Infoseek 楽天

災害時にはハイブリッド車が役立つ? 国土交通省が実証した結果は? 避難所等に給電する課題とは

くるまのニュース 2022年12月11日 16時10分

国土交通省は、2022年11月5日に沖縄県那覇市で電動車を活用した避難所給電訓練をおこないました。訓練ではどのようなことがおこなわれたのでしょうか。

■沖縄県那覇市で電動車を活用した避難所給電訓練をおこなわれました

 国土交通省は、2022年11月5日に沖縄県那覇市で電動車を活用した避難所給電訓練をおこないました。訓練ではどのようなことがおこなわれたのでしょうか。

 地震や津波といった自然災害は、被災地域に大きな被害を及ぼします。

 例えば、2011年3月11日の東日本大震災、2016年4月14日・16日に連続して発生した熊本地震など、まだ記憶に新しい人も多いでしょう。

 これまで、こうした災害時には多くの人が住居を失い、電気や水道といったライフラインが不十分ななかで避難所生活を強いられてきました。

 とくに現代の生活では、外からの情報を得たり、家電製品を活用したりするために電気が必須となっています。

 避難所での深刻な電気不足に備えるために、最近注目されているのが、電気自動車(EV)やハイブリッド車/プラグインハイブリッド車といった電動車の活用です。

 そこで、国土交通省は、災害時における電動車の活用方法などの見直しをおこなう目的で、2022年11月5日に沖縄県那覇市で電動車を活用した避難所給電訓練を実施しました。

 今回の実証では、どのような訓練がおこなわれ、今後の課題としてはどういったポイントが挙げられたのでしょうか。

 実証を統率した那覇市役所の総務部防災危機管理課の担当者によると、今回の訓練では、提携事業者である琉球三菱自動車から「アウトランダーPHEV」と「エクリプスクロスPHEV」を3台、そして市民から1台のPHEVを借り出し、計4台の車両を活用したそうです。

 ハイブリッド車に限定したのにも理由があるそうで、前出の担当者は以下のように説明します。

「EVを給電車両として活用する際の課題として、以前から、電力が無限ではないという弱点が挙げられていました。

 ハイブリッド車では、エンジンを活用している間はバッテリーに蓄電することができるため、定期的にエンジンを稼働させれば、比較的長時間給電をおこなうことができます。

 これまでに浮き彫りになった課題を加味して、今回はハイブリッド車を採用しました」

 また、避難所まで電気自動車を移動させると、その道中でも電力を消費してしまいます。

 停電地域に電力を届けることが目的なので、そこに電力を費やしてしまっては困るという実情もあります。

 今回は、そうした理由からPHEV4台をローテーションして、給電の時間とエンジンを稼働させてバッテリーに蓄電する時間をそれぞれ作り、給電をとめないように動かし続けたといいます。

 前出の担当者は、実証の結果について「このローテーション方式を実際におこなってみて、給電を効率よくおこなうことが可能であると確認できました」と話します。

■今後の課題も判明し、実になった実証訓練

 このように、実際の災害時でも活用できそうな給電方法が明らかとなった一方で、担当者は「今後クリアするべき課題も見えてきた」といいます。

「ローテーション方式は効率的に給電できますが、バッテリーに蓄電する際にエンジンを稼働させるとガソリンを消費することになってしまうため、今後はガソリンをどのように供給し続けるのかということが課題となりそうです」(総務部防災危機管理課の担当者)

 また、クルマを活用するということは、クルマを運転する人やバッテリー残量を確認する人など、多くの人員も必要になります。

 さらに被災地への移動は、路面の状況が劣悪である可能性も高く、運転する人にはそれなりのリスクがともないます。

 前出の担当者はこのことについて次のように話します。

「クルマの移動については、クルマの保管場所から避難所まで、提携事業者さまの協力も必要になります。

 二次災害の危険性も残るなかで、提携事業者さまに運転していただくとなると、道中の事故なども考えられるため、車両は必要ですが、なかなか協力を要請するのも難しいのが実情です。

 今後は、避難所へ安全に車両を移動してもらうための方法やルート、当日の避難所との連絡のやり取りの仕方なども含めて、検討していかなくてはいけません」

クルマのバッテリー電力が使える100V AC電源(1500W)採用! ガソリン満タンで最大約12日分の電力量が供給可能

 また、避難所として活用される体育館はかなり広いため、非常に長い給電コードを確保しなくてはいけないなど、クルマとは直接的にかかわらない課題もみえたようです。

 災害が発生しないことが第一ですが、今後しっかりと対策を講じておくことで、万が一の際に被災者が快適に過ごせるようになることが望まれています。

※ ※ ※

 なお、今回はコロナウイルスの蔓延防止対策を考慮して、体育館内で8つの送風機に給電をおこなうという検証もおこなってみたそうです。

 担当者によると「送風機を8つ活用することで、コロナウイルスの感染症を防げるレベルの換気がおこなえることがわかった」といいます。

 ただ、避難所では、もちろん送風機以外の機器にも電力を供給する必要があり、どの機器に優先的に給電するのか、担当者は、「今後はそうしたことに関しても視野を広げて検討していく」としています。

この記事の関連ニュース