首都高に点在するパーキングエリア(PA)のほとんどは簡易的な休憩場所となっていますが、大黒PAなどの一部では花壇が整備されています。なぜ、首都高のPAに花壇が整備されているのでしょうか。
■首都高に「お花畑」がある!? なぜ設置?
全国の高速道路上に点在しているサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)は、クルマを運転するユーザーの休憩場所としてはもちろん、近年では飲食店や商業施設を併設することでSAやPA自体が目的地になるほど設備が充実しています。
東京都市部とその近郊を結ぶ首都高速道路(首都高)にも計20箇所のPAが存在していますが、首都高のPAのほとんどは、ほかの高速道路に設置されているような大規模なものは限られており、わずかな駐車スペースにトイレや自動販売機などが備わった程度の非常に簡易的なものがほとんどです。
そんななか首都高の管理会社では、殺風景になりがちなPAに対してさまざまな取り組みを行っているようです。
そのひとつが、花壇の設置です。
例えば、東京都大田区の1号羽田線平和島PA(上り線)や神奈川県横浜市の神奈川5号大黒線にある大黒PAでは、駐車エリア内に多くの花壇が設置され、PAを訪れるユーザーに癒やしを与えています。
こうした花壇は、東京オリンピック期間の2021年の春頃から、SNS上でもしばしば話題となっています。
では、なぜ首都高の一部のPAに花壇が設置されることになったのでしょうか。首都高速道路株式会社の担当者は次のように説明します。
「PAは、お客さまの疲労感や緊張感を和らげることを目的としています。
ただ、(首都高速は)都市高速であるという性格上、PAが高架上に位置したり狭い敷地に位置していることが多いため、大規模な休憩施設とすることが難しいのが実情です。
そこで、植栽帯やフラワーポットなどを設けることで、少しでもお客さまに快適なドライブが提供できるように工夫をしています」
限られた狭い空間で、いかにドライバーがリラックスできるかを検討した結果、このような花壇の整備が行われているようです。
■首都高「大黒PA」の花壇はちょっと特別? 「ありがとう」の声も
PAに設置されている花壇のなかでも、大黒PAのものは特に規模が大きく、植えられている草花もバラエティに富んでいます。これには理由があるのでしょうか。
首都高速道路株式会社によると、大黒PAの花壇は東京オリンピックの開催など、世界中から訪れる人々を歓迎する目的もあったといいます。
例えば2021年に開催された「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」では、当初は多くの外国人観光・観戦客の来日が予定されていました。
それに備えて、首都高では観光バスなどの休憩ポイントでもある大黒PAに花壇を設置することで、華やかな印象を与えることが目的であったようです。
東京オリンピックはコロナウイルスの感染拡大によって一般客の受け入れは見送られ、外国人観戦客の歓迎という目的はうまく果たせなかったと言えますが、東京オリンピック終了後の現在でも引き続き大黒PAの花壇は整備されており、定期的な花の植え替えが行われているようです。
前出の担当者は次のように話します。
「大黒PAの花壇については、時期に合わせた草花の種類や、維持頻度などの基本的な考え方が決められています。基本的には、年に6回(2か月に1回)の頻度で植え替えをしています。
草花の種類は、6月上旬~7月中旬がインパチェンス/サルビア、7月中旬~9月初旬が日々草(ビンカ)/ベゴニア、10月初旬~12月初旬がカランコエ/マリーゴールド、12月中旬~2月初旬がミニ葉ボタン/パンジー、2月初旬~3月下旬がポリアンサス/ノースポール、4月初旬~5月下旬が金魚草/ペチュニアとなっています」
こうした取り組みは、大黒PAを訪れるユーザーにも好評のようで、SNSなどでは「花壇の花の手入れが行き届いていて、きれいで気持ちがいい場所になっていました」「通路近くの花が綺麗でつい近くに停めてしまった」などのコメントが投稿されているほか、愛車と駐車場付近の花壇をフレームに収めた写真を撮影するユーザーも散見されます。
前出の担当者も「オリンピック期間に限らず、『いつもお花がきれい』『きれいにしてくれてありがとう』など、お客さまからお褒めの言葉をたくさんいただいております」と話しています。
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首都高速では花壇の整備以外にも、PAを利用するユーザーの環境改善に向けたさまざまな取り組みが行われています。
ただ、首都高のPAを利用するユーザーのほとんどがトイレの利用などの一時的な休憩であることから、整備される場所もトイレやその周辺となることが多いようです。