2023年1月27日、マツダのコンパクトカー「MAZDA2(マツダ2)」が大幅な商品改良を実施しました。「デミオ」時代を含めるとこれで6回目の商品改良ですが、今回はどんな点に力を入れたのでしょうか。
■若い世代の「マツダ2」離れが深刻だった!?
マツダのコンパクトカー「MAZDA 2(マツダツー、以下マツダ2)」は2023年1月27日に大幅商品改良をおこない、2023年3月下旬から全国で発売すると発表しました。
マツダ2の前身となる2014年発売の4代目「デミオ」から数えて、今回が6回目の商品改良ですが、オンラインで開催された商品説明会に参加し、マツダが今、新型マツダ2にかける思いについて詳しく聞いてみました。
話を進める上で、まずマツダ2の現状を確認しておきましょう。
生産しているのは、山口県の防府工場、東南アジアではタイのオートアライアンス、そして北米大陸ではメキシコのマツダ デ メヒコ グループオペレーションの3か所で、マツダにとってグローバル規模でのエントリーモデル・Bセグメントカーです。
日本での販売を見てみますと、2022年1月から11月までの実績では、マツダ登録車の中では、トップの「CX-5」(25%)に次ぐ、19%のシェアがあります。
その後「CX-30」(13%)、「MAZDA3」(11%)、「CX-8」(10%)、「ロードスター」(8%)、「CX-3」(7%)、「CX-60」(4%)、「MAZDA 6」(2%)、そして「MX-30」(1%)と続いています。
2014年のフルモデルチェンジから9年目であっても、これまで最新技術をアップデートしたり、様々な特別仕様車を取り入れてきたことで、日本市場での高い競争力を維持してきたといえるでしょう。
ただし、マツダとしては直近で、反省するべき点もあるといいます。
それは、若い世代の「マツダ2離れ」です。
マツダの社内データによると、コンパクトカー市場の年代別購入者を2016年と2021年で比較すると、市場全体では最も多い60代以上が増加傾向があり、50代が微減、40代が減少、そして20代と30代が微減となっています。
ところがマツダの場合、年代別の変化に大きな特徴があることが分かったといいます。
2016年時点では20代から60代まで各年代が比較的均等な分布を示していたのですが、2021年は40代と50代は2016年とあまり変わらず。
一方で、60代が2倍近くに跳ね上がり、その反動かのように30代が大きく減り、さらに20代が半減以下まで落ち込んでしまっている状況です。
その理由について、「(マツダ2のアピールポイントである)マツダらしい上質な造り込みや設計思想について、マツダから若い世代に対して上手くコミュニケーションできていなかったからではないか」と分析しています。
ここでいう上質さや造り込みとは、多岐にわたる要素を指します。
理想的なドライビングポジションを実現するため、前輪を車体前方に配置することで実現できたペダル配置の最適化。
Gベクタリングコントロール(GVC)によるハンドルの切り始めの応答性の向上。
斜め後方の視覚に接近する車両を検知するBSM(ブランドスポットモニタリング)機能など先進運転支援機能の全グレード標準装備化などが挙げられます。
こうした、比較的価格の手頃なコンパクトカーでも「良いものを造れば売れる」というマツダの強い思いが、必ずしも若い世代に上手く伝わっておらず、結果的に若い世代にとってマツダ2が少し遠い存在になってしまったようなのです。
そして、いざコンパクトカーを購入しようという段階で、マツダ2が若い世代のショッピングリストに載らない場合が増えたというのが、マツダの見解です。
その上で、20代、30代で減少した分の顧客は「国内のコンパクトガソリン車市場全体は安定しているので、他社のガソリンコンパクトカーに流れていると考えられます」と、マツダはマツダ2の実状を分析しています。
■「調和」を保ちながら「自分らしさ」を貫く
こうしたマツダ2の厳しい市場状況について、マツダは真摯に向き合い、今回の大幅改良では「マツダのエントリーモデルとして若年層に振り向いて頂く」ことを重視。
20代・30代の日常での行動、購買意識、そして価値観全体についてマツダ社内で解析チームを立ち上げ、詳細に検証したのです。
その結果、導き出したのが「周囲との調和をとりつつも、自分らしさを追求したい」という言葉です。
また、コロナ禍、ウクライナ・ロシア情勢、そして物価高など社会への様々な不安要素があっても、「不確実な世の中だからこそ、自分に自信を持ち、自分らしく生きたい」というニーズが高まっているというのが、今回のマツダ2大幅商品改良に向けた商品企画の起点となっています。
そこでマツダ2改良のポイントの中心を、「色や素材」の活用をさらに強化した様々な価値コンセプトの提案としました。
具体的には、グレードとして、これまでの好評の「Black Tone Edition」を進化させた「SPORT」と、最大198通りの表現パターンや様々な用品を充実させた「BD」、さらにこれまで好評の「Sunlit Citlus」を継続させた大きく3つの商品価値ベースに移行しました。
エンジンは1.5リッターガソリンと1.5リッターディーゼルとし、グレード数ではこれまでの13から6に集約しました。
BDで採用する、“最大198通りの表現パターン”とは具体的に、ボディに対して11色のルーフフィルムやホイールキャップなどでの組み合わせによるもので、大胆にイメージを変えた「顔」や「ミラーカバー」など随所に施されたアクセントが印象的です。
ルーフフィルムは、2トーンカラーとしてMX-30のオプション設定ですでに量産化している技術で、ボディ塗装の上塗り工程を2回から1回に短縮することで、製造工場でのCO2(二酸化炭素)排出削減に大きく貢献します。
また、インテリアなどには、材料を着色したバイオプラスチックを利用することでも、塗装工程を廃止しています。この技術は、マツダの各モデルでも適宜、展開することを想定しているといいます。
こうした、環境に対する企業の取組についても、環境意識の高い若い世代の購買意欲を高める要因となることが期待されるでしょう。
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気になったのは、ハイブリッド車などの電動化についてです。
今回のマツダ2商品改良では採用されていませんが、欧州など海外向けMAZDA 2では、トヨタから「ヤリスハイブリッド」をOEM(相手先ブランド生産)による供給を受けています。
さらに、3代目デミオにはEV(電気自動車)をリース販売したほか、ロータリーエンジンを発電機として使うレンジエクステンダーの試作車も公開されています。
そうしたロータリーエンジン技術は、先ごろ発表された「MX-30」のプラグインハイブリッド車「e-SKYACTIV R-EV」の量産につながっています。
電動化について、マツダ2の開発責任者は「国内販売店から(マツダのコンパクトカーに対する)ハイブリッド車導入の強い要望があるのは事実」と日本市場の実状を説明しました。
その上で、「マツダ2は日本のほか、タイやメキシコなど、まだ電動化が本格化していない新興国市場の需要が高い」とし、そうした中でコストと性能を上手くバランスさせる電動化については「社内で議論した」ともいいます。
しかし、マツダ全体としては、2022年11月に公表した「中期経営計画のアップデートおよび2030年の経営方針」の中で、コンパトカーの電動化についても触れているとして、マツダ2の今後の電動化の行方についてはコメントを避けました。
大幅改良を受けた新型マツダ2の月販目標台数は、これまで同様の3500台。
価格については、グレード名称は変更していても、装備などの内容からすると価格は事実上の据え置きとなります。