企業が業務で使用するために用意している「社用車」ですが、なかには従業員が私的に利用しているケースもあるようです。では、こういった社用車の私的利用は、違法行為に該当するのでしょうか。
■「社用車」の私的利用は違法行為?
一般的に、営業や運搬などといった用途で利用されることの多い「社用車」ですが、なかには社用車を従業員が私的に利用しているケースもあるようです。
では、こういった社用車の私的利用は、違法行為に該当するのでしょうか。
社用車とは、個人で所有しているクルマではなく、会社で所有しているクルマの総称であり、特に地方部にある企業などでは、多くの社用車が活躍しています。
社用車の利用方法は企業によってさまざまですが、一般的には営業や運搬などといった用途で利用されています。
一方、なかには社用車を従業員が私的に利用するケースもあるようです。そのような場合、なんらかの法律に違反する可能性はあるのでしょうか。
結論としては、社用車を私的利用する行為そのものが法律違反となることはなさそうです。
ただ、会社が定めている就業規則に違反する可能性が高く、場合によってはなんらかの懲戒処分を受けることになるかもしれません。
ある社会労務士の男性は、社用車の私的利用について、以下のように話します。
「企業によっては、職場規律の維持や公私混同の回避のために、社用車の私的利用を禁じる旨の定めを就業規則に規定しているケースがあります。
この場合、社用車の私的利用は懲戒処分の対象となることがあります」
つまり、社用車の利用が私的なものと判断された場合、戒告や減給、そして最悪の場合、懲戒解雇となる恐れがあります。
一方で、社用車を従業員が私的に利用した場合であっても、第三者を巻き込む事故などのトラブルが発生してしまった場合、会社に責任が問われる可能性があります。
民法第715条には、「使用者等の責任」として、以下のように定められています。
「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、使用者が被用者の選任およびその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない」
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このことから、基本的には従業員による社用車の私的利用で発生した事故の責任は、会社が負う可能性があることがわかります。
さらに、社用車の利用に対して会社側の管理が不完全であったと判断された場合は、従業員が社用車を無断で利用したとしても、会社側に責任義務が問われる場合があるようです。
■社用車はどこまでなら私的利用がOKなの?
企業によっては、社用車の私的利用を福利厚生の一環として許可している場合もあります。
一方、そうでない場合でも、ある程度の私的利用は大目に見られるのが一般的ですが、実際にはどの程度までなら問題ないと判断されるのでしょうか。
社用車を利用するユーザーのなかには、通勤時にも社用車を利用するケースがあります。
実際にSNSでは「通勤は社用車が基本」「社用車通勤めちゃくちゃ楽」などといった社用車で毎日通勤しているというユーザーが多く見られます。
さらにSNSでは「勤めている会社、社用車通勤が半強制なんだけど」と、会社側から社用車での移動を推奨されている場合もあることがうかがえます。
前出の社会労務士によれば、「私的利用の頻度が低く、悪質性の程度も低い場合は、仮に懲戒処分を行ったとしても当該処分が権利濫用にあたり無効と判断されることもあります」といいます。
このことから、業務中の移動時における少しの買い物や、通勤経路を極端に外れない程度の寄り道であれば、ほとんどの場合それほど大きな問題になることはなさそうです。
一方、週末にレジャーや連休の旅行などに繰り返し社用車を利用した場合には、度を越した私的利用として懲戒処分の対象となる可能性が高いようです。
また、その際のガソリン代を会社の経費として精算したり、会社から貸与されているETCカードを利用したりした場合には、業務上横領に問われる可能性もあります。
企業によっては、社用車は事実上「自分のクルマ」となっていることもありますが、社用車に関する就業規則や社内規定をよく理解し、ルールの範囲内で利用するようにしましょう。
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ちなみに、社用車に使用されているクルマはさまざまですが、なかにはレクサスやメルセデス・ベンツなどの高級車を採用している会社もあります。
なかには、自動車に関連する事業を営む会社が、営業活動の目的で社用車とする場合には、スーパーカーも採用も認められるケースがあります。
いずれにせよ、社用車は企業のモノであるため「自分のクルマ」ではないという認識を持つことが重要です。