カーナビゲーションの地図表示には、北方向を上向きに表示する「ノースアップ」と、進行方向を上向きに表示する「ヘディングアップ」があります。それぞれのメリット・デメリットはどのようなところにあるのでしょうか。
■「ノースアップ」vs「ヘディングアップ」
初めて行く場所へ道案内してくれる「カーナビゲーション」は、今ではなくてはならない装備となっています。
そんなカーナビゲーションの地図の表示方法として、北方向を上向きに表示する「ノースアップ」と、進行方向を上向きに表示する「ヘディングアップ(ヘッドアップ)」があるのですが、それぞれはまるで別物といえ、一長一短ありそうです。
ナビゲーション機能を利用する場面はクルマに限った話ではなく、スマートフォンのナビアプリを利用して、徒歩や公共交通機関での移動経路を検索する人も増えています。
スマホなどは手元で見ながら使用することもあり、多くの人がヘディングアップを使っているようですが、江戸川大学の林准教授が2015年にまとめた論文「地図リテラシーと情報リテラシーの相関」によると、大学生114名を対象にした地図の読み方について、全体の8割以上が「地図を自分の進行方向に回したほうが使いやすい」と回答。
ヘディングアップのほうが使いやすいと感じる人が大多数でした。
一方で、地図の上が北になるノースアップを好む人がいるのも事実。ノースアップとヘディングアップのメリット・デメリットは、どのようなことがあるのでしょうか。
現在主流のヘディングアップの最大のメリットは一目で進行方向が分かることです。またルート案内を利用すれば、どの交差点でどちらに曲がれば良いのかも教えてくれます。
その反面、曲がりくねった道では地図全体が右往左往するため、人によっては画面の動きが煩わしく感じるかもしれません。
また道路全体の流れを把握しにくく、方向感覚が狂いやすくなる可能性もあるほか、自分でルートを考えることなくナビ通りにしか進行できなくなってしまう傾向になりやすいようです。
一方でノースアップのメリット・デメリットは、その逆とも言えます。どちらの方角に向かって走っているかは把握しやすいのですが、曲がるべき方向を瞬時に判断しにくいことがあります。
このノースアップ愛用者は、昔から紙の地図を使っているなど「地図リテラシー」の高い人が多く、地図感覚でナビ画面を見ているため、ノースアップのほうが現在地を理解しやすいようです。
カーナビが普及する前はクルマのなかに地図を常備しており、道に迷うと地図でルートを確認していたものです。
そういった地図を読む能力が高い人にとっては、カーナビのノースアップ画面を地図と似たような感覚で捉えることができるというわけです。
■北を上にする必要ある? ヘディングアップ派の意見とは
ヘディングアップ派とノースアップ派の人は、どのように感じているのでしょうか。まずはヘディングアップしか使用したことがないAさん(20代・女性)に話を聞いてみました。
「学生時代からスマホのナビアプリを使っていた関係で、カーナビでもヘディングアップ以外は使ったことがありません。
私たちの世代は紙の地図を使った経験があまりなく、何もわざわざノースアップにするメリットがわからないのです」
これはもっともな話で、技術の進歩によって便利な機能があるのに、慣れないノースアップに切り替える必要性を感じないのは当然です。
今どこにいて、どの道に進もうとしているかが把握できれば良く、北がどっちにあろうが問題にならないということです。
一方で、少数派のノースアップを使っているH氏(50代・男性)は、カーナビの使い過ぎを危惧している世代。ある程度の方角と目的地の方角さえわかれば、あとは自分で何とかしたいのだそうです。
「もともと地図が大好きで、よく見ていた影響が大きいのか、カーナビの縮尺もけっこう広範囲にしています。
そちらのほうが、自分が進むべき方角がわかりやすいと言いますか、渋滞の迂回なども自分の頭のなかである程度ルートや方角も判断しやすいと思います。
ノースアップの広範囲にしておくと、どの交差点で東方向になったとか、自分のクルマがどちらを向いているか、空間認識能力が高まる気がしていて、紙の地図を見る感覚で目的地の場所も把握しています。
逆にヘディングアップでは方角がわからなくなり、ルート案内でも新しい番地などでは使えません。個人的には道を覚えたいタイプなので、ノースアップにしています」
やはり、紙の地図を愛用していた人はノースアップを利用する傾向が今でも残っているようです。
今回、複数名に話を聞きましたが、圧倒的にヘディングアップが多かった印象でした。
最近はカーナビに頼りすぎて、道を覚えられなくなった人も多いのではないでしょうか。
ヘッディングアップ派の人は、空間認識能力を養うために、たまにはノースアップに切り替えてみるのも面白いかもしれません。