急病などの際に119番で救急車を呼ぶことがあります。そんな非常時に活躍する救急車の車内には謎の「ウー」ボタンというものが存在するといいます。
■救急車のサイレン発動は「ウー」ボタンを押す?
救急車両のサイレンを発動させるボタンには「ウー」と書かれていることが、SNS上で話題となっています。
なぜ、緊張感が高まり、一刻を争う緊急事態に押すボタンに「ウー」というような表記があるのでしょうか。
日常生活のなかで、救急車が緊急時にサイレン音を鳴らしながら走行するシーンを見かけることがあります。
そんなサイレン音ですが、どのような仕組みで発動されているのでしょうか。
救急車のサイレンはボタン式でコントロールされており、緊急時にそのボタンを押して始動させる仕組みです。
今回、SNSの投稿により話題となっていたのが、そのボタンに書かれている文字です。
通常のクルマであれば、たとえばハザードであれば赤い三角形、ライトであれば電球のマークなど、アイコンや分かりやすい文字で、ボタンの機能が表されているケースが多いといえます。
その法則で考えれば、救急車のサイレンボタンは、スピーカーのイラストや、「サイレン」と表されていることが予想されます。
しかし、サイレンボタンには驚きの文字が書かれているのです。
実は救急車のサイレンボタンには、サイレンの音そのものである「ウー」という文字が書かれています。これがSNSで投稿され、大きな話題となっていました。
では、なぜ救急車のサイレンボタンに「ウー」と記載されているのでしょうか。
消防庁の担当者は、その理由について以下のように話します。
「緊急走行中に鳴らすサイレンは種類別に分かれており、サイレンの種類によっても持つ役割が大きく異なります。
これらは決められた状況下でそれぞれのサイレンを鳴らすため、どちらのサイレン音なのかが一目でわかるように記載する必要があったため、『ウー』という文字表記になったのではないかと思います。
これらのボタンは救急車を作る自動車メーカーにより設置されているため、ボタンの記載が統一されています」
■救急車のサイレン音は複数ある?
救急車のサイレンボタンには、瞬時にサイレン音を判別するために、音の通り「ウー」と書いてあることがわかりました。しかし、救急車のサイレン音は「ウー」のほかにも存在します。
前出の担当者はサイレン音の種類について、以下のように話します。
「通常のサイレン音である『ピーポーピーポー』の警告音に加えて、交差点を通過する際などに異なる音の『ウー』といったサイレンを鳴らしています。
これは走行中の通常のサイレンと、交差点の侵入など、より注意喚起が必要な状況で使い分けています」
救急車のサイレンには4種類存在するといい、通常のサイレン音「ピーポーピーポー」にくわえ、夜間や住宅街での走行でも迷惑にならないように「ピーポーピーポー」の弱バージョンが存在します。
さらに、「ウー」にはボタンで押す低音の「ウー」とフットペダルで押す高音の「ウー」があります。
また、「ピーポーピーポー」のサイレンボタンには、「ウー」と同様に「ピーポー」という文字が書かれている個体の救急車もあるようです。
実際にSNS上では、「『ウー』以外でも『ピーポー』のボタンを見たことがある」という声も多く見かけます。
ちなみに、「ピーポーピーポー」というサイレン音は、「ウー」というサイレン音と比較して威嚇性の低い音となっており、搬送中の怪我人や病人の精神的な負担を和らげる役割もあるようです。
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ちなみに、道路交通法施行令第14条には、「前条第1項に規定する自動車(緊急自動車)は緊急の用務のため運転するときは道路運送車両法第3章およびこれに基づく命令の規定により設けられるサイレンを鳴らし、かつ、赤色の警告灯をつけなければならない」と説明されています。
そのほかにも、車両運送法ではサイレンの音量も定められているなど、普段日常生活で目にする緊急車両には、さまざまな工夫がされています。