身近な存在の「猫」ですが、エンジンルームに侵入して被害にあったり、路上で事故に巻き込まれるなどのトラブルも多く発生しているといいます。これにはどのような原因があり、未然に防ぐには一体どうすれば良いのでしょうか。
■エンジン始動は要注意! 猫が中にいるかも…
2月22日は「ニャン・ニャン・ニャン」と読めることから、「猫の日」に制定されています。
ペットフード協会が2022年12月に発表した「ペットの飼育頭数調査」によると、2022年に飼育されていた猫の総数は「883万匹」。これは犬の705万匹を大きく上回り、猫はペットを代表する存在といえるでしょう。
しかし、猫が人間にとって身近な存在となった一方で、猫がクルマのエンジンルームに侵入したり、路上で事故に巻き込まれるなどの困った事態も発生しているといいます。
猫がエンジンルームに入り込んだことに気づかずにエンジンを始動してしまうと、猫はもちろんクルマも多大なダメージを受ける可能性があります。
ロードサービスを展開するJAFによると、「クルマから猫の声がする」とロードサービスの要請があった件数は2022年の1年間で2257件、ネコがエンジンルームに入り込んだという救援要請も2023年1月のみで19件あったと発表しており、被害の拡大を防ぐために注意を呼びかけています。
一体どうして猫はエンジンルームに入りこむのでしょうか。
JAFは、猫がエンジンルームに侵入してしまう理由として、猫の習性が挙げられると説明します。
猫は基本的に暖かく狭い場所を好む動物です。駐車しているクルマのエンジンルームはまさに暖かくて狭く、さらに適度な暗さもあり雨風も防げる空間です。加えて駐車場は人の出入りも少ない場所のため、猫のような警戒心の強い動物にとって安心して滞在できる条件が揃っているのです。
では、エンジンルームに猫が入っている可能性がある場合、どのような対策をおこなうと良いのでしょうか。
このような事態を防ぐために有効だとして、近年JAFなどが推奨しているのが「猫バンバン」と呼ばれる対策です。
猫バンバンとは、クルマのエンジンをかける前にボンネットやボディなど猫が潜んでいそうな場所を「バンバン」と叩いて音を立て、中に入り込んでいる猫に出ていってもらう方法を指します。
猫バンバンについて、JAFの担当者は過去の取材に対し以下のように説明しています。
「エンジン始動前にボンネットなどを叩く『猫バンバン』という対策は有効であり、猫をエンジンルームから外に逃がすことが大切です。
しかしけっして万能はなく、あまり強く叩きすぎると驚いた猫がかえって奥に入り込んでしまう可能性もあるため、叩く強さには注意が必要です。
そしてボンネットを優しく叩いた際には耳を澄ませて、もし猫の声や気配を感じた場合にはエンジンをかけずに、エンジンルームの中やボディの下をしっかり確認するとよいでしょう。
ボディを叩いても鳴き声がする場合はまだ猫が潜み込んでいますので、そのときは別の方法で出て行ってもらうことを考える必要があります」
また、猫がエンジンルームに入り込まないようにする対策としては、ハーブを原料とする匂いで猫を遠ざける忌避剤や、猫の苦手な超音波を発する装置など、市販の猫よけグッズもある程度の効果が見込まれます。
あるいは、クルマ用のボディカバーですっぽり車体を覆っておくことで猫の入り込む余地を無くしてしまうという方法もあります。
しかしシャッター付きガレージでもない限り、猫の侵入を完全に阻止することは難しいというのが現実的なようです。
ちなみに、水を入れたキラキラ光るペットボトルを並べることで猫よけにするという人も見られますが、ほとんど効果はないだけでなく、太陽光と水の屈折によるレンズ効果で火災を誘発することもあるため、やめておいたほうが良いでしょう。
■エンジンルーム侵入だけじゃない! 猫の交通事故が多い原因は
また、猫が被害に遭うのはエンジンルームへの侵入のみならず、交通事故に巻き込まれる件数も非常に多いといいます。
環境省が発表している最新の統計調査「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によると、2020年度に負傷を理由に収容された猫の数は「1万788匹」で、負傷した犬の数「621匹」の17倍以上にものぼります(交通事故以外の原因による負傷も含まれます)。
理由としては「野良猫」の存在に加えて、猫は犬と違って放し飼いになっていたり単独で散歩を行うということが挙げられますが、それ以外にも猫の生態に要因があるということです。
猫が事故に遭いやすい理由として、じつは猫には『自分に向かってくるクルマと直面した際に、恐怖で身動きが取れなくなってしまう』という、万が一の非常時に“事故を避けられない生態”があるのです。
高い場所に登ったり逆に飛び降りたりと俊敏なイメージをもつ猫ですが、この習性によって、迫りくるクルマの前では無力であることがわかります。
いたましい事故を防ぐためにも、運転時には周囲をよく見て普段から制限速度を守り、万が一猫が道路に飛び出した際にも無理な急ブレーキや急ハンドルをせず安全に避けられるよう備えましょう。
常に周囲に配慮しながら安全な運転をすることが、猫の命を守ることにも繋がります。
※ ※ ※
猫バンバンも万能ではなく、対策をしても猫の性格によっては出てきてくれないこともあります。
もし気がつかずにエンジンを始動したり走行してしまった場合は、エンジンに悪影響が出る可能性もあるため、気づいた時点で速やかに安全な場所に停車し、ロードサービスやディーラー、近隣の修理工場などに相談しましょう。
悲惨な事態を防ぐには、常に「猫がいるかもしれない」と気を配ることが大切です。今後はクルマに乗る前に「猫バンバン」を実践してみてはいかがでしょうか。