ここ最近、コーティング専門店などで洗車をする際、水道水ではなく「純水」が使われることが増えているようです。純水を使った洗車にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
■洗車に純水を使うメリットとは?
クルマが汚れたら洗車をしますが、水道水で洗っている人がほとんどでしょう。その一方で、コーティング専門店では数年前から「純水」と呼ばれる水が使われることが増えているといいます。
純水は高性能フィルターなどでろ過させた、限りなく不純物を取り除いた「精製水」のことなのですが、これを使うことで洗車の仕上がりが違うとされています。
日本の水道水は世界トップレベルでキレイな水であることは間違いなく、飲料用としても申し分ないのですが、不純物がまったく含まれていないわけではありません。
少量ながら、ナトリウムやカリウム、マグネシウム、ケイ素といったミネラルや消毒用塩素の残留物などが溶け込んでおり、洗車したときにその水が乾くとミネラルなどが表面に残留。ボディ表面に凸状で固着してしまい、排水性も悪くなって汚れが溜まり、最終的には水アカになってしまうのです。
さらにこのシミが直射日光に含まれる紫外線でさらに悪化し、洗っても取れなくなってしまうことがあります。そのため、水道水で洗車した後は早めに水分を拭き上げるのが鉄則といわれています。
洗車専門店やコーティング専門店では、水道水に含まれる不純物を高性能フィルターなどで限りなく不純物を取り除いた純水を使用。拭き上げでわずかに残る不純物をさらに減らしており、これによりコーティングの仕上がりも違ってくるのだそうです。
しかし水道水と違い、純水は手間がかかっているぶん価格が少し高めなのがネック。そこでコーティング専門店などは「純水製造機」などを導入して大量に純水を精製しつつ、洗車に使っています。
では、一般ドライバーはというと、ボディ全体の洗車に使うにはコストがかかり過ぎてしまうので、ならば限られた部分に使用してコストを抑えれば、手軽に純水の恩恵に授かれるのではないでしょうか。
そんな場合はどこに使うべきか、都内のコーティング専門店スタッフOさんに聞いてみたところ、「ウインドウの、特に内窓に使用するのが最適」と教えてくれました。
「下地作りを純水で行うとコーティングの仕上がりも違ってくるのですが、費用対効果で考えるとボディ全体を純水で仕上げなくても構わないと思います。
それより、クリアな視界を確保するために、汚れが目立ちやすいウインドウ、それも普段はあまり清掃されない内窓だけでも使用すれば、車内に浮遊していたホコリや人が触ったことでできる皮脂汚れなどもスッキリ洗浄することができるでしょう」
■一般ドライバーが純水で洗車してみた!
コーティング専門店のOさんは、純水にはさまざまなメリットがあるといいます。
「まず考えられるのが、水滴の跡や水シミができにくいことです。洗車時に付いた水分を完全に拭き取るのは至難の業で、吸水性に優れるマイクロファイバークロスで拭き上げても、見えない箇所や手の届かない箇所から水分が垂れてきます。そういった水垂れも、純水であればシミになりにくいといわれています。
特にサイドウインドウはドア内部に水分が残ってしまうため、拭き上げたウインドウを開閉するだけでも水分が付着してしまいます。これが水道水だと、乾燥後に水シミになってしまうことも多いのですが、そこで再度純水で拭き上げることでシミになるのをかなり防ぐことができます」
「もうひとつは、今まで付着していた汚れが減る効果も期待できます。というのも、不純物が含まれていない純水には不純物を取り込む性質があるため、水道水では除去できなかった汚れも純水と一緒に拭き取ることが可能になります。
不純物を取り除く効果はボディやウインドウに塗布されたコーティングにも好都合で、水道水で洗うよりもコーティング効果を弱めにくいともいわれています。
また、改めてコーティングするときもきれいな下地作りができますので、コーティングのノリが良くなり、光沢や艶が良くなるという効果が期待できます」(コーティング専門店 Oさん)
一部では「純水は拭き上げ不要なのでは?」という意見もありますが、Oさんいわく「使用以前に付いた汚れなどを含んだ純水は拭き上げる必要があります」とのこと。特にDIYで洗車する場合、空気中の汚れなどがすぐに付着してしまうので、やはり拭き上げはしたほうが良さそうです。
そして、実際に筆者(金田ケイスケ)が所有するクルマを純水で洗車してみました。今回は近所で「医療用精製水」を購入。価格はおおむね500mlが200円前後でした。ボディ本体を洗うにはもっと大量の純水が必要になるので、今回はOさんの提案通りに窓のみに使用しました。
純水にはより安価な「工業用精製水」もあり、インターネットでは「医療用」の半額以下で購入できるそうです。ボディ全体に試してみたいという人は工業用精製水のほうがコスト的に適しているかもしれません。
純水のほかに内窓清掃で必要なのは、きれいなマイクロファイバークロスのみ。一般的な綿製の布巾などではホコリや糸くずなどの不純物が付いてしまうため、化学繊維製が良いそうです。またフロントウインドウの隅まで拭き取りたい場合は、狭い隙間にも入るゴムベラがあると効率良く清掃できます。
使用方法は簡単で、きれいなマイクロファイバーに純水を含ませ、窓を拭くだけ。いつも洗車時には拭き上げていますが、純水を使うと明らかにクリア感が違います。ただし、以前から残っている水アカが落ちきらないのは致しかたないところではあります。
純水を使ってみた感想としては、内窓だけでなくダッシュボードやインパネ、センターコンソールなどにも十分使えそうです。洗剤などを含んでいない水なので、子どもやペットが乗ることも多いファミリーカーの内装掃除にもおすすめだといえます。
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本当はクルマ全体を純水で洗ってみたかったのですが、さすがに個人でするにはコスパが悪いため断念。
今回内窓のみの使用でしたが、効果を体感しやすかったこともあり、次回はボディ全体にも純水を使用してみようと思います。