道路トンネルの入口(坑門)のほとんどは垂直ですが、特に高速道路では斜めにカットされたようなタイプが見受けられます。この「斜め」にはどのような意図があるのでしょうか。
■圧迫感を抑えて渋滞予防
道路を走っていると、トンネルを通過することがあります。トンネルの入口というと、その大半は切り口が垂直ですが、なかには「斜め」もあります。なぜ「斜めカット」になっているのでしょうか。
斜めカットの道路トンネルは、竹を割ったような形であることから「竹割式坑門」と呼ばれており、特に高速道路で多く見受けられます。
竹割式坑門を採用する理由は、主に進入時の圧迫感を軽減するためです。
入口が従来の垂直タイプだと、ドライバーは圧迫されているような感覚になります。この圧迫感は、トンネルに入ってからではなく入る直前から感じるため、トンネルの入口を広く見せることで、少しでもトンネルによる圧迫感を抑えているのです。
特に高速道路は走行速度が速いため、感じる圧迫感は一般道と比べると大きいでしょう。そのため、竹割式坑門は高速道路でよく採用されます。
トンネルの入口は、地形や景観、施工性、維持管理のしやすさなど、様々な要素を組み合わせて最適な形状が決められます。そのため、圧迫感を軽減するためだけで採用されるわけではありませんが、大きな理由の1つでもあります。
竹割式坑門は、ドライバーの圧迫感を軽減する効果がありますが、これによって渋滞を抑制する効果も期待できます。
トンネルは元々、高速道路の渋滞のボトルネックとして認識されることが多い場所です。トンネルで渋滞が発生する理由は、ドライバーの無意識な速度低下にあります。
先述の通り、トンネルに差し掛かるとドライバーは圧迫感を覚えます。そうすると無意識のうちにアクセルを緩めて速度を落としてしまうのです。そのため圧迫感が減ると無意識の速度低下も抑制でき、渋滞の抑制につながります。
■新しい高速道路で多く採用
では、入口が竹割式坑門のトンネルの場合、出口はどうなっているのでしょうか。
結論から言うと、出口の形状は入口と同じ場合もあれば違う場合もあります。これは地形によって異なります。
例えば、山の形状が竹割式坑門に合っていた場合、出口も竹割式坑門で建設されることがあります。また、上り線と下り線が横並びで隣り合っている場合だと、景観を合わせるためにどちらも竹割式坑門にする場合もあるでしょう。一方で、山の形状上竹割式坑門のメリットがなく、上り線と下り線が離れている場合は入口と出口の形状が異なる場合があります。
トンネル入口の種類は、竹割式坑門以外にも多くあります。トンネルの入口(坑門)は、大きく分けて「面壁型」と「突出型」の2種類があり、竹割式坑門は、突出型の形状の1つです。
面壁型と突出型には、それぞれ次のような形状があります。地形や気象条件によってメリット・デメリットがあり、それらを踏まえて坑門を建設するかが決められます。
●面壁型
・重力式
・半重力式
・ウイング式
・アーチウイング式
●突出型
・突出式
・半突出式
・竹割式
・逆竹割式
竹割式坑門は、昔からありそうですが、採用が活発化したのは新東名高速の建設が始った頃からです。新東名はトンネルが多く、御殿場JCT~三ヶ日JCT間162kmを見ると、全体の26%がトンネルです。
先述したドライバー心理の研究が進んだこともあり、トンネルが多い新東名は竹割式坑門が採用されるようになったのです。
竹割式坑門は、それ以降、高速道路でよく採用されている形状です。ドライブの際は、トンネル入口の形状を意識して運転すると新たな発見があるかもしれません。