Infoseek 楽天

もはや懐かしい! “高級車”の象徴「フードマスコット」なぜなくなった!? ちゃんとした”機能部品”だったってホント?

くるまのニュース 2023年5月27日 18時10分

高級セダンなどで、ボンネットの前方中央部分につける「フードマスコット」が採用されていました。2023年現在新車で採用されているクルマはほとんどなくなってしまいましたが、このフードマスコットはどのような起源を持つ装備で、なぜなくなってしまったのでしょうか。

■高級感あるフードマスコット、なぜなくなった?

 かつて多くの高級セダンなどでは、ボンネットの前方中央部分につける「フードマスコット」「フードオーナメント」「ボンネットマスコット」などと呼ばれる“飾り”(以下フードマスコット)が採用されていました。

 多くの場合は、メーカーや車種を示すエンブレムの形状で、良く目立ようにメッキ装飾としていました。

 しかし、いつの間にか高級車でも設定のないクルマが増えてしまい、すっかり“懐かしの装備”の部類になってしまいました。

 ボンネットの先端に取り付けられた、立体的な装飾品をフードマスコットと呼びます。

 メーカーや車名にちなんだキャラクター、メーカーを象徴するマークなどのさまざまな形状のものがあります。

 取り付け位置と相まって、フードマスコットを装着しているクルマのみならず、フードマスコット自体も、非常に目立つ存在です。

 また、フードマスコットが装着されているだけで高級車をイメージする人も多いかもしれません。ところが、近年では装着しなくなる高級車も増えています。

 もはやクルマのパーツの中では、やや“懐かしい”装備の部類になってしまっています。

 なお、フードマスコットに似たものとして、平面的にフードに取り付けられたフードエンブレムもありますが、今回は立体的なフードマスコットを取り扱います。

 フードマスコットの起源は、ドライバーがラジエターの冷却水温度を確認するための、ラジエーターと一体となった棒状の部品であったとの説があります。

 メーターにエンジン水温計が装着されなかった時代に、ドライバーがエンジンフードを開けなくてもエンジン温度を調べるための機能部品だったのです。電気回路がわずかしかなかった時代にもクルマはありましたから、十分信用できる説です。

 この説が正しければ、フードマスコットは、機能部品だったこの棒をデザインし、クルマを飾る部品となっていったのでしょう。

 また、クルマのスタイルには常に流行があります。1950年代初め頃までの、特にアメリカのクルマは、エンジンの全高が高く、エンジンを収めるエンジンフードの中央部分が盛り上がっていました。

 そこに丸形のヘッドライトを左右に装着するのですから、クルマを前から見るとエンジンフードの左右と中央3か所の盛り上がり部分が見えます。

 その中央部分が単なるフードパネルだと、デザイン的にまとまりが良くなかったのでしょう。そのためフードマスコットを装着し、デザイン上も引き締まるようにしていたと考えられます。

 1960年代になってくると、エンジンフードとフロンドフェンダーの段差がなくなり、上面を平らにしたフラットデッキスタイルが流行ります。

 この頃になってくると、デザイン上でもフードマスコットの必要性が薄れたためか、装着しなくなるクルマも増えていきました。

■フードマスコットはなぜ姿を消してしまった?

 国産車では限られた車種しかフードマスコットを装着しませんでした。

 高級車の代表格である「クラウン」は、1955年発売の初代モデルがDXグレードに装着した後、次の1962年2代目では廃止され、以後トヨタの他車を含めて装着されていません。

国産車では日産「シーマ」などにフードマスコットが設定されていた

 一方、日産車は1960年登場の初代「セドリック」がメッキモールを装着したものの、フードマスコットと呼ぶにはシンプルな形状です。ただし、次のモデルではモールは廃止されています。

 また、日産と合併後ではあるもののプリンス色が強かった1967年発売の「グロリア」は、フードマスコットを装着していました。

 以後しばらくの間フードマスコットは装着されませんでしたが、1979年登場の430型セドリック/グロリアでフードマスコットが装着されました。

 ただしブロアムなどのフォーマル系上級モデルが中心で、SGLやグランツーリスモなどのスポーティ系グレードには装着されていません。

 このフードマスコットは好評だったからか、1984年発売型の「ローレル」も装着され、セドリック/グロリア/ローレルとも、モデル廃止まで装着されていました。

 他のメーカーでも、採用された時期はおおむね同様です。

 マツダは1981年にフルモデルチェンジされた「ルーチェ」に装着しましたが、次のモデルでは廃止されてしまい、以後装着車はありません。

 三菱はやや異例で、他車よりも早い時期の1976年発売の「ギャラン ラムダ」に採用し、1986年には「ギャラン/エテルナ」の一部グレードと「デボネア」に装着しています。

 ただし、ギャラン系は1987年からキャラクターをスポーティなものに変更したため装着しなくなり、デボネアと後継の「プラウディア」と「ディグニティ」のみになりました。

 国産車では2000年前後までにほとんどその姿を消してしまったフードマスコット。なぜその姿を消してしまったのでしょうか。

 フードマスコットは、エンジンフードの先端にあります。もしクルマが歩行者と接触するなど事故になってしまった際、フードマスコットは歩行者に対して著しい影響を与えてしまいます。

 世界的に安全性に対する議論が高まった2001年6月、自動車の国際基準調和の一環として保安基準が改正され、「外装の技術基準」が導入されました。

 いわゆる外部突起に関する規制です。この法令は猶予期間があり、新車には2009年1月から適用されました。

 もちろん、フードマスコットもこの規制の対象です。規制をクリアするためには、既定の強さの衝撃が加わるとフードマスコットが倒れるなどして、歩行者を傷つけないようにする必要がありました。

 一部の高級車では、規制の前からこのような構造に変更したクルマもありました。しかし、対策をしてまでフードマスコットを装着し続ける車種は少なくなり、減少していきました。

※ ※ ※

 ほとんどフードマスコットの採用がなくなってしまった一方、英国の超高級車ブランド「ロールスロイス」と「ベントレー」は電子制御格納式のフードマスコットへと進化し、引き続き採用しています。

 限られた存在とはなってしまいましたが、今もフードマスコットを採用し続けるクルマもあるのです。

この記事の関連ニュース