2023年6月5日、愛知県名古屋市の路上において不審者を追跡していたパトカーが軽乗用車と交差点で出会い頭に衝突し、軽乗用車に乗っていた親子3人が重軽傷を負う事故が発生しています。事故当時、パトカーはサイレンを鳴らしていなかったと報じられていますが、一方通行の逆走について交通違反には当たらないのでしょうか。
■実は決まっている「緊急車両の定義」とは
愛知県において、不審者の追跡のため一方通行を逆走していたパトカーと軽乗用車が交差点で出会い頭に衝突し、軽乗用車に乗っていた親子3人が重軽傷を負う事故が発生しています。
事故当時、パトカーはサイレンを鳴らしていなかったと報じられていますが、一方通行の逆走について交通違反には当たらないのでしょうか。
2023年6月5日、愛知県名古屋市の路上において不審者を追跡していたパトカーが軽乗用車と交差点で出会い頭に衝突し、軽乗用車に乗っていた親子3人が重軽傷を負う事故が発生しています。
パトカーは事故発生前、職務質問をしようとした少年が一方通行の道路に逃げ込んだため赤色灯を点灯のうえ、サイレンを鳴らしてその道に進入。
少年を見失ったことによりサイレンを止め、赤色灯のみを点灯させた状態で一方通行の逆走を続けていたところ、再び少年を発見したことから別の一方通行路を逆走して追跡を開始していました。
その後、パトカーは一方通行を逆走した先にある交差点に進入し、パトカーの左方から走行してきた軽乗用車と衝突しています。
愛知県警はサイレンを鳴らさずにパトカーが一方通行を逆走していたことに関し「法令違反には当たらない」との見解を示していますが、果たしてこれは本当なのでしょうか。
パトカーや救急車など緊急用務のために運転中の自動車で、サイレンを鳴らし、なおかつ赤色灯をつけているものを緊急自動車といい、信号や一時停止標識での停止義務が免除されるなど、一定の特例が認められています。
さらに緊急自動車には「通行禁止道路の通行」が認められているため、一方通行の道路を逆走することも可能ですが、今回のケースではパトカーが赤色灯のみを点灯し、サイレンを鳴らしていないことから緊急自動車の特例には当てはまりません。
ただし、愛知県公安委員会が規定する「愛知県道路交通法施行細則」第1条の2第1項第2号には通行禁止の交通規制から除外される車両が挙げられており、その中には「警察用車両のうち、専ら警ら活動のため使用する車両」が含まれています。
つまり、犯罪の予防や検挙などのために活動しているパトカーは通行禁止の交通規制を受けないということであり、この規定をもとに愛知県警は「法令違反には当たらない」とコメントしているのです。
■実は…各都道府県によって規定が異なる場合も?
これと同様の規定は他の地域でも見られます。
例えば、京都府道路交通規則では通行禁止の対象から除く車両として「犯罪の捜査、交通の取締りその他警察の責務遂行のために使用中の車両及び他の捜査機関が犯罪の捜査のために使用中の車両」を挙げています。
そのため、状況によってはパトカーをはじめとする警察車両などが通行禁止の交通規制を受けないことが分かります。
その一方で秋田県道路交通法施行細則のように、通行禁止の規制から除外される車両に関して「一方通行を除く」という条件を付けているケースもあり、地域の実情などに応じて異なった公安委員会規則が制定されているものとみられます。
今回の事故について、パトカーがサイレンを鳴らさずに一方通行を逆走したことは法令違反に当たらないとしても、交差点に進入する際にパトカー側が一時停止や徐行をするなど周囲の状況を慎重に確認すべきだったといえるでしょう。
愛知県警はこの安全確認に関して、パトカー側が「運転上必要な注意を怠ってケガを負わせた」として自動車運転処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)違反に当たる可能性があることも示唆しています。
なお、同法の第5条には「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」と規定されています。
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パトカーをはじめとする警察車両は交通事故や事件など緊急事案に駆けつけなければいけない場面が多々あるでしょう。
ただし、どれだけ先を急いでいたとしても事故が起きやすい交差点での安全確認や、サイレン・マイクを使った周囲への注意喚起などを確実におこなうことが重要です。