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電動キックボード解禁へ! 16歳以上免許不要でヘルメットは努力義務 車・歩行者から見てホントに大丈夫?

くるまのニュース 2023年1月20日 14時10分

電動キックボードに関する法改正が2023年7月におこなわれ、運転免許不要となります。なかには歩道を走れる電動キックボードもありますが、安全面でどのようなことに配慮すべきなのでしょうか。

■電動キックボードがもっと気軽に乗れるようになる

 2023年1月19日の昼、テレビやネットで一斉に「電動キックボード」に関するニュースが流れました。2023年7月1日以降、“一定の条件を満たす”電動キックボードであれば16歳以上は運転免許が不要で乗れて、さらにヘルメット着用は義務ではなく「努力義務」となるという内容です。
 
“一定の条件を満たす”とは、「原動機付自転車のうち、原動機の定格出力が0.6kW以下であって長さ190cm、幅60cm以下かつ最高速度20km/hを超えないこと」を指します。

 電動キックボードに関する法改正について、直近の国の動きを簡単に振り返ってみます。

 警察庁が主体となった議論によって、2022年に改正道路交通法が施行されることが明らかになりました。このなかで、電動キックボードについては、比較的サイズが小さく、最高速度が抑制された部類を「特定小型原動付自転車(特定原付)」と定義。この枠組み以外の電動キックボードは「一般原動機付自転車」と呼んで区分しています。

 次に、国土交通省が道路運送車両法の観点から、特定原付の保安基準についての議論を進め、2022年12月23日に公開した資料のなかで、保安基準の適用猶予(適用日)を、改正道路交通法施行日としました。

 そして、警察庁が2023年1月19日、改正道路交通法に対する意見の募集(いわゆるパブリックコメント)を2023年1月20日から同年2月18日までおこなうと発表し、施行期日を2023年7月1日(予定)としたのです。

 これを受けて、メディアが特定原付としての電動キックボード解禁について一斉に報じたという流れになります。

 これまで、電動キックボードに係る規制緩和については、SNSなどでは「ちょっとした移動が便利になる」とか「観光が楽しくなる」といった好意的な意見がある反面、「免許不要という自転車感覚で電動車を乗るのは危険」とか「事故や違法駐車が増えそう」といったネガティブな意見も見受けられるなど、世の中の受け止めは賛否両論といった印象がありました。

 国の判断によって特定原付導入が具体的に始まることを受けて、ドライバー目線と歩行者目線から、その安全性について考察してみましょう。

 まず、ドライバー目線では、端的にいって、運転中に注意しなければならない新たな乗り物が増えることで運転におけるドライバーのストレスがかなり増えるでしょう。

 これまでの電動キックボードは、都市部など一部地域での実証試験が主体であり、また個人所有者の数は限定的でした。それが特定原付解禁となると、その数は全国各地で一気に増える可能性が高いと思われます。

 考えられる状況としては、自転車やバイクに比べて、電動キックボードは小ぶりで、運転者は身体を斜めにして乗ることもあり、狭い空間でもすり抜けて走れることが可能。そのためドライバーはかなり気を遣う必要があるでしょう。

 最新のクルマは斜め後方から接近する自動車などを検知するブラインドスポットウォーニングなどが装備されているとはいえ、ドライバーは自車周囲の目視確認が重要であることはいうまでもありません。

 また、観光用などで特定原付が数台連なって走る場合も考えられるため、地元の地理に不慣れな観光客が運転していることも考慮して、ドライバーは十分に注意を払う必要があるでしょう。

 さらにいえば、特定原付が守るべき信号は、道路交通法上では軽車両または自転車と同じなのですが、それをしっかり理解していない人が乗る可能性もあり、ドライバーが戸惑ってしまうことも考えられるのではないでしょうか。

■歩行者にとって電動キックボードはどんな存在になる?

 では、歩行者目線ではどうでしょうか。

 特定原付のなかで、自転車通行可能な歩道などを走行できるものがあります。それが、「特例特定小型原動機付自転車(特例・特定原付)」です。最高速度6km/hとし、緑色の点滅ライトをつけながら走行する仕組みが必要です。

電動キックボード

 人の通常の歩行速度は3km/h程度であり、少し元気なペースだと4km/h程度。6km/hというと、歩行者にとっては早歩きと軽いジョギングとの中間くらいの速さ感になります。

 自転車は6km/hよりも速い速度で通過していくので、特例特定原付は歩行者にとっても自転車にとっても、走行ペースが合わせにくい乗り物に見えるのではないでしょうか。

 そして台数が少なければ、歩行者も自転車もなんとか許容できるでしょうが、かなりの台数の特例特定原付が共存するとなると、歩行者や自転車にとってどう感じるのが気になるところです。

 筆者(桃田健史)は、同じく最高速度が6km/hと規定されている電動車いすを所有しており、各地で新しいモビリティの可能性を考えるため自主的な実証試験などをおこなっています。

 一部地域では電動車いすの最高速度を10km/hに上げる実験もおこなわれており、電動車いすと同じく、特例特定原付の歩道走行の速度が今後上がる可能性も考えられるでしょう。

 ただし、そうなると今度は、電動車いすや特例特定原付と、歩行者との速度差が拡がってしまい、衝突の際の被害が大きくなることも懸念されることから、さまざまな角度からの検証が必要なると思います。

※ ※ ※

 特定原付である電動キックボードがこれから普及していく際にもっとも重要なのは、仮に事故や違反や迷惑行為などが発生した場合、市町村単位で地元警察や地域住民の人たちが、その地域の特性を十分に理解したうえでローカルルールや条例をつくるなどして、町に寄り添った解決方法を考えていくことではないでしょうか。

 実際、電動キックボードの普及が進む欧米でも、そのような動きが各地で見受けられます。

 ついに始まった、電動キックボードに係る大胆な規制緩和の行方を、これからもしっかりとフォローアップしていきたいと思います。

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