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トヨタ&スバルのガチンコ勝負は2年目! プロと社員が「共に挑む!」 スーパー耐久開幕戦がアツかった!

くるまのニュース 2023年3月30日 12時30分

2023年3月18日-19日にスーパー耐久シリーズ2023第1戦・鈴鹿が開催されました。2022年シリーズから引き続きカーボンニュートラル燃料を用いて共に戦う「GR86」と「SUBARU BRZ」はどのような進化・変化を遂げているのでしょうか。

■さぁ、2023年のスーパー耐久が開幕だ! 注目は3人の社員ドライバー?

 2023年のスーパー耐久シリーズが開幕しました。第1戦は鈴鹿サーキットでの5時間耐久です。
 
 ORC ROOKIE Racingから参戦する28号車「ORC ROOKIE GR86 CNF concept」と、Team SDA Engineeringから参戦する61号車「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」のガチンコバトルは2年目となります。

 マシンは両チーム共にハードは2022年から大きな変更がありませんが、これは昨シーズンの取り組み・進化を検証するためだと言います。

 そして、この結果次第で大幅なハード変更(骨格?)を行なう計画だと言います。

 そういう意味では、2023年シーズンは2022年よりも“開発色”がより強くなるシーズンになると筆者(山本シンヤ)は予想しています。

 そのキーマンとなるのは、プロドライバーと共にステアリングを握る「社員ドライバー」たちです。

 ORC ROOKIE Racingには、2022年の鵜飼龍太氏に代わって加藤恵三氏/佐々木英輔氏の2名。

 Team SDA Engineeringは、2022年からステアリングを握る廣田光一氏に加えて、伊藤和広氏が登録されています。

 彼らのプロフィールを簡単に説明しておきましょう。

 加藤氏は車両監査チームで各車種担当への運動性能の監査・開発支援。

 佐々木氏はGR86車両担当として運動性能の評価・チューニングなどを担当しています。

 二人共にこれらの業務に加えて、社内の上位運転資格指導の手伝いも行なっているそうです。

ORC ROOKIE Racingから参戦する28号車「ORC ROOKIE GR86 CNF concept」

 一方の伊藤氏は、廣田氏と同じく車両運動開発部で操縦性開発を行なうエンジニアで、SUBARU BRZの評価・チューニングを担当。

 SDA(スバル・ドライビング・アカデミー)の第1期生で現在は指導する立場でもあります。

 2022年はS耐のシャシ領域担当エンジニアとしてシーズンを戦ってきました。

Team SDA Engineeringから参戦する61号車「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」

 2023年の開幕戦となる鈴鹿では、どうだったのでしょうか。

 予選タイム(A/Bドライバーの合算)はGR86 CNF conceptが4分37秒678(A加藤恵三:2分19秒706、B大嶋和也:2分17秒968)。

 BRZ CNF conceptが4分39秒587(A廣田光一:2分21秒051、B山内英輝:2分18秒536)GR86 CNF conceptの勝ち。

 更に興味深いのは2022年開幕戦・鈴鹿の予選最速タイムとの差です。

 GR86 CNF conceptは約1.6秒、BRZ CNF conceptは約3秒速くなっています。

 もちろん、これだけではありませんが1年の進化が現れていると言えます。

 そして迎えた2023年開幕戦・鈴鹿の決勝は、序盤にGR86 CNF conceptが先行するも中盤でBRZ CNF conceptが捉えて逆転、そのギャップを1分以上に広げます。

 しかしゴールまで残り40分辺りで最終コーナーでの他車両の大クラッシュで赤旗中断、そのままレースは終了となってしまいました。

 そのため赤旗中断時に前にいたのがBRZ CNF conceptという結果に。それでも2台がトラブルもほぼなく走り続けたことはまさに「ガチンコ勝負」と言える戦いだったと思います。

