スタッドレスタイヤは、使わない期間の保管方法によっては、次のシーズンに使えなくなってしまうことがあります。スタッドレスタイヤの寿命を縮める、NGな保管方法とはどのようなものなのでしょうか。
■次のシーズンまで正しく保管する方法とは?
季節はすっかり春になり、冬に使っていたスタッドレスタイヤをノーマルタイヤに履き替えた人がほとんどでしょう。
タイヤは外した後の置き場に困るものですが、きちんと保管しておかないと寿命が短くなってしまうのです。とくにスタッドレスタイヤは、上手に保管すれば3シーズン程度は問題なく使えるといわれています。
寿命を短くするNGな保管方法とはどのようなものなのでしょうか。
タイヤは、エンジンやモーターから生み出された駆動力を直接路面に伝える接点として非常に重要な役目を担っており、どんなにハイパワーなエンジンを搭載していても、タイヤが劣化や破損しているとその性能を十分に引き出せません。
しかし重要なパーツでありながら乗るたびにすり減り、また乗らなくても時間の経過とともに劣化してしまう消耗品です。しかもボディのように塗装面などで保護されているわけでもなく、無防備状態に近い状態なのです。
使っていない間のタイヤの保管について神奈川県のH整備士に聞いてみました。
「どんなパーツでもそうですが、清掃してから保管するほうが状態の確認もしやすいです。とくにスタッドレスタイヤは砂や泥、油分などが付着しているだけでなく、雪道などを走行したままだと『融雪剤』が付着した状態の可能性もあります。
またタイヤワックスなどの保護剤も古くなるとタイヤの劣化を進める可能性があるので塗る必要はありません」
保管するタイヤの清掃は水洗いが基本です。洗剤を使ったほうがキレイになる気がしますが、保護剤同様に、洗い残しがゴムに悪影響をおよぼす可能性があるのでNG。水洗いしてしっかり乾かしてから保管するのが正解ということです。
タイヤを保管するにあたって、もうひとつ注意しておきたいのが空気圧です。装着して走行しているときは、空気圧不足が偏摩耗やクラック(ひび割れ)の原因になりますが、保管の場合は空気圧が高い状態は良くないそうです。
「タイヤを装着しているときは、車体の重量などを支えるため規定の空気圧で内圧を高めて状態を保持します。しかしこの内圧が保管するときにはゴムへの負担を増やしてしまう可能性もあります。
とはいえ全部の空気を抜く必要はなく、適正値から少し下げておくことでゴムへの負担を軽減し、ひび割れや変形を抑制する効果が期待できます」(H整備士)
また、保管していたタイヤを装着したあとは、必ず空気を入れましょう。空気圧が下がった状態で走行するとバーストする可能性があり危険です。
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ボディのみならずタイヤにとっても直射日光に含まれる紫外線は大敵です。紫外線にさらされたタイヤは劣化が進んでしまいます。
ベランダなどでタイヤを保管している人も見かけますが、むき出しの状態はNGです。直射日光が当たらない場所に保管するか、カバーなどで日光を遮るようにしておきましょう。
■横置き・縦置き どっちが良い?
取り外したタイヤを積み重ねて保管する人も多いと思いますが、横置きと縦置きはどちらが正しいのでしょうか。
「空気圧はやや下げて保管するといいましたが、これはホイールが付いた状態での話です。
ホイールを組み込んだ状態で保管する場合は、空気を少し抜いて横置きにしてタイヤを積み重ねるのが良いでしょう。
逆に、ホイール付きのタイヤを立てて保管すると、ホイールの重さが接地する面にかかり、変形してしまう可能性があるので、縦置きで保管しないでください」(H整備士)
「一方で、ホイールから取り外してスタッドレスタイヤのみの状態で保管する場合は、縦置きの状態で保管するのがベターです。
タイヤのみの状態で横置き(平積み)すると、タイヤ同士のサイドウォール部分が接触している状態になります。トレッド面の強度は高いのですが、サイドウォールはそれほど強度がないため、一番下のタイヤに負荷が多くかかってしまい、変形の原因になります」(H整備士)
ホイール付きの場合は横置き、タイヤのみの場合は縦置きにすることを覚えておきましょう。
また、ゴムを主成分とするタイヤは、劣化によって色落ちや(路面に)色移りすることもあり、ダンボールや使わなくなった毛布などを敷いてから保管することをおすすめします。
加えて、ホイール付きの場合は湿度によってはサビが発生するので、高温多湿になりがちなエアコンの室外機の側などで保管するのは避けたほうが良いでしょう。
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必ずしもタイヤを安定的に保管できる場所があるとは限りません。なるべく「風通しのいい暗所で、空気圧を減らして横置き(ホイール付の場合)」に近い状態で保管したいものです。