全国各地に点在するガソリンスタンドですが、ほとんどの屋根(キャノピー)は、平らに造られているケースが多いです。積雪時など雪下ろしのデメリットなどが考えられますが、なぜ平型式が多いのでしょうか。
■なぜ、ガソリンスタンドの屋根は平らになっている?
クルマを利用するうえで欠かせないガソリンですが、これを給油する場所がガソリンスタンドです。
一般的にガソリンスタンドの屋根は平らであることが多いようですが、なぜ、一般的な家の屋根のように傾斜がかかっていないのでしょうか。
ガソリンスタンドの屋根は「キャノピー」と呼ばれており、給油時に雨水が燃料に混ざるのを防いだり、日光を遮ることで従業員の負担を軽減させたりする役割を持っています。
しかし、その形状は一般的な民家や建物とは異なり、水平に造られています。
そのため、雨や雪が溜まりやすいことが予想されますが、なぜガソリンスタンドは同じような設計をしていないのでしょうか。
石油元売り会社の広報担当者は、ガソリンスタンドのキャノピーが水平である理由について、以下のように話します。
「コストと設置するための時間を鑑みた結果、もっとも合理的であることが考えられます。
アーチ型のガソリンスタンドもなかには存在しますが、現在ではほとんどみられません。
また、水平のキャノピーにすることによって雨をしのぎやすいといったメリットもあります」
このことから、キャノピーが平らである理由のひとつとして、工期短縮や建築コスト削減が挙げられます。
キャノピーの形状を平らで統一されたデザインにすることでかかるコストが最小限で済むようにしているようです。
■雪が降っても大丈夫?雪かきをしているの?
では、平らな屋根にすることにより雪は積もりやすくならないのでしょうか。
また雪が積もった場合、どのように雪おろしをおこなうのでしょうか。
前出の担当者は、ガソリンスタンドの平らなキャノピーでの積雪について、以下のように話します。
「雪は太陽光で自然に溶けるような設計にしています。
そのため、基本的に雪が降っても積もっても問題なく、雪かきをする必要もありません」
北海道や東北地方といった雪が多い地域では、融雪用のヒーターを内蔵しているキャノピーもあるようです。
ガソリンスタンドのキャノピーは、建築基準法により一定の積雪までは耐えられるように造られており、雪が深く積もった場合のみ従業員が屋根に上って雪下ろしをすることもあるといいます。
さらに平らにすることで雨や雪が屋根の周りに落ちることがなく、つららができにくいというメリットもあります。
また厳密にいえば屋根は平らのように見えても上の面は緩やかな傾斜がかかっており、雨や雪が降ってもある程度なら問題のないように造られているようです。
※ ※ ※
そもそもガソリンスタンドの屋根の形状は平らにするよう規則が定められているわけではありません。
建築素材や面積、耐火基準などに関しては規則が定められていますが、屋根の形状については制限がないといいます。
そのため、実際にアーチ型や三角屋根のガソリンスタンドもあり、1970年代にはドーム型の屋根が流行っていたようです。
しかし、その後、老朽化により姿を消し、建築コストが高くつくドーム型は新たに建築されることが減り、あまり見かけなくなってきたとされています。