沖縄では、観光客の移動手段の1つであるレンタカーの不足傾向が続いていますが、それがタクシーの売り上げには結び付いていないといいます。これは、なぜなのでしょうか。
■観光客はレンタカーがないとタクシーを使う?
沖縄県では新型コロナ禍による観光客減少に合わせてレンタカーの台数を減らしたため、現在回復しつつある需要に対し貸出車両が慢性的に不足しています。
しかしタクシー業界にとっては、この状況が必ずしも強い「追い風」にはなっていないようです。なぜなのでしょうか。
沖縄県が毎年公表している入域観光客統計概況によると、入域観光客数(沖縄県在住者を除く沖縄県に入域する全ての人数)は2018年度に1000万4300人と過去最高を記録しました。
しかしその後、新型コロナによって沖縄の観光業は大打撃を受けます。
期間の最後に影響が出始めた2019年度は前年度比マイナス5.3%の946万9200人、そして2020年度は前年度比マイナス72.7%の258万3600人で、過去最低まで落ち込みました。
現在は、訪日客に対する水際対策の緩和や全国旅行支援の拡大などにより、2023年1月の1か月では53万2200人となり、増加率が前年同月比で過去最大を記録するなど徐々にその数が回復を見せています。
しかし、観光客の足となるレンタカーは車両を大幅に減らした影響が長引いており、不足が慢性化。例えばトヨタレンタカーの2023年3月の予約は、2月末時点ですべての車種が満車となっている状況です。
そのため、観光需要の回復に合わせてレンタカーの台数も回復させたいところですが、世界的な半導体不足などによる新車の長納期化が足を引っ張ります。
例えばトヨタの場合、公式サイトで「アクア」「ヤリス」が注文から5か月程度、「シエンタ」が「詳しくはお問い合わせください」などと案内している状況です(2023年2月末現在)。
このようにレンタカーの確保が難しいとなると、それに代わる移動手段として挙げられるのが、タクシーです。
■タクシーにとってレンタカー不足は「追い風」にならない
沖縄県内でレンタカーが不足していることは、タクシー事業者にとっては「追い風」になっているかもしれません。実際に売り上げや利用客は増加しているのでしょうか。
実はタクシー事業者にとって、あまり売り上げの増加は感じないと言います。沖縄県のタクシー運転手は、以下のように話します。
「本土からの観光客は徐々に増え始めていますが、とは言えあまり売り上げが増えたとは思いませんね。
実は沖縄のタクシーは地元の利用者が多いんですが、短距離が多いんです。稼ぎ頭としては外国の方の利用に頼っていることがありますが、中国からクルーズ船や飛行機が来ない今では影響が大きいですね」
2023年1月には中国でゼロコロナ政策が実質的に終わったものの、中国と那覇を結ぶ航空7路線は2月末現在もすべて運休中。
観光産業に支えられる沖縄にとって、インバウンド需要の低下による影響は現在も続いているようです。
「あとは、最近では観光客向けのシャトルバスが多く運行されていることもあり、タクシーの出番が少ないのかもしれませんね。
沖縄へ旅行に来る方はリピーターが多く、(タクシーに)空港で乗せても沖縄のことをよく知っているので、県内を周遊するのにタクシーを貸し切りなどで使う方が最近はいないんです」(前出のタクシー運転手)
この運転手によると、実際に空港から各観光地に向かうバス路線が充実しており、タクシーよりも安価なバスを使うケースが多い傾向にあるそうです。
つまり、レンタカーが利用しづらいからといって観光客はタクシーへと流れたわけではなく、また、訪日客数も回復途上であるため、状況は大きく変わっていないようです。
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沖縄でタクシーは、地域の足になるほか、バス路線の少ない地域や、ドアtoドアで移動したい人にとって必要な存在であるといえます。
「5月から中国からのクルーズ船の寄港が再開する」(前出のタクシー運転手)こともあるため、今後、沖縄のタクシーの「追い風」は、レンタカー不足ではなく海外から再び吹いてくるかもしれません。