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どうする!? 他人事ではない「高齢運転者事故」! 解決策は「免許制度厳格化」以外にも? ドライバー自身の意識付けも重要に

くるまのニュース 2023年3月12日 8時10分

高齢化社会が拡大していく日本において、我々は高齢者ドライバー事故の課題についてどのように捉えれば良いのでしょうか。社会全体で考えるべき2つの予防対策について紹介します。

■免許を持つドライバー全体の2割以上は「高齢者」だという実情

 2023年も高齢者ドライバーによる事故報道が続いています。
 
 今後も高齢化社会が拡大していく日本において、この問題に対し我々はどのような意識を持てばよいのでしょうか。

 2023年に入ってから、また高齢ドライバーによる事故の報道が目立ちます。アクセルとブレーキを踏み間違えて店舗内に飛び込んだり、逆走したことによる事故などが後を絶ちません。

 例えば3月1日には、大阪市生野区では71歳男性が運転する乗用車が道路を逆走。かなりのスピードで歩道を飛び越え、病院の施設内に乗り上げて、その際に歩道にいた86歳と76歳の女性が巻き込まれ亡くなりました。

 各種報道によると、運転していた高齢者はくしゃみが出て気が遠くなり、正しい運転ができなかったと警察に話していると言います。

 事故の原因は様々ありますが、高齢ドライバーによる事故が報じられるたびに、ネット上では「国はもっとしっかり対応策を考えるべき」「運転免許制度を改めるべき」、または「交通事故は全ての世代のドライバーによって起こっているのに、メディアは高齢ドライバーの事故を強調し過ぎる」といった厳しい声を数多く目にします。

 そうした中、私たちはこれから、高齢ドライバーに関する様々な課題についてどういった意識を持つべきなのでしょうか。

 まず、当面の間、高齢ドライバーの絶対数が増えていく、という認識が必要です。

 この高齢ドライバー(または高齢者ドライバー)という表現ですが、明確な定義はありません。

 高齢者については、国連が65歳以上と考えを示しており、全人口に占める65歳以上の人口比率を高齢化率という指標で国や地域の社会状況を表しています。

 また、内閣府の調査では高齢者の定義を65歳以上とした場合「高齢者は何歳からといイメージがあるか?」という質問に対して、人によってその認知に違いがあるとの結果が出ています。

 その上で、警察庁の「運転免許統計」令和3年度版によると、運転免許保有者数は全国で約8190万人いることがわかります。このうち65歳以上は約1928万人で、全体の23.5%を占めます。
 
 その内訳は、65歳から69歳が約643万人(7.9%)、70歳から74歳が約675万人(8.2%)、75歳から79歳が約347万人(4.2%)、そして80歳以上が約262万人(3.2%)となります。

 また運転免許保有者数のこれまでの変化ですが、2470万人だった昭和42年を指数100とすると、昭和59年に200を超え、平成12年に300を超えたあたりから伸びは緩やかとなっています。

 こうした運転免許保有者数の変化と各年代での分布から考えて、今後よほど大量の免許の自主返納が行われない限り、または後述する運転技能検査が合格できないケースが一気に増えるなどの状況にならない限り、当面の間、65歳以上の運転免許保有者数は確実に上昇していくことになるでしょう。

 また、女性は男性に比べて、運転免許を取ることが一般的になった時期がかなり遅いという事実があります。

 昭和44年の運転免許保有者における女性比率は17%でしたが、平成9年に40%を超え、令和3年は45.7%に上昇してきました。

 このように女性ドライバーを含め、当面の間、高齢ドライバーの数は増える傾向が続くのです。

 絶対数が増えれば、仮に事故の発生確率が変わらなくても事故件数が増える可能性があることを、世の中全体でしっかり理解する必要があるでしょう。

 では、高齢ドライバーの事故に対する予防対策はどうすれば良いでしょうか。

■「運転免許制度」厳格化だけでは問題は解決できない!

 あくまでも筆者(桃田健史)の私見ですが、高齢ドライバーの事故に対する予防対策には大きく2つあると思います。

 ひとつは、「運転免許制度のさらなる厳格化」。

 もうひとつが「クルマの最新技術や交通システム」を「健康な身体づくりと街づくり」の観点で考える、市町村の地区レベルでの定期的な会合の実施です。

「高齢運転者事故」は運転免許制度の厳格化だけで済ませるのではなく、社会全体として公共交通の問題なども含め総合的に取り組むべきでしょう[画像はイメージです]

 まず1つ目の対策となる運転免許制度ですが、国はこれまでも段階的に、高齢ドライバー対策の内容を引き上げてきました。

 具体的には、平成9年の道路交通法の改正で、平成10年10月1日から75歳以上で運転免許を更新する場合、高齢者講習の受講を義務付けました。平成14年6月1日からは、対象年齢を70歳に変更しています。

 次いで、平成21年6月1日からは、75歳以上で認知機能検査を義務付け。さらに平成29年3月12日からは、高齢化講習の高度化と合理化が行われ、75歳以上で一定の違反歴があり、かつ認知機能検査の結果によっては、実車指導を含めた臨時高齢者講習を義務付けたのです。

 直近では令和3年5月13日から、75歳以上で一定の違反歴があると運転技能検査を義務付けました。

 これは単なる講習ではなく実質的な実地試験なので、合格しないと運転免許が更新できません。だだし、更新期間が来るまで何度でもトライできる仕組みです。

 こうしたこれまでの流れを振り返れば、今後の厳格化の可能性としては、例えば運転技能検査は70歳から、また高齢者講習を65歳にする、といった対象年齢の引き下げが考えられます。

 そうなると、警視庁や道府県警察本部の免許センター、または警察から委託を受けて講習を行う教習所の対応が大変になることが想定されます。

 しかし高齢ドライバーの事故を予防するのは必須であり、システムの合理化を図るなどの対応は求められるでしょう。

 そのほか、現在は対象がサポカーのみとなっている「限定免許」についても、海外事例を改めて参考にした上で、日本にあった形についての協議を進めることを期待したいものです。

 例えば日中のみ、自宅から半径数kmのみ、家族や知人の同乗時のみといった、様々な条件が考えられるでしょう。

※ ※ ※

 高齢ドライバーの事故に対するもうひとつの対応策は、近隣住民と地元自治体との対話の場の拡充です。

 内容は多岐に渡ると考えられます。

 例えば、最新の高度運転支援システムの重要性を紹介したり、路線バス、コミュニティバス、オンデマンドバスなど新しい交通システム、電動車椅子など様々な交通手段の利用方法や利用の実態を報告すること。

 または、新しい交通システム導入の可能性について話し合うことなどが考えられます。

 こうした話の場は、どうしても堅苦しくなりがちです。

 そこで、健康維持のための健康診断、体力測定、健康運動など、運転をするしないは限定せず、特に運転する人は日頃の健康状態をしっかり把握することを心掛けてもらうような工夫を、それぞれの自治体が考えていくことが重要だと筆者は考えます。

 こうした試みをすでに実施している自治体はありますが、高齢ドライバーの視点をもっと多く盛り込んだ内容もあり得るはずです。

 さらに踏み込んで、街づくりの観点でも、地区の道路や建物の実状、危ない交差点の改善方法など、高齢ドライバーに限らず、住民が参加する「移動や生活に係る語らいの場」を設けることで、高齢ドライバーの運転に対する意識が変わるのではないでしょうか。

 いずれにしても高齢ドライバーには、交通参加者としての自覚を改めて高めて頂くことが重要です。

 そして自身の健康や身体の変化について日々しっかりと自覚した上で、交通法規をしっかり守り、周囲の交通や人に対する思いやりを持った、安心安全な運転を心がけて頂きたいと思います。

※編集部注記:2023年3月13日午前10時10分、数値の誤りを一部修正しました。

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