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なぜ意外な場所で「軽自動車」が走っている? 謎ナンバー装着「N-BOXカスタム」が話題に… 海外の日本車事情とは

くるまのニュース 2023年3月7日 16時10分

日本独自の規格となる軽自動車は、基本的に海外市場で新車販売は行われていません。そうしたなかで、タイでは現行N-BOXが目撃され話題となっています。

■タイの道路にN-BOXが!? 現地の中古車輸入事情とは

 ホンダ「N-BOX」がタイの道路を走行する光景や、海外のショーに展示されることがあり、度々話題となっています。
 
 日本独自の規格となる軽自動車は、海外でも人気なのでしょうか。

「微笑みの国」の愛称を持つタイは、世界有数の親日国としても知られています。

 自動車関連について見ると、タイの新車販売における日本車の比率はおよそ90%に及ぶほか、トヨタやホンダ、日産、三菱、いすゞ、スズキなどが工場をかまえるなど、日本の自動車メーカーにとっては非常に重要な存在となっていることがわかります。

 バンコクなどの都市部の道路を見ると、日系自動車メーカーのコンパクトカーやセダン、SUVなどが多く走っていることから、まるで日本の道路のように思えるほどです。

 しかし、日本と決定的に異なるのは、タイには軽自動車が走っていないという点です。

 軽自動車は日本独自の規格であることから当然といえば当然ですが、日本車が多く走る道路のなかに軽自動車を見かけることがないことに、タイを訪れる日本人は少し違和感を覚えるかもしれません。

 一方、タイを旅行していたある男性がSNSにアップした1枚の写真が話題となっています。

 その写真のなかには、タイの道路を走るホンダ「N-BOX」の後ろ姿がはっきりとおさめられていました。

 2017年に発売された2代目の「N-BOX カスタム」と思われるそのクルマは、タイのナンバープレートを装着していることがわかります。

 当然のことながら、タイでN-BOXは正規販売されていません。またタイでは中古車輸入が許可制となっており、商業目的での輸入は事実上禁止されています。

 日系自動車メーカーを含む、多くの自動車メーカーが生産工場を持っているタイでは、国民が自国で生産された新車を購入することが経済促進につながります。

 もし、外国から安価な中古車が多く輸入されてしまうと新車を購入する意欲が薄れてしまうことなどから、大使館で利用されるクルマや博物館での展示を目的としたクルマなどの例外をのぞいて、中古車の商業輸入が厳しく制限されてきました。

 実際には、法の網をすり抜けるかたちで輸入されるクルマも少なくなかったようですが、近年ではタイ政府による違法輸入車の取り締まりが強化されているといいます。

 一方、個人利用に限れば中古車の輸入は可能であることから、今回確認されたN-BOXは、あくまで個人利用目的で輸入されたものである可能性が高いと見られます。

なぜタイの現地ナンバープレートを装着したホンダの現行「N-BOX」が存在するのか?(画像提供:かいっつさん)

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 また過去にはホンダインドネシアにより、同市場で開催されたイベントにN-BOX カスタムの実車が展示されたこともありました。

 その他、軽自働車規格のまま海外される事例としてパキスタン(左側通行・右ハンドル)で現地生産・販売されるスズキ8代目「アルト」が存在しています。

■軽自動車はタイでもウケる? 過去の失敗例とは

 エンジンやボディサイズなど多くの制約があるなかで、高い機能性とオリジナリティのあるデザインを両立させている軽自動車は、海外のユーザーからも高い評価を得ているといいます。

 ただ、軽自動車は日本独自の規格であるため、実際には海外のユーザーニーズを満たすことは簡単ではないようです。

 たとえば、かつてスズキは「アルト」をタイへと輸出していましたが、販売不振により撤退したという過去があります。

 この点について、ある国産自動車メーカーの関係者は次のように話します。

「日本車人気の高いタイですが、軽自動車に対しては、アルトが撤退して以来『安かろう悪かろう』というイメージが根強く、現在でも敬遠される傾向が強いようです。

 そのため、われわれがタイ向けのエコカーを企画した際、軽自動車のサイズではなく5ナンバーサイズを選びました。

 こうした背景から、今回確認されたN-BOXは利便性で選ばれたものではなく、単なる興味本位のユーザーによる個人利用目的の並行輸入ではないかと思われます」

様々な使い方をされるトヨタのピックアップトラック「ハイラックスレボ」

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 タイでは、税制優遇があることに加えて、都市部以外では道路インフラが整っていないことや高速域での走行が多いことなどから、頑丈で衝突安全性に優れたピックアップトラックが高いシェアを誇っています。

 実際、2022年の新車販売台数のうち、およそ60%をピックアップトラックが占めました。

 いかに日本車の比率が高いとはいえ、そのような現状のなかでは、日本の軽自動車が積極的に受け入れられる可能性は低いというのが自動車メーカーの見解のようです。

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