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ホンダの「軽」なぜ「N-BOX」に人気が集中? N-WGNやN-ONEじゃダメ? 格差が生まれた要因は?

くるまのニュース 2023年2月27日 10時10分

ホンダの軽自動車「Nシリーズ」には、販売絶好調の「N-BOX」のほかに「N-WGN」と「N-ONE」があります。しかしN-BOXばかりに人気が集まっているのは、なぜなのでしょうか。

■スライドドアが決め手!? N-BOXが売れまくる理由

 2022年に国内でもっとも多く販売されたクルマはホンダの軽自動車「N-BOX」で、20万台以上が届け出されています。
 
 2位は約16万9000台のトヨタ「ヤリス」ですが、この台数には、コンパクトカーのヤリス(約8万台)、SUVの「ヤリスクロス」(約8万台)、スポーツモデルの「GRヤリス」(少数)が含まれており、一般的にヤリスとヤリスクロスは別の車種ですから登録台数も別々に算出すると、N-BOXは2位に大差を付けて圧倒的な1位になります。

 ちなみに統計上では3位のトヨタ「カローラ」や4位の日産「ノート」もシリーズ合計の数字。そうなると単一ボディの実質的な2位はトヨタ「ルーミー」(約10万9000台)、3位はダイハツ「タント」(約10万8000台)でした。

 国内販売の実質的なベスト3車は、N-BOX、ルーミー、タントで、いずれも全高を1700mm以上に設定したスライドドアを備えるスーパーハイトワゴンです。

 ベストセラーのN-BOXは、2022年に国内で新車として売られたホンダ車の36%を占めました。つまり国内市場では、ホンダ車の3台に1台以上がN-BOXということになります。

 ところがN-BOXと同じホンダの軽自動車でも、「N-WGN」と「N-ONE」は販売が苦戦しています。2022年の届け出台数は、N-WGNが約4万2000台でN-BOXの21%、N-ONEはさらに少なく約1万9000台だったので、N-BOXの9%に留まります。

 N-WGNやN-ONEは売れないのでしょうか。その理由を販売店に尋ねると、次のような回答でした。

「N-WGNは実用的な軽自動車ですが、お客さまの間ではフロントマスクの評判がいま一歩です。ボディ全体を見ても少し地味です。

 N-ONEはスポーツ指向で、クルマ好きのお客さまの間では根強い人気を得ていますが、一般的なモデルではないかもしれません」

 N-BOX、N-WGN、N-ONEの外観を比べると、N-BOXは存在感が圧倒的に強いです。N-WGNはカスタムも含めてフロントマスクが柔和な雰囲気で、インパクトが弱く感じます。

 またN-ONEは、1967年に発売されたホンダ「N360」の外観をモチーフにデザインされました。

 丸型ヘッドランプなどの外観が個性的で、2020年に2代目の現行型へフルモデルチェンジしましたが、外装のスチール製の部分は先代モデルと共通です。外観を変えるとモチーフのN360から離れるため、大きくデザインを変えない全面刷新を行っています。

 この事情は分かりますが、外観をほとんど変えないと、フルモデルチェンジを行ったことも表現できません。

 価格も割高で、電動スライドドアなどを装着しないのに、一番安価な「オリジナル」グレードが159万9400円、ターボエンジンを搭載した「RS」グレードは6速MTも選べますが、価格は199万9800円に達し、N-ONEは一般的なユーザーは選びにくいと感じるのでしょう。

 これほどまでにN-BOXの人気が高まると、同じホンダ車同士ですから、N-WGNやN-ONEはユーザーを奪われることになります。

 N-BOXの人気について、前出の販売店スタッフは次のようにいいます。

「軽自動車を購入するお客さまはスライドドアを希望されることが多いです。そうなると必然的にN-BOXが選ばれ、N-WGNやN-ONEは購入されません。

 また、今のNシリーズの納期はいずれも約6か月ですが、N-BOXは大量に販売できることから見込み発注も積極的に行っています。

 あらかじめ需要を見込んでメーカーへ発注した車両が好みに合えば、3~4か月で納車されるため、急いで買いたいお客さまはN-BOXを選ばれます」

■「N-BOXを買えば間違いない」という認識も

 過去を振り返ると、スライドドアは1990年代の中盤から急速に普及を始めたミニバンに採用されました。そのため今の35歳以下の人は、幼い頃からスライドドアに親しんで育った人も多いです。この世代では、背の高いボディとスライドドアがクルマの基本形になっています。

 そしてこの世代の人達は、現在は子育て中の人が多く、子どもを抱えた状態でクルマに乗り降りするにはスライドドアが便利なため、N-BOXの売れ行きも伸びました。

2022年9月のマイチェンで“迫力顔”に変更された「N-WGN カスタム」

 つまり国内販売の実質的なベスト3車が、先に挙げたN-BOX、ルーミー、タントになり、少し背の低いボディにスライドドアを装着したダイハツ「ムーヴキャンバス」やスズキ「ワゴンRスマイル」が好調に売れる背景にも、今の子育て世代の根強い需要があるのです。

 販売店では「独身のお客さまを含めて、N-BOXに絞って購入される人が増えました。N-WGNやN-ONEと迷うことは少ないです」と述べています。N-BOXがホンダの軽自動車選びのスタンダードになったわけです。

 またN-BOXは、2011年に発売された先代型の売れ行きも絶好調だったことから保有台数が多く、現行型は先代型からの乗り替え需要も視野に入れ、基本路線を踏襲するフルモデルチェンジを行ったため、ますます安定した売れ行きに至っています。

 このようにN-BOXが定着すると「軽自動車はN-BOXを買えば間違いない」「ホンダ車ならN-BOXしかない」という認識も生まれ、売れ行きが一層伸びます。N-WGNやN-ONEは、特別な理由がないと購入されにくいです。

 メーカーも本音をいえば、国内販売のバランスをもう少し整えたいのですが、「N-BOXの好調な売れ行きは止められません。N-WGNはN-BOXに比べて実用燃費が優れ、価格も割安ですが、N-BOXだけが売れてしまうのです」と述べています。

 価格は、前述の通りN-ONEは割高ですが、N-WGNは割安に抑えました。N-WGN・Lでは、LEDヘッドランプはオプションですが、サイド&カーテンエアバッグなどを標準装着して139万9200円です。N-WGNは床が低く、荷室を上下2段に使えます。後席の下には、幅が約1mのワイドなトレイも備わり、傘や靴が収まります。

 N-BOX・Lの価格は157万9600円ですから、N-WGN・Lは、スライドドア以外の装備水準がほぼ同じで約18万円安いです。

 それでも多くのユーザーがN-BOXを選ぶのは、車内の開放感や質感には実用性を超えた魅力があり、定番の選択肢になっているからです。

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