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なぜトヨタ「プリウス」のマフラー盗難相次ぐ? 被害100件で県警が注意喚起も! 世界的に被害増加の理由とは

くるまのニュース 2022年12月12日 7時10分

千葉県警は2022年11月、12月にかけて「ハイブリッド車のマフラー盗難に注意!」という注意喚起を出しています。とくに少し古めのトヨタ「プリウス」が狙われやすいといいますが、どのような背景があるのでしょうか。

■千葉県警が警告!2022年に入ってトヨタ「プリウス」だけで100件以上が被害に

 2022年12月2日、千葉県警から「マフラー盗難に注意!」という注意喚起が出されました。
 
 なかでもトヨタのハイブリッド車となる「プリウス」のマフラー(触媒)の盗難が相次いでいるようですが、その理由とはどのようなものなのでしょうか。

 この注意喚起は2022年11月上旬から木更津市や千葉市若葉区などのとくにマフラー盗難が多い地域でおこなわれているようです。

 実際、2022年11月9日に木更津警察署から出された内容は以下となっています。
(警察発表の原文ママ)

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ハイブリット車のマフラー部品の盗難に注意!!(木更津市潮見1丁目)
 木更津警察署からお知らせします。

 最近、木更津警察署管内において、ハイブリット車の車底部でマフラーに連結している部品(通称 触媒コンバーター)が盗難される事件が連続で発生しています。

 被害にあわないために、

 〇照明が設置されて夜間も明るい駐車場
 〇見通しがよく死角がない駐車場
 〇防犯カメラが設置されている駐車場

 を選び、また、自宅駐車場にも同様の設備を設置する・車両に警報装置を設置するなど、被害防止に努めましょう。

千葉県木更津警察署

ーーーーーーー

 この内容に関して、千葉県警の担当者は次のように話しています。

「県下では、2022年に入ってプリウスのマフラーを狙った盗難被害が100件以上発生しています。

 被害は、夜間帯での発生が多く、月極駐車場や団地駐車場などでの被害が多くなっています」

 プリウス&千葉県内だけで2022年1月以降、100件以上が触媒盗難の被害に遭っているとは、かなり多い数字に思えます。

 なお、千葉県警では防犯対策としてクルマに警報装置を設置することや、駐車場に防犯カメラやセンサーライトを設置すること、時間駐車場などに駐車する際には防犯カメラがあり夜間でも明るい駐車場を選ぶことなどを推奨しています。

 ちなみに、日本では公式なデータが出ていませんが海外では少し古いハイブリッド車が被害に遭うケースが多くなっています。

 英国トヨタの発表では2代目プリウス(2004年から2009年)と3代目プリウス(2009年から2016年) と、2代目オーリスハイブリッド (2012年から2018年)が触媒がもっとも盗まれている車種です。

 新しいハイブリッド車においては触媒コンバータが盗まれにくい設計になっているので被害は少ないとされています。

 しかし、前述のデータからすれば初代から3代目までのプリウスを所有している人は気を付けたほうが良いかもしれません。

 また古いプリウスが狙われやすい背景について、とある自動車整備士は「2代目・3代目のプリウスは販売された台数がとても多いです。また設計としては古くなっても今のクルマ並の低燃費性能を誇ります。そうした背景からいまでも中古車試乗で高い人気を誇ります。そうしたこともあり、プリウス自体の盗難被害も多く、その流れからマフラー(触媒)だけ盗む標的になりやすいのではないでしょうか」と話しています。

※ ※ ※

 なお、英国では英国トヨタと警察の協力による触媒コンバータの盗難防止プロジェクトが始まっています。

 これはトヨタ製ハイブリッド車のオーナーに呼びかけて、クルマを入庫してもらい、その際転売をしにくくするために触媒にマーキングをします。

 物理的に触媒盗難を防止するというより、盗んで転売する際に所有者の履歴が明らかになることで盗難が発覚し転売して利益が得られなくすることを目的としているようです。

■コロナ禍で触媒に使われる金属が爆上がり!? 日本だけじゃない触媒盗難事情とは

 マフラーを盗む目的はマフラーに装着されている触媒(排出ガスをきれいにして外に出すための装置)に使われている貴金属が関わっています。

 触媒コンバータにはプラチナ、パラジウム、ロジウムなどの貴金属でコーティングされたハニカムが含まれており、排出ガス内の有害成分をろ過する効果があります。

 触媒盗難は昔からありましたが、とくにコロナ禍以降、これらの貴金属が急騰し合わせて盗難も急増しているようです。

 全米保険犯罪局 (NICB)では次のように述べています。

「COVID-19のパンデミックにより鉱山での金属生産が大幅に減りました。

 鉱山の労働者が減りサプライチェーンが途絶えたため、触媒に使われる貴金属の採掘と生産のコストが大幅に増加したのです」

 その結果、2020年3月時点からロジウムの価格が200%上昇するという記録的な高値になり、触媒盗難が急増しているのです。

複雑かつ高価なパーツで構成されるトヨタ「4代目プリウス」

 ところで、触媒を盗まれるとクルマはどうなるのでしょうか。実際に触媒盗難の被害にあったアメリカ在住の知人に聞いてみました。

 知人のクルマの触媒は、2022年11月にロサンゼルス・ガーデナのホテル駐車場でわずか数分の間に盗難されました。

 盗難被害に遭ったクルマは、トヨタ「タンドラ」です。

 このタンドラはハイブリッド車ではありません。盗まれたクルマのオーナーは盗難被害の後も含めて次のように話しています。

「盗難後は、いわゆる直管状態です。サイレンサーはその後ろなので、爆音になります。

 このまま走るのは違法となりますので、現在は応急処置を施しています。

 短期間にうちのタンドラ、友達のホンダ『エレメント』、会社の隣のペンキ屋のトラックも外に停めておいたら夜のうちにやられました。

 タンドラは触媒とO2センサーで約2500ドル(34万円)の被害です。

 保険で補償されますが、納期が1年以上かかるとのことです。

 トヨタUSAに触媒のオーダーを入れたとき、その時点でカリフォルニア州全体のバックオーダーが3000個だったそうです。

 いかに多くが盗まれているかがわかりました」

※ ※ ※

 最後に海外を含め、各地の警察から出ている「触媒を盗まれないためのアドバイス」をまとめました。

 ・屋根付きのガレージ内に駐車する。

 ・片側のタイヤを歩道に乗り上げた状態で駐車しない(地面との間に隙間ができて窃盗犯がマフラーにアクセスしやすくなるため)

 ・ハイブリッド車以外も盗まれる可能性があるので注意。とくにSUVなど車高の高いクルマは車両下部に潜っての作業がしやすい。

 なお、触媒が盗まれてもぱっと見の外観に変化はないので気づきにくく発見が遅れる場合があります。

 とくに屋外駐車場に停めている場合は1日1回はクルマの様子を確認することを推奨します。

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