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ガソスタで「水抜き剤入れますか?」もう聞かれない? 給油時の定番セリフが聞かれなくなったワケとは

くるまのニュース 2023年5月8日 9時10分

かつてはガソリンスタンドでの定番セリフだった「水抜き剤入れますか」という会話ですが、最近では勧められることは減っているようです。なぜ勧められることが減っているのでしょうか。また水抜き剤とはどのようなものなのでしょうか。

■最近はあまり見かけないけど…水抜き剤って何?

 かつてガソリンスタンドでよく勧められた「水抜き剤」ですが、セルフスタンドが増えたこともあり、見かける機会が減りました。
 
 そもそも、水抜き剤とは一体どのようなものでしょうか。また、必ずクルマに必要なのでしょうか。

かつての定番セリフ「水抜き剤入れますか?」 なぜ聞かなくなった?

 ガソリンスタンドで給油する際に、店員さんから「水抜き剤も補充しましょうか」と勧められた人は多いかもしれません。

 ところが最近では、こうした場面が減ってきました。SNSでも「一度も言われたことがないけど…」という声も見られます。

 そういった背景を受けて、水抜き剤についてそもそもよく知らないという人も多いことが予想されます。

 それでは、水抜き剤とはいったいどのようなものでしょうか。水抜き剤とは、燃料タンク内に溜まった水を除去するために使用するメンテナンス剤です。

 燃料タンクに給油する際に、燃料と一緒に空気がタンクに入り、気温が下がったときにその空気中の水分が結露することがあります。そして水は燃料より重いため、タンクの底に溜まります。

 さらに、燃料タンクは鉄製であるため、水が溜まった壁面にはサビが発生します。

 サビは燃料がエンジンに運ばれるときにろ過されますが、水はそのままエンジンに運ばれてしまいます。

 燃料タンクに水が溜まってしまった場合、エンジンがかかりにくくなったり、燃焼不良によりノッキングなどを引き起こすこともあります。

 ちなみにノッキングとは、アクセルペダルを踏み急加速した際にエンジンから「カラカラ」といったような異音が発生する現象のことをいいます。

 水抜き剤は、こうした燃料タンクに溜まった水を除去するために使用します。主成分であるイソプロピルアルコールが、水と燃料の油分を混ぜ乳化する働きをします。

 水抜き剤を燃料タンクに入れると、水と燃料が混ざり合い、そうした燃料をエンジンに送って燃やすことで水を除去するという仕組みなのです。

 ところが最近では、水抜き剤の販売数が減ってきています。

 実際に、ガソリンスタンドの販売現場でも、水抜き剤は必要ないというユーザーの反応が広まっており、現在では積極的に水抜き剤を勧めることは減っているようです。

 首都圏のガソリンスタンドで働いているスタッフは、水抜き剤の声かけについて以下のように話します。

「数年前までは、ガソリンスタンドの業務上、必ずスタッフが水抜き剤を勧めていました。

 しかし最近ではクルマやガソリンスタンドの進化によって、水抜き剤を勧める必要がなくなっているため、現在では水抜き剤を勧めるようなアナウンスは行っておりません」

 また、水抜き剤の販売数自体も減少しており、現在では購入する人はほとんどいないといいます。

 その理由のひとつとしては、多くのクルマで燃料タンクの素材がサビにくい樹脂に切り替わっている点があげられます。金属製のタンクでも、防錆処理を施しているものがほとんどです。

 そのため、燃料タンクでサビが発生する可能性が減っているのです。さすがにエンジンをかけずにクルマを放置すれば別ですが、定期的に水抜き剤を使用しなければならないわけではなく、以前に比べると必要性は下がっています。

■最近のクルマなら水抜き剤は不要?販売減の要因にセルフスタンドの影響も

 また、こうした水抜き剤減少の理由のひとつには、セルフ式スタンドの普及が進んでいるといった背景も考えられます。

 日本エネルギー経済研究所の調査によると、2022年3月末時点で、全国にセルフ式スタンドは1万608か所あり、2021年3月末に比べると141か所多くなっています。

 こうしたガソリンスタンドのセルフ化は全国で年々続いており、現在のセルフ化率は 37.3%に達しています。県別にみると、神奈川県と埼玉県では50%以上にのぼります。

 さらに、セルフ式スタンドのみならず、多くのガソリンスタンドが用品販売よりも会員カードの加入促進に力を入れるようになりました。その結果、ドライバーが水抜き剤に接する機会はますます減っています。

給油時に外の空気がタンク内に入り込むことで水分が発生する

 では、もう水抜き剤を使用する必要はないのでしょうか。

 燃料タンクについていえば、従来の金属製タンクを搭載したクルマには水抜き剤でのメンテナンスが有効で、1980年代以前のクルマの多くが該当するため、定期的に使用してタンク内の水を取り除くようにすると効果的です。

 また、金属製タンクでなくてもタンク内に入った水を抜く効果はあるため、湿気の多い梅雨、冬が終わって昼と夜の寒暖差で結露が発生する時期に使うと一定の効果は見込めます。

 なお、水抜き剤は基本的にはガソリンを入れる際に1本使用します。効果を高めたいからと何本も使ってしまうと、水抜き剤自体がエンジンに不具合を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。

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