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なぜクルマの「棒アンテナ」見かけない? かつての定番アイテムに変化アリ… 存在感薄くなった理由とは

くるまのニュース 2023年4月21日 9時10分

かつてクルマでラジオを聴くためには、屋根にある棒状の金属アンテナを手で伸ばしたりしましたが、最近はあまり意識することすらなくなりました。イマドキのアンテナはどうなっているのでしょうか。

■電動で伸びる「金属アンテナ」がステータスだった時代も

 以前は金属棒を手で伸ばすタイプが主流だったカーアンテナですが、近年は、20センチ程度のポールアンテナや、サメの背びれのような形のシャークフィンといったタイプが主流となっています。
 
 また見た目だけではなく、その役割も変わってきているといいます。

 1950年代、最初に登場したアンテナは、ラジオを聴くためにありました。当時は、1メートル弱の細い棒状の金属製アンテナを、釣り竿のように伸ばして使う「ロッドアンテナ」型でした。

 運転席に座ったまま伸縮できるよう、Aピラー(フロントガラスを支える柱)部分に格納できるタイプが主流でしたが、なかには、フロントフェンダーやリアフェンダー、ルーフなどに装備されていたクルマもありました。

 1970年頃になると、高級車向け仕様として、アンテナが自動で伸縮する「オート(電動)アンテナ」が登場。当時、オートアンテナは高級車の証でした。

 このロッドタイプには、走行風でアンテナがしなってスムーズに伸縮できなくなったり、格納し忘れて駐車場などで引っかけて折れることがあるという弱点がありますが、受信感度が高く安価であるため、現在でも、商用バンやトラックなどのコスト重視のクルマには採用されています。

 1990年代には、フロントウィンドウやリアウィンドウに貼り付ける「フィルムアンテナ」が登場しました。

 透明のフィルムに針金状の細いアンテナ線を組み込んだフィルムアンテナは、ボディのデザインに影響を与えないとして理想的とされましたが、ロッドタイプと比べてラジオの受信感度が低く、しかも高価だったため、普及には至りませんでした。

 ただ現在でもフィルムアンテナは残っており、主に地デジTVの電波受信用として活用されています。

 2000年に入ると「コンパクトポールアンテナ」が登場。長さは20センチ程度、コイル状のアンテナを黒などの樹脂製のカバーでおおった短いアンテナ棒です。

 可倒式が主流で取り外し可能なタイプもあり、伸縮はできません。アンテナ本体は短いものの、コイル状のアンテナの感度が高く、ロッドタイプと同等の性能をもっています。

 シンプルで安価なため、現在は軽自動車やコンパクトカーで主流となっています。

 そして現在、最も主流となっているのが、「シャークフィンアンテナ」や「ドルフィンアンテナ」とよばれるアンテナです。

 現在は、SUV系やセダン系のほとんどで採用されており、軽自動車の一部でも採用されるようになりました。

 世界で初採用したのは2001年デビューのBMW「7シリーズ」で、日本車メーカーの中では2005年のレクサス「IS」が初の採用車でした。

 ラジオの受信だけではなく、テレマティクスサービス用の通信や、ナビゲーションのGPS、リモンコンキーなど、様々な無線の送受信を行うという、多機能なインテリジェントアンテナとなっています。

 日産のバッテリーEV「アリア」では、このシャークフィンアンテナを2つ装備。高度な運転支援技術「プロパイロット2.0」を動かすため、準天頂衛星の情報を取得する目的で必要となるようです。

 シャークフィンアンテナのよさは、多機能性に加えて、スタイリッシュなデザイン性です。

 ただ、ポールタイプとフィルムタイプの中間くらいのコストがかかるので、全メーカーが採用することは考えにくく、今後も廉価なロッドタイプとシャークフィンアンテナが共存していくものと予想されます。

 ただ将来的には、こうしたアンテナ本体すらエクステリアから消え去っていくかもしれませんね。

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