中古車は、走行距離や使用環境などによって車両ごとにコンディションが異なります。状態の良い中古車をできるだけ安く手に入れたいと思うのは当然ですが、手ごろな価格の車両のなかには走行距離が10万kmオーバーの、いわゆる「過走行車」があります。過走行車は購入して大丈夫なのでしょうか。
■安さが魅力の「過走行車」購入して大丈夫?
状況が改善したとはいえ、半導体不足が続いており、新車の納期が遅れ気味です。新車がすぐに手に入らないことから、すぐに乗れる中古車に人気が集中しています。
中古車は1台ごとにコンディションが異なるので、状態の良さを優先すべきか、それとも安く購入することを優先させるかで悩む人もいるでしょう。
中古車は、ボディの傷の有無や内装のヘタリ具合、駐車環境による紫外線のダメージの蓄積なども加味されるため、1台ごとに価格が異なります。
そんな中古車のなかには走行距離が10万kmを超えた、いわゆる「過走行車」と呼ばれるものがあります。走行距離が多いぶん、中古車相場より安く販売されることが多いのですが、故障などのリスクを考えると手を出しにくいのも事実。
過走行車は購入して大丈夫なのでしょうか。都内の中古車販売店オーナーN氏に聞いてみました。
「過走行車に関しては、内外装の痛み具合と定期的なメンテナンス記録があるかが、大丈夫かどうかの大きな判断材料になるでしょう。
また『修復歴アリ』の場合も安い価格設定になりやすいのですが、どんな原因でどこの部位がどの程度修復されたのかを必ずチェックするべきです。逆に走行に影響のないパーツの軽度な修復のみであれば、お買い得ともいえます」
N氏は「すべての過走行車が決して悪いわけではない」といいますが、「ただし」と条件がつくようです。
「程度の判断基準では、走行距離だけでなく年式も重要です。同じ車種なら年式が新しいほうがやはり全体の劣化具合も少なく、メンテナンスもしやすくなります。
ある程度年数が経っている低年式の低走行車はお得に感じやすいのですが、長期間乗られていなかったのであればメンテナンスが必要です。むしろ『新しい過走行車』のほうが、『遠距離通勤のために走行距離が増えてしまった』というケースもあるので、メカニカルトラブルは出にくいかもしれません」(中古車店オーナー N氏)
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過走行車とは逆のパターンで、10年落ちなのに走行3万km台といった具合の「低走行車」というものもあります。一見状態が良さそうに感じられ当然ヘタリも少ないように思われるのですが、逆に定期的なメンテナンスすらされていないことも。
クルマは走行するほどに劣化してしまうのは仕方のないところですが、かといって乗られていなければ大丈夫というものでもなく、正常に機能するためには適度な走行とメンテナンスが必要とされるのです。
■過走行車を購入する際の注意点
それでは、過走行車を購入する場合の注意点はどんなところになるでしょうか。
「過走行車は同年式の走行距離が短めのクルマと比較して安い価格に設定されていますが、手放すときにも査定が低くなるのは覚悟しておいたほうが良いでしょう。
また、走行距離が多いぶん、全体的に消耗や劣化は否めません。しかし逆に考えると、それだけ走っても問題なかった証拠でもあります。
スポーツカーはエンジンを酷使している可能性もありますが、あまり乗らずに可動部が固着してしまった低走行車より調子は良いはずです」(中古車店オーナー N氏)
「過走行車を選ぶときのポイントとしては、まず年式は新しいほど良いということ。クルマは使用するだけでなく経年でも劣化しますし、1年違うだけで新たに追加される装備や細かい改良がされることもあります。
ただ高年式になると価格も高くなってしまうので、だいたい5年から7年落ちあたりが狙い目かもしれません。
一方で、10年以上経過した過走行車は場合によっては大掛かりなメンテナンスが必要になる可能性もあるので、よほどクルマに詳しい人か、どうしても欲しい車種でない限りは手を出さないほうが良いと思います」(中古車店オーナー N氏)
中古車の場合は「それまでのオーナーがどのように扱ってきたか」が程度の判断材料になります。整備の履歴を残す記録簿はもちろんですが、ボディに細かい傷や凹みもそのままだったり、タイヤも交換されていないようなクルマは、歴代オーナーの扱いが雑だった可能性があります。
「理想をいえば、過走行車や低年式車でもひとりのオーナーが大切に乗ってきた1オーナー物などは比較的安心であることが多いですが、複数オーナーが所有した履歴がある中古車の場合、第一印象で違和感があったらやめておいたほうが賢明です。
違和感があるようなクルマはバッテリーやタイヤが未交換だったり、走行距離の多さに応じたメンテナンスをされていない可能性も高く、購入後すぐにパーツの交換が必要になると出費も増えてしまいます。
あとは、下回りなどにサビが出ていないかをチェックしてみてください。過走行車の場合はマフラーなども通常より疲弊しています。サビが大きくなってしまうと修理も高額になってしまいますし、最悪パーツ交換が必要になると、せっかく安く購入した意味が薄れてしまいます」(中古車店オーナー N氏)
ただこれも考え方次第です。あえて過走行車を安く入手し、余った予算をメンテナンスに使うという作戦もあります。
「エンジンオイルだけでなくATフルードなどの油脂類、ブレーキパッド、バッテリーなどを交換すればしばらくは不具合も出ないでしょう。
エンジンマウントやサスペンション部などのゴムブッシュ類は、部品代自体は少額なのですが工賃が高いので、異音や振動がするなどの症状がなければ、まだ交換しなくても大丈夫です。
これらのパーツを守るためにも、衝撃吸収性を考慮して、タイヤは可能な限りゴムの柔らかい新品に交換できればベストです」(中古車店オーナー N氏)
中古車に長く乗りたければ、購入時にショップや整備工場できっちり整備してもらうと安心・安全に繋がり、結果的に出費を抑えながら乗り続けることができるでしょう。
「過走行車を購入した場合は、販売店だけでなく、できればセカンドオピニオン的に別のお店や整備工場で状態をチェックしてみてもらってください。
安く販売されている中古車にはそれなりの理由がありますので、そこを自分でカバーできるのであれば、過走行車はかなり狙い目だといえます」(中古車店オーナー N氏)
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高年式で低走行の中古車を狙いたいのが本音ですが、予算が足りない場合は過走行車を安く購入し、少しずつリフレッシュしていくというのも良いかもしれません。
ちなみに過走行車でない適度な走行距離の中古車も、消耗パーツを順次交換してリフレッシュしていくことで良好なコンディションを保てるようになるでしょう。