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大雪「立ち往生」で活躍! 雪道進む自衛隊のハコ型車両が凄い! 冬季に存在感示す「10式雪上車」とは

くるまのニュース 2022年12月23日 6時10分

最近では、大雪によってクルマが動けなくなる立ち往生が発生することがあります。2022年12月中旬でも新潟県などで大雪による立ち往生が発生し、自衛隊に救援依頼が要請されました。このような大雪時活躍する自衛隊の秘密車両とはどのようなものなのでしょうか。

 2022年12月19日に北陸地方で大雪となった結果、北陸道などで大規模な立ち往生が発生。20日には一部地域に災害救助法が適用され、自衛隊が被災地で救援活動をおこなっています。
 
 自衛隊には降雪による災害時に活躍する雪上車が存在しますが、どのような特徴があるのでしょうか。

 朝起きて駐車場にいって自分のクルマが雪に埋まっていたら出かける気力が無くなります。

 気力が奪われるだけならまだしも、豪雪で自動車が立ち往生して交通が麻痺する事態が起きています。

 自衛隊にとっても雪は大敵です。

 しかしどんな天候でも任務をこなさなければなりませんし、災害派遣要請を受けて立ち往生したクルマの脱出支援や除雪にも出動することがあります。

 雪道の移動手段として自衛隊は専用の雪上車を持っており、現在配備が進んでいるのは10式雪上車です。

 10式といえば戦車が知られていますが、雪上車も戦車や装甲車と同じように採用年度によって○○式といった制式名がついており、10式戦車と同じ2010年度に採用されたことを意味します。

 配備されているのは雪の多い地域の部隊で、冬季にしか動かないので目にする機会の少ない車両ですが、駐屯地に行くと濃緑色のトラックやジープのなかで真っ白な車体は結構目立っています。

 戦車や装甲車と同じ装軌車(いわゆるキャタピラ車)なのですが、足回りの構造はかなり違います。

 戦車が巻いている鉄製の履板を組み合わせた履帯はどこでも走破できるようにみえますが万能ではありません。

 凍った路面ではスリップします。雪上車の履帯は滑りにくい強化樹脂製で地面に接する部分にはスパイクが埋め込まれて凍結した路面でも走行でき、柔らかい新雪で埋まらないよう接地圧を下げる幅広になっています。

 転輪も鉄製ではなくゴムタイヤが使われています。雪道には強いのですが履帯が摩耗してしまいますので舗装道路は苦手です。

 冬季しか動かせない雪上車はいわば期間限定車両ですので、ほかの季節は定期的に点検されるものの事実上放置状態です。

 それでも冬の出番になればすぐにエンジンがかかって動きだせるような信頼性と耐久性が求められます。

 特殊な構造のため価格も維持管理費も高価になるため。一般には手が出しにくい特殊車でもあります。

■縁の下の力持ち「10式雪上車」とはどんな特徴ある?

 自衛隊の雪上車を製造しているのが新潟県の大原鉄工所です。

 初の国産雪上車を開発した独自技術を持っており、自衛隊発足以来ずっと雪上車を製造、納入してきた実績があります。

 またより厳しい環境の南極で使われている雪上車も大原鉄工所製で、自衛隊用の国産雪上車の歴史は古く、自衛隊の前身である保安隊時代の1952年から開発が始まっています。戦後初の国産戦車61式の開発開始1955年より早いのです。

 現在配備が進んでいる10式雪上車と先代の78式雪上車はよく似ていますがだいぶ変わっています。

 まず78式の操縦は特別な訓練が必要でした。操縦には転把(てんぱ)と呼ばれる左右二本レバーを操作して、曲がりたい方向のレバーを引いて履帯を一時停止させて旋回させる方式で、しかも5速マニュアルトランスミッションという一昔前の重機と同じ構造で操縦には習熟が必要でした。

 操縦席には2本の転把と脇には変速機レバー、足元にはアクセル、ブレーキ、クラッチという3本のペダルが並んでおり、オートマチックトランスミッションとパワステに慣れた人には、2本の脚と腕でどうやって操縦するのか戸惑うことでしょう。

 それが10式では転把をハンドルにし、トランスミッションも4速オートマチックとなりずっと操縦がやりやすくなりました。

 また先に紹介したように雪上車は雪のないところでは長く走れませんので、長距離移動には輸送車で運んでもらう必要があります。

 78式は大きくて戦車や装甲車と同じように大型トレーラーでないと載せられませんでしたが、10式はややコンパクトになって73式大型トラックに載せられます。

 大型トレーラーより73式大型トラックのほうが数は多いですので、ずっと使い勝手がよくなりました。ただし車体が小さくなった分定員は2名減って、乗員2名+乗車10名です。

78式雪上車の操縦席、トラックというより重機に近い運転装置(撮影:月刊PANZER編集部)

 自衛隊の雪上車は雪が降ったら大忙しです。トラックやジープのような輸送や連絡任務から、演習では指揮官を載せて指揮車にもなります。

 実戦では指揮官も戦車や装甲車に載ることが多いのですが、実動よりも指揮能力の向上が目的の訓練の場合は動きやすい雪上車が「指揮戦車」を演じることもあります。

 また北国勤務の隊員はスキー技能は必須で、ジープから戦車まで必ずといってよいほど乗員用のスキー板が括り付けられています。

 雪上車でスキーを履いた多くの隊員を引っ張って移動することもよくおこわれます。

 ただ引っぱられて「ドナドナ」されるのは楽そうですが、踏ん張ってバランスを取らなくてはならないのでそれほど楽でもなく、転ぼうものなら後続が巻きこまれて大変なことになるそうです。

 自衛隊の雪上車は目立ちませんが雪国には不可欠な存在で、縁の下の力持ちとして活動を支えています。同期の10式戦車と同じ位重要な装備品なのです。

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