速いスピードで走行する自転車を見かけることがありますが、自転車には法定速度ないことから違反にならないケースがあるといいます。これは一体どういうことなのでしょうか。
■「自転車は速度無制限で走って良い」ウワサの真相は?
街の交通を見ていると、自転車がスピードを出して走っている光景を見かけます。
クルマや50cc以下の原動機付自転車には「法定速度」がある一方、自転車にはありません。
一体なぜなのでしょうか。
街では多くの自転車が行き来しており、なかには非常に速いスピードで走行している人もいます。
特に下り坂を走るケースや、走行性能の高い自転車に乗っているケースなどではスピードが出やすく、クルマや人と接触しそうになりヒヤッとする場面が見られることもあります。
クルマや50cc以下の原動機付自転車には法定速度があるのに対し、自転車にはそれがなく、「自転車は速度無制限で走って良い」と考えている人も多く存在します。
では、なぜ自転車にはクルマや原動機付自転車のような法定速度がないのでしょうか。
乗り物の最高速度については道路交通法に規定されており、道路交通法第22条第1項の条文では「車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。」としています。
道路交通法における「車両」とは「自動車、原動機付自転車、軽車両およびトロリーバス」のことで、軽車両である自転車も「車両」に含まれます。そのため、最高速度を示す道路標識がある場所では、自転車もクルマと同じように速度を守って走らなければいけません。
もし自転車で速度違反をした場合には、赤切符で警察に検挙される可能性も考えられます。自転車はどこでも速度無制限で走れるわけではない、ということに注意しましょう。
また、前述の条文にある「政令で定める最高速度」とは、道路交通法施行令で規定された速度のことであり、一般道路の場合、クルマは時速60km、原動機付自転車は時速30kmという最高速度の制限があります。
しかし軽車両に関しては道路交通法施行令に決まりがないため、道路標識で最高速度が指定されていない場所では自転車に速度制限はありません。
このように道路交通法施行令の規定がないことから、「自転車は速度無制限で走っても良い」という認識が広まったのです。
自転車に法定速度がないのは、クルマなどと違って人力で動かす乗り物であり、性能上出せる速度にもある程度の限界があること、車体がクルマや原動機付自転車よりも軽いため、事故が起きたときの被害が少ない傾向にあるなどの理由によるものとみられます。
とはいえ、道路標識のない一般道路を猛スピードで走ることは大変危険です。
ロードバイクやクロスバイクのような比較的性能の高い自転車であれば、道路状況によって時速30km~40km程度のスピードが出ることもあり、交差点などで歩行者と思い切り接触した場合、歩行者が大怪我をしたり、最悪亡くなってしまうケースも想定されます。
過去には、マウンテンバイクを運転していた男子小学生が坂道を時速20km~30km程度で爆走したうえ、散歩中の女性と正面衝突する事故が発生しています。
この事故で女性は意識不明の状態となり、その後男子小学生側に9521万円もの損害賠償が命じられました。スピードの出し過ぎによって重大な事故につながるおそれがあることに留意しておきましょう。
さらに道路交通法第70条では「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」と明記されているため、場合によっては「安全運転義務違反」に該当する可能性もあるのです。
自転車を運転する際は、原則車道の左側を走ることや信号に従うこと、また一時停止のある交差点では必ず止まって安全確認をするなど、基本的なルールを徹底することが大切といえるでしょう。
また歩道を猛スピードで走ったり、逆走したりする自転車も散見されますが、自転車が走行可能な歩道であっても、車道寄りの部分を走る、歩行者の通行を妨げる場合は一時停止するなど、歩行者優先を意識する必要があります。
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道路標識で最高速度が示されている道路では、自転車も速度を守らなければいけません。
たとえ道路標識がない場合でも、事故を起こさないために交通ルールを守り、安全な速度で走ることを心がけましょう。