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「走りの本質が見えた?」トヨタ新型「クラウン」雪道でも実感! 四駆が生み出す“負けない走り”とは

くるまのニュース 2023年3月2日 19時10分

トヨタは2022年7月15日に16代目となるトヨタ「クラウン」を世界初公開。4つのモデルがラインナップされました。同年秋には第一弾として「クロスオーバー」が発売されましたが、雪上ではどうなのでしょうか。

■16代目「クラウン」雪上での走りはどう?

 クラウンのDNA「革新の挑戦」を再構築すべく、これまでの固定概念を全て捨てて開発された16代目「クラウン」。
 
 これまでのクラウンの固定概念からの脱却を図っただけでなく、「提案型」の商品として複数のモデルバリエーションが用意されました。
 
 その第一弾となるのがセダンとSUVを融合した「クロスオーバー」となり、今回は北海道にあるトヨタ士別試験場での雪上試乗で、新たに採用された4WDシステムを日常域から非日常領域まで体感してきました。

 クラウン クロスオーバーは、全車ハイブリッドで後輪に独立したモーターを採用した電動AWD(E-Four)仕様ですが、パワートレインにより2つのシステムを用意しています。

 ひとつは2.5リッターエンジンと「THSII(シリーズパラレル式)」を組み合わせたシステムで駆動はE-Fourです。

 E-Fourは、トヨタのハイブリッド車で定番のAWDシステムとなり、路面状況/走行状態に応じて瞬時に後輪へ駆動を行う「アクティブオンデマンド式」となっています。

 もうひとつは、2.4リッターターボエンジンとデュアルブーストハイブリッド(パラレル式)を組み合わせたシステムで、駆動はE-Fourアドバンスです。

 こちらは後輪モーターに小型かつ高出力な「e-Axle(モーター/ギア/インバーターをパッケージしたもの)」を搭載し、常に後輪の駆動を行う「フルタイムAWD(常時AWD)」となっており、連続使用による熱対策のために水冷式の冷却装置を採用しています。

 では、その走りに違いはあるのでしょうか。

 どちらも車両安定制御システム(VSC)をオンにして普通に走行している限り、基本的には共通で、舗装路よりも不安定な低μ路でも挙動を乱すことなく曲がることが可能です。

 もう少し具体的に言うと、コーナー進入時は4WDを感じさせない素直な回頭性、コーナリング中は4WDの安定性を持ちながらFRのように旋回軸がドライバーの近くにある感覚です。

 またリアに荷重をシッカリと乗せながら曲がる旋回姿勢、そしてコーナー脱出時はアクセルをグッと踏み込んだ時は4WDの安定感と、駆動方式の概念が変わるハンドリングは舗装路以上に実感できました。

 この秘密は前後トルク配分を活かした駆動力制御に加えて、四輪操舵(DRS)やアクティブ・コーナリング・アシスト(ACA)の相乗効果によるものですが、どちらも機械に曲げられている感覚はなく、あくまでもドライバーを影で支える黒子のような制御なので、まるで「運転が上手くなった」と錯覚してしまうかもしれません。

 この辺りはトヨタ車に共通する走りの味「Confident(安心)&Natural(自然)」は雪道でも不変です。

 ただ、厳密に比べるとE-FourとE-Fourアドバンスに違いがあります。それは「安心感」と「自在性」でしょう。

■「E-Four」と「E-Fourアドバンス」で異なる走りとは

 E-Fourでは、直進時はFF駆動でクルマが旋回姿勢に入ると4WDに切り替わります。

 その切り替えは瞬時なので舗装路ではほとんど気にならなかったのですが、雪上ではそのわずかなラグが「ちょっと怖いかも」と感じたのも事実です。

 対するE-Fourアドバンスは常時4WDのため、直進から旋回に至るまで常に安心して走ることができました。

 例えるならば、前後が独立した電動4WDながらも、見えないセンターデフで四輪を拘束しているかのような「安心感」と言ったら良いでしょうか。

 これは車両安定制御システム(VSC)をオフにするとより明確に分かります。

「E-Four」と「E-Fourアドバンス」で異なる走りとは

 ちなみにドリフトさせようと思うと実はE-Fourのほうが簡単です。逆を言えば安定した走りをしたくても無駄な挙動が出てしまいます。

 対するE-Fourアドバンスは、ブレーキ/アクセル/ステアリングの操作如何でクルマの姿勢がどうにでもなる…つまり姿勢変化を楽しむ走りも安定した走りも自在です。

 ちなみに意図的にテールスライドさせると、どちらも「お前はGRヤリスか!?」と思うようなゼロカウンターの四輪ドリフトが可能ですが、E-Fourはコーナー途中でリアの蹴り出しが弱くなるようなイメージで最終的にはアンダーステアとなり、「やはりFFベースの四駆だね」と感じてしまう走りです。

 一方、E-Fourアドバンスはアクセル操舵に対してリアの蹴り出しが最後まで変わらないので、どちらかと言うと「君はFRベースの4WDなの?」と思うような姿勢での走りが可能でした。

 この辺りはパワートレインのキャラクターの違い(応答性、レスポンス、パワー感など)や、後輪モーターの連続使用ができる/できないと言うようなハードウェアの差や目指す走りの方向(RS系は走り重視、G系は燃費とのバランスも考慮)の違いがあると思います。

 しかし、今回のような低μ路を走らせた時の「安心・安全」と「懐の深さ」、そして「クルマとの一体感」に関しては、間違いなくE-Fourアドバンスの方に優位性があると感じました。

 ただ、誤解してほしくないのはE-Fourがダメなのではないと言うことで、既存技術を活用しながらも、かなりのレベルに来ているのは間違いないです。

 今回はテストコースだから見えてきたところもありますが、日常域ではほぼ問題ないです。

※ ※ ※

 筆者(山本シンヤ)は、TNGAを初採用した先代(15代目)の基本素性の良さを活かした精度の高いハンドリングを今でも高く評価していますが、16代目は「電動化」と「制御」、そして「四駆」を上手に活用することで、それに負けない走りを実現できています。

 これまでトヨタは四駆に対して消極的でしたが、GRヤリスが登場して以降“攻め”の姿勢ですが、恐らく四駆の“レシピ”を見つけたのでしょう。

 2021年12月に行われたトヨタ「BEV戦略に関する説明会」で、筆者が豊田社長に質問をした時の回答の中に、「四駆のプラットフォームを1つ作れば、制御如何でFFにもFRにもできます。そんな制御を持ってすれば、モリゾウでもどんなサーキット、どんなラリーコースでも安全に速く走ることができる」とコメントがありました。

 今回クラウン・クロスオーバーを低μ路で走らせてみて、「あの時の答えの“本質”が少し理解できたかな?」と思いました。

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