日本自動車販売協会連合会(自販連)が、軽を除く2022年の年間販売ランキングを発表しました。1位はトヨタのコンパクトカー「ヤリス」ですが、そのなかには小型SUV「ヤリスクロス」も含むため、純粋に単一車種で考えれば「ルーミー」「ライズ」の台数が浮上してきます。
■「ヤリス」の販売台数には派生モデルも含まれる
2023年1月11日、日本自動車販売協会連合会(自販連)は、軽自動車を除いた2022年1月から12月までの新車販売ランキングを発表しました。
1位は、1年間で約16万8600台を販売したトヨタ「ヤリス」でした。しかしこのデータには注釈が必要となります。どういうことでしょうか。
自販連が発表した昨年2022年のナンバー1はトヨタの「ヤリス」。続いて約13万1500台の「カローラ」、そして約11万台の日産「ノート」です。
そして、4位と5位にはトヨタのコンパクトハイトワゴン「ルーミー」(約10万9000台)、コンパクトSUV「ライズ」(約8万3600台)がランクインしました。
ここで注意してほしいのは、ヤリスとカローラは、その半数ほどがコンパクトSUVの「ヤリスクロス」や「カローラクロス」といった派生モデルの分も含んでいる数値だということです。
例えば、コンパクトカーのヤリスが約8万2800台なのに対し、ヤリスクロスが約8万2680台(ともにトヨタ調べ)と、詳しく車名別に分けたならば、累計販売台数は半減してしまうのです。
そういう意味でノートも、上級版「ノートオーラ」など複数のバリエーションを含んだ数値となります。
その一方で、単一モデルであるルーミーとライズは、2モデル合計で考えるとヤリス連合を超える19万台以上に及び、こちらも驚くべき販売規模です。
なんといってもルーミーは7年も前の2016年のデビューですし、ライズも2019年の発売。もう4年も前のモデルになるのです。
ちなみに、昨年2021年の年間販売ランキングを見ると1位ヤリスに続いて、2位がルーミー、ライズは6位でした。
さらに一昨年の2020年は、2位がライズ、6位にルーミーが並びます。
どちらも一旦は順位を落としながらも、その後順位を上げるほど健闘している「強い存在!」といえるでしょう。
ではルーミーとライズが売れ続ける理由は、どこにあるのでしょうか。
まず、前提として知っておいてほしいのが、ルーミーとライズは、トヨタ製ではないということです。
この2モデルは、トヨタの子会社となるダイハツが開発し生産しています。それをトヨタにOEM供給しているのです。
そしてダイハツは、軽自動車をはじめとする小さなクルマを得意とする自動車メーカーです。その小さなクルマを造るためのノウハウがルーミーとライズには注がれています。
軽自動車のノウハウが使われているルーミーとライズには、他のトヨタ車と決定的に異なる点があります。
それは「小さいのに、室内が広い」ということ。これは、軽自動車の歴史も関係しています。
■「ルーミー」「ライズ」には軽を極めたダイハツのノウハウがつまっている
過去を振り返れば、軽自動車は、決められた外寸の中で、いかに室内空間を広くするかという点で進化してきました。
昭和のころの軽自動車は、背の低いハッチバックタイプ(メーカーでは「セダンタイプ」と呼称)が一番に売れていました。
しかし平成になって、背を高くし室内を拡大したスズキ「ワゴンR」やダイハツ「ムーヴ」といった軽ハイトワゴンがベストセラーに。
さらに平成後期になると、さらに背を高くし両側スライドドアを備えた実用性の高いダイハツ「タント」やホンダ「N-BOX」といった軽スーパーハイトワゴンがナンバー1になります。
つまり室内空間が広いクルマほど、売れるようになってきたのです。
そんな軽自動車のノウハウが込められたルーミーとライズは、驚くほど広い室内空間を擁しています。
全長3700mmから3705mmのルーミーは、室内長2180mm×幅1480mm×高さ1355mmです。
これは、ひとクラス上で全長4260mmの3列シートミニバン「シエンタ」の室内長2030mm×幅1530mm×高さ1300mmよりも、長さと高さで勝るのです。
全長3995mmのライズに関していえば、室内長1995mm×幅1420mm×高さ1250mmです。
これは全長4180mmのヤリスクロスの室内長1845mm×幅1430mm×高さ1205mmだけでなく、さらに上のクラスとなる全長4490mmのカローラクロス、室内長1800mm×幅1505mm×高さ1260mmに対しても、長さでは勝っているのです。
つまりルーミーとライズは、安いくせに格上モデルよりも室内が広いのです。
しかも、ダイハツは「良品廉価」を売りにしていますから、安っぽくならないように気を配ってもいます。
「同じ値段であれば、室内の広いクルマがいい」と思う人は多いでしょう。そして、室内の広さというのは、古くなりませんから、長く所有しても魅力が色褪せることはありません。
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コロナ禍を原因とする生産の遅滞も、ルーミーとライズには追い風になったようです。
現在、トヨタのウェブサイトには、納期の目安として「生産遅延に基づく工場出荷時期目処の一覧」(2023年1月10日時点)が掲載されています。
これを見るとルーミーの納車は「4か月から5か月程度」、ライズは「6か月程度、ハイブリッド車は6か月以上」とあります。
それに対してヤリスクロス」は「6か月以上」、シエンタは「詳しくは販売店にお問い合わせください」とあり、納期が定まらない状況を示唆しています。
つまりルーミーとライズは、他車種よりも納車も早いのです。
さらに加えると、ルーミーとライズはともに販売価格160万円から170万円程度でスタートします。
商品としての出来が良くて、しかも納期も早く、そして安い。まさに3拍子揃ったのがルーミーとライズというわけです。
乗り換えを検討中で「とりあえずなんか安くていいクルマない?」と問う顧客に対して提案すれば、相当な確率で刺さるのではないでしょうか。
また、軽自動車を検討している人に対しても価格競争力は高いはずです。
特に、軽自動車で広い室内空間に慣れてしまった人にとっては、軽自動車の延長線上にあるルーミーとライズを、よりポジティブに感じるはずでしょう。
広さ、安さ、納期の早さという3点を上回るライバルが登場するまで、まだまだルーミーとライズの快進撃は続くのではないでしょうか。