タイヤの価格はさまざまですが、安いタイヤと高いタイヤは何がちがうのでしょうか。また、それぞれに適したクルマはどれなのでしょうか。
■価格の違いは一体どこに? 差がない部分も存在!?
クルマにとってタイヤは非常に重要なパーツのひとつで、タイヤ1本あたりハガキ1枚ほどの接地面でクルマを支えています。
そんな重要なタイヤは走行するたびにすり減っていく消耗品で、ずっと使い続けることはできません。
溝が減ったり、劣化したり、パンクしてしまうこともあり、そういった場合は交換が必要になりますが、価格が安いタイヤもあれば高いものもあり、どれを選んだら良いのか迷うことがあるでしょう。
安いタイヤと高いタイヤは何が違うのでしょうか。
一般的に、タイヤの価格の違いによって、性能が変わってきます。
ひとつめは「静粛性・快適性」のちがいです。
運転時に感じるノイズは、「パターンノイズ」と「ロードノイズ」の2種類あるとされています。
パターンノイズは、トレッドパタ-ンの溝のなかの空気が走行中に圧縮されて、タイヤの回転により排出されるときに発生する音で、走行時に一定のリズムで聞こえるものです。
一方のロードノイズは、荒れた道路を走るときにタイヤから車体に伝わって車内に響く振動音です。
これらのノイズが大きくなると、走行中の車内で同乗者の声が聞き取りにくかったり、音楽が聞こえなかったりということにつながるのですが、その点、高いタイヤは快適性を重視しており、素材に吸音材を使用するなどノイズが発生しにくくなっています。
さらに、雨天時などで路面が濡れた状態でも、タイヤがきちんと路面をとらえブレなく走ることができる「ウェット性能」も異なり、高いタイヤほど優れた性能を発揮できるといえます。
また、クルマが路面をきちんととらえて、十分に安定した走行を可能とする「操縦安定性能」も違いが出る部分。
高いタイヤのほうが、ヨーモーメントから発生する「ふらつき」などが低減されます。
これらの点において、安いタイヤと高いタイヤには差があるのですが、逆に差がない部分はあるのでしょうか。
タイヤ大手のダンロップに聞いたところ、「安いタイヤと高いタイヤとでは、ライフ性能(タイヤ寿命)に差はなく、どちらも安心して装着していただけます」とのことでした。
■「安いタイヤ」と「高いタイヤ」どんなクルマに最適?
では、安いタイヤと高いタイヤは、それぞれどのようなクルマに適しているのでしょうか。
安いタイヤが好ましいクルマは「商用車」や「近距離しか走行しないクルマ」です。
商用車は、主に荷物を運ぶことが目的となり、高いタイヤを装着する必要性はそれほどありません。
精密機器を輸送するエアサス仕様車などの特殊な商用車でなければ、タイヤは消耗品であることや価格の違いによる寿命に差はないことを考慮すると、コストパフォーマンスに優れた安いタイヤが良いでしょう。
また、近距離しか使用しないクルマは、あくまで“日常の足”として使われており、タイヤ本来の性能をフルに発揮する場面が少ないことから、経済性を重視した安いタイヤで十分といえます。
前出のダンロップの担当者も、「低燃費性能も一般的には大きく差はないので、消耗品としての経済面を優先する場合は安いタイヤでも大丈夫です」といっており、乗り心地や静粛性などをそれほど重視しないのであれば、安いタイヤを選ぶという選択もアリというわけです。
一方で、高速道路などを利用する頻度が多い人は、快適性を向上させたほうがストレスなく運転できることから、静粛性が高いタイヤのほうが適しているでしょう。
また、「高級車」「スポーツカー」などは高いタイヤを履いたほうが良さそうです。
高級車は乗り心地が重視されることから、静粛性が高いタイヤをセレクトするのが望ましいでしょう。
スポーツカーは、「どの速度まで耐えられるタイヤなのか?」を重視する必要があり、一般的に高いタイヤほど、速いスピードに耐えられ、バーストなどの危険も少なくなり、そしてサイドウォールも固いことからコーナリングも安定します。
サーキット走行する機会がある人は、カスタムショップなどと相談して、適したタイヤを選択しましょう。
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タイヤの価格帯はさまざまですが、安いタイヤでも高いタイヤでも、それぞれに期待できる性能があります。
安いタイヤは、経済的な価格でありながら、安全性は十分備えており、高いタイヤは優れた品質と性能を発揮してくれます。
クルマの使い方に合わせて、必要な性能を備えたタイヤを選ぶと良いでしょう。