとして、日本国憲法にも規定されているのが「納税」です。
数ある税金のなかでもクルマに関連する税金は多く、ユーザーから不満の声が上がることもめずらしくありません。
では、自動車ユーザーが支払った各種税金は、いったいどのように利用されているのでしょうか。
日本国憲法において、「勤労」と「教育」にならんで国民の「3大義務」とされているのが「納税」です。
消費税や所得税などがもっとも身近な税金のひとつですが、自動車ユーザーはそれらに加えて、いわゆる自動車税や軽自動車税、自動車重量税、さらには「ガソリン税」と総称される揮発費税や地方揮発油税などを負担することになります。
まず、いわゆる自動車税と軽自動車税についてみてみましょう。
毎年4月1日の時点で、車検証上の所有者に対して発生するという意味では同じ性格を持つ自動車税と軽自動車税ですが、自動車税は都道府県税、軽自動車税は市町村税であるため、収められる地方自治体が異なるという特徴があります。
ただし、どちらも使用用途が限定されない一般財源であるため、各地方自治体の公共サービスや福祉、地方公務員や地方議員の給与など、自治体運営に必要なあらゆるものへと使用されることになります。
各地方自治体の歳入における自動車税の比率は非常に高く、例えば、愛知県の2022年度県税歳入予算額における自動車税比率は10%と、法人事業税(30.8%)と個人県民税(25.8%)に次ぐ割合となっています。
愛知県では、2022年度全体で、自動車税によって1151億2400万円の税収を見込んでいますが、2兆8000億円を超える県全体の歳出予算から見ると、わずか4%に過ぎません。
歳出予算を目的別に見ると、「福祉医療費」(22.6%)と「教育・スポーツ費」(17.8%)」が占める割合が大きく、ユーザーによって収められた自動車税の主要な使用目的となっていることがわかります。
次に、新車購入時および車検時に納める自動車重量税についてみてみましょう。
自動車の重量に応じて税額が決定されることが原則となっている自動車重量税は、国税として国庫に納められることになります。
高度経済成長時代の1971年にはじまった自動車重量税は、高速道路をはじめとする道路環境の整備を主要な目的として創設された税であり、その使用目的は道路整備などに限定されていたことから、「道路特定財源」と呼ばれていました。
道路が整備されることによる恩恵を最も受けるのは自動車ユーザーであることから、受益者負担の性格が強い税として知られていた自動車重量税ですが、2009年度からは自動車重量税を含むすべての「道路特定財源」が一般財源化され、必ずしも道路の整備などの自動車関連への使用ではなくなりました。
2022年度補正後の一般会計歳出総額を見ると、最も大きな比率を占めているのは「社会保障費」(32.9%)となっています。
「社会保障費」は、年金給付費や医療給付費が大部分を占めていることから、納めた自動車重量税のうちの大部分はこうしたものへと使用されていると考えられそうです。
■SNSなどでは「二重課税だ!」といわれるガソリン関連税の内訳とは
レギュラーガソリンなどにかかる税金には、「ガソリン税(本則:揮発油税+地方揮発油税)」、「ガソリン税(暫定)」、「石油石炭税」、「温暖化対策税」、「消費税」が挙げられます。
ガソリン税(本則)が28.7円、ガソリン税(暫定)が25.1円、石油石炭税が2.04円、温暖化対策税が0.76円です。
なお消費税の計算方法は、「消費税(ガソリン)=(本体価格+ガソリン税(本則)+ガソリン税(暫定)+石油石炭税+温暖化対策税)×10%」となります。
なお暫定税率は、道路整備の財源不足を補うため1974年に期間限定で設けられたものです。
その後、2010年3月に一度は廃止されましたが、さまざまな理由により現在も継続され同額の税金がかかっています。
一方の軽油は、レギュラーガソリンと税金のかかり方が違います。
軽油では、「軽油引取税(本則)15.0円」、「軽油引取税(暫定)17.1円」、「石油石炭税が2.04円」、「温暖化対策税が0.76円」がかかります。
しかし、消費税は「本体価格」と「石油石炭税」、「温暖化対策税」にしかかからず、計算方法は「消費税(軽油)=(本体価格+石油石炭税+温暖化対策税)×10%」となります。
これらのガソリンに関わる税金について、とある石油元売り会社の関係者は次のように説明します。
「ガソリン税(揮発油税)は、石油元売り会社に納税義務があることからガソリンを製造する際のコストとして原価に組み込まれるため、ガソリン税を含む商品に対して消費税が課されます。
一方、軽油税(軽油引取税)は消費者に納税の義務があります。
そのため、軽油が販売された時点で課されることから仕組みが異なっています」
このように同じガソリンでも、油種によって税金のかかり方は異なります。
そして、このガソリン税は、国税である揮発費税と地方税である地方揮発油税の総称であるため、それぞれの納入先が異なります。
ただし、いずれも国および各地方自治体の一般財源として利用されます。
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このように、自動車関連諸税は、必ずしも自動車ユーザーのためだけに使用されるわけではありません。
にもかかわらず、クルマに関するさまざまなシーンで税金を納める必要があることに対して、自動車ユーザーから不満の声が上がることもめずらしくありません。
ただ、上で述べたように、国や地方自治体の歳出の大部分を占めているのは、医療をはじめとする社会保障費であり、高齢化が進む日本では社会保障費は増加の一途をたどっているのが現状です。
自動車ユーザーも、さまざまな社会保障の恩恵を受けている国民のひとりであることには変わりません。
冷静かつ建設的な議論をおこなうためにも、まずは自動車関連諸税がどのように使用されているのかを正しく理解することが重要です。