■社員ドライバーが新たに加わった! それぞれの想いとは

 今回が初陣だった3名の社員ドライバーに感想を聞いてみました。

 まずはGR86 CNF conceptのステアリングを握り、予選で初レースとは思えないタイムを刻んだ加藤氏です。

「レースメカを担当していた時もレース中は熱くなっていましたが、今回はあの時とは違った熱さを感じさせてもらいました。

 本当はもっと冷静に走らなければいけないのですが、やはり愉しさが上回りました。

 更にプロドライバーの凄さは今までもボンヤリはありましたが、ドライバーとして同じ目線で一緒に戦うことで明確に理解できました。

 タイム的にはまずまずだったものの、現時点ではアジャストしていくのが精一杯でした。

 まだまだ間に合っていませんが、この経験を今後に活かしていきたいと思っていますし、シーズンを通じて成長していきたいです」

GR86 CNF conceptのステアリングを握る加藤恵三氏

 続いて、同じくGR86 CNF conceptのステアリングを握った佐々木氏です。

 レースウィークは常に緊張した面持ちでしたが、レース後はホッとした表情で話をしてくれました。

「本格的なレースへの参戦は初めてで、全てが新鮮、そして難しかったです。

 緊張すると汗がどんどん出るのですが、その姿を見た豊田社長から『もう少しリラックスしないと、顔が怖いよ』と言われるほどで(苦笑)。

 評価と言う意味では普段の業務と同じですが、クルマもコースも時々刻々と変わる状況で、性能を目いっぱい引き出し、周りと戦いながらそれを行なう……。

 これまでとは全く違う世界に戸惑いばかりですが、この場にいないとできない経験は常に新鮮です。

 その中から『量産開発に何が必要か?』をこの1年を通じて考えていきたいと思っています」

大嶋和也氏(左)と佐々木英輔氏(右)がピットで談笑する様子

 ちなみにGR86 CNF conceptの開発責任者である藤原裕也氏は、この2人に対してこのように語ってくれました。

「二人とも100点満点の仕事してくれました。

 2022年の鵜飼は元々レース経験がありましたが、二人は経験がないところからスタートです。

 レースの作法をひとつひとつを学びながらの参戦だったので、緊張とストレスの連続だったと思いますが、クルマに慣れてからは色々な会話もできました。

 私自身もですが、今後もプロドライバーとコミュニケーションを取りながら共に成長していきたいと思います。

 マシン的にはプロと社員ドライバーの差が少なくなりつつありますが、まだまだ課題はたくさんあります。

 次は富士24時間ですが『キッチリ完走する』と言う大きなリベンジがありますので、マシンの進化を含めて、果敢にチャレンジします」

■Team SDA Engineeringに新加入の伊藤氏はどうだった?

 そしてTeam SDA Engineeringでは、廣田氏に加えてBRZ CNF conceptのステアリングを握った伊藤氏です。

 本来は開幕戦・鈴鹿の決勝終盤で走る予定でしたが、赤旗中断で決勝デビューはお預けになってしまいました。

「決勝を走れなかったのは残念ですが、こればかりはタイミングなので仕方ないです。

 2022年とは違う立場での参戦になりますが、正直『苦しいけど、楽しい』と言うのが本音です。

 社員ドライバーが私と廣田の2人体制になったことで、車両開発の部分は去年よりも細かく一歩踏み込んだ所まで話ができるようになっていると思います。

 これまでの業務でもサーキット領域での評価はしていますが、レースは混走。

 そんな状況を限界領域で走らせながら、『今、クルマに何が起きているのか?』を感じ取ると言う経験は非常に大きいと感じました。

 ただ、混走と言う意味ではサーキットも一般道も同じですので、通じる所はあるかなと思っています。

 限界域での『引き出し』が増えれば、常用域で更に『余裕』に繋げられると思っています」

井口卓人氏(左)と伊藤和広氏(右)。次戦の富士24時間レースでは伊藤氏のスーツが変わるという

 ちなみにTeam SDA Engineeringの本井雅人監督にも聞いてみました。

「たぶん本人はドキドキだったでしょうが、伊藤がドライバーとして加わったことで、凄くステップアップしたと思います。
 彼は普段から開発のために走っているものの『競い合いながら』となると状況は変わりますが、その中で冷静に走っていたと思います。

 人もクルマも成長していますので、まだまだ進化は止まりません。

 次のアイテムも決めていますので、4月の公式テストを含めて検証して24時間に備えます」

開幕戦・鈴鹿はTeam SDA Engineeringが赤旗中断時に前に居たという結果で幕を閉じた!「いっしょにいいクルマつくろう!」の2年にも期待が高まる!

※ ※ ※

 両チーム共に4月28日に富士スピードウェイで行なわれる公式テストに参加。

 5月28日-29日に開催されるスーパー耐久シリーズ第2戦・富士24時間耐久レースに向けて調整を行ないます。

 2022年の富士24時間レースは、2台共にトラブルに見舞われ「満身創痍」での完走でしたが、2年目は24時間通してトラブルが無いガチンコバトルを期待します。

 そして、マシンの進化はもちろんですが、両チームの社員ドライバーの成長にも注目してほしい所です。

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