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新東名「自動運転レーン」で事故なら責任は誰に? 24年度に導入で気になる問題

くるまのニュース 2023年4月5日 9時10分

新東名高速道路の一部に「自動運転車用レーン」を2024年度に設置することを政府が明かしました。ではもし自動運転レーンで事故が起きた場合に責任は誰が負うのでしょうか。

■完全自動運転…誰が事故責任を負うの?

 政府は2024年度、新東名高速道路の一部区間に自動運転車用のレーンを設置し、自動運転システムの「レベル4」に対応した自動運転車の実用化を図ることを明らかにしました。
 
 レベル4の自動運転車には運転手がいませんが、万が一交通事故が発生した場合には誰が責任を負うのでしょうか。

 2023年3月31日、経済産業省はデジタル社会の普及に向けた取り組みのひとつとして、2024年度から新東名高速道路の一部に自動運転車用のレーンを設置することを発表しました。

 これは物流産業における人手不足の解消を目指し、深夜時間帯において「自動運転レベル4」に対応したトラックを自動運転車用レーンで走行させるものです。

 経済産業省の「デジタルライフライン全国総合整備計画の検討方針について」という資料では、道路の端に設置されたセンサーなどで他のクルマや落下物などを検知し、道路の状況を自動運転車に情報提供して運転を支援すると公表しています。

 そもそも自動運転レベル4とは、今回の自動運転車用レーンでの走行といったように特定の走行環境条件のもとで、運転者を必要としない完全自動運転ができるレベルのことをいいます。
 何らかの原因で運転が難しくなった場合でも、システムが周囲の状況を判断して自動停止などをすることが可能です。

 この取り組みが成功すれば、ますますクルマの完全自動運転化が進むと予想されますが、万が一自動運転車用レーンで自動運転車が交通事故を起こした場合、事故の責任は誰が負うことになるのでしょうか。

 自動運転レベル4は完全自動運転であるため、本来事故の際に責任を負う運転手などが存在しません。

 そうなるとクルマを所有・管理している会社や、自動運転システムを提供している自動車メーカーなどが事故責任に関係してくると考えられます。

 クルマを所有・管理している会社のように自動車の運行を支配し、その利益を受ける者のことを「運行供用者」といいます。

 国土交通省が公表している「自動運転における損害賠償責任に関する研究会 報告書(概要)」という文書では、自動車損害賠償保障法(自賠法)における運行供用者の責任について、以下のように述べています。

「レベル0~4までの自動車が混在する当面の『過渡期』においては、自動運転においても自動車の所有者、自動車運送事業者等に運行支配及び運行利益を認めることができ、運行供用に係る責任は変わらないこと、迅速な被害者救済のため、運行供用者に責任を負担させる現在の制度の有効性は高いこと等の理由から、従来の運行供用者責任を維持しつつ、保険会社等による自動車メーカー等に対する求償権行使の実効性確保のための仕組みを検討することが適当である。(文章を一部抜粋)」

 つまり、当面の間はこれまで通り自動運転のクルマを所有する会社などが事故責任を負い、加入している自賠責の保険会社が事故の相手方に保険金を支払うことになります。

 ただし、クルマ本体の欠陥や障害により事故が発生したならば自動車メーカー、自動運転システムのソフトウェアの不具合によって事故が起きればソフトウェアメーカーといったように、保険会社が事故の原因となった会社などに負担した金額を請求できる仕組みを作る方向で議論されています。

 また同文書では、自動運転のクルマがハッキングされたことにより事故が起きた場合、クルマの所有者などが必要なセキュリティ対策を怠っていた場合を除き、政府の保障事業で事故の被害者などへの損害補償をすることが適当と明記されています。

 このように運行供用者に責任を問えない事故に関しては政府事業で対応することが想定されます。

※ ※ ※

 2024年度には新東名高速道路の駿河湾沼津から浜松間の約100kmの区間において自動運転車用レーンによる完全自動運転車の運用が始まります。

 事故発生時の責任問題などについては現在も議論されており、引き続き動向を注視していくことが大切といえるでしょう。

